第161話 自由の森と大学生の接点

 かの作家さんは、大学に合格した。

 養護施設というのは、満18歳の年度末を越えても、諸般の事情があればさらに在所させることも可能である。


 これまでまともなビジョンを示すことなく、目先のことばかりに追われていたあの職員氏は、何か案を持っていたようだ。

 だが作家さんは、その彼の案を結果的にはねつけた。

 理想に酔ってまだ酔いが冷めていなかったであろう彼は、なだめすかす程度のことしかできない。当時の彼の実務能力を、作家さんは全く評価していない。


 しかし、トップの施設長は、彼との接点を残すべく手を打ってくれていた。

 年2回の、授業料免除申請のため。

 そのおかげで、大学に在籍中、なんとか接点を切ることなく、過ごせた。


 その後も、お互い付かず離れずの形で、接点は保てている。

 数年もすれば、お互いのわだかまりはいくらかでも改善するもの。


 評定不能と断じ切った対手を、彼は今も許してはいないのだろうか。

もう、許してあげたらどうなの?

・・・、ってか?

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