第162話 良識の接点
1991年9月のある土曜日。
当時大学生の彼は、自由の森へと向かった。
いつものように、自転車でね。
彼は、運転免許を取得していない。
実は、今もってそうなのだけど。
ともあれ、自転車で、丘の上まで行った。
そして、年2回の授業料免除申請の保証人になってもらう。
園長として、というより、一福祉人としての措置。
彼にとっては、ありがたいことこの上ないものだった。
それはともかく、この日、用件が済んで・・・、
そう、あの「事件」のお話になった。
園長氏は、知らぬはずもない。
昭和の児童指導員時代には、今でいう体罰もいとわない人物だった。
園長になっても、若いうちはそうだった。
だが、理不尽なことをする人では、ない。
かの青年がその事件のことを話題にした。
園長氏は、一言、絞り出すかのように言葉を選び、静かに回答した。
風の子学園の園長・坂井幸夫氏なる人物の行為は、論外である。
その後かれこれ話しているが、かの作家氏、その内容は覚えていない。
だが、その一言だけは、忘れもしないという。
もう一度、言おう。
園長氏の述べられた言葉通り。
ズバリ!を。
あれは、論外ですよ。
その言葉は、否、その言葉「コソ」が、
自由の森の職員と元児童の間の、
否、自由の森と言う場所にいる職員と子どもら、
そして、関係者も含めた「みんな」の、
「良識の接点」
だったのである。
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