第159話 秋色の風吹き抜けし園庭に

秋色の風吹き抜けし園庭に立ち尽くすひとりあのバロムワン


鉄筋コンクリート造の園舎と木造園舎の間を吹き抜けていく、

その風は、もう秋色。

東京のスタジオから流される電波は、

美しい女性の声。

この田舎街の養護施設の園庭には、

今日も、彼は一人立っている。


保育の子らが遊びに出てきた。

保母たちにつきそわれて。

その子どもたちを、園舎の事務室の、

横から見守る女性事務員と次期園長。

彼らを前に、教師上がりの老園長。

彼らのもとに、秋風は吹き込まない。


子どもは風の子云々と、

わかった口の老園長。

そして、子どもを連れ出した老保母。


子どもの遊び場に一人立ち尽くしてきた彼は、

秋風を受け、何を思っていただろう。

もう一度、冒頭の歌を一首。


秋色の風吹き抜けし園庭に立ち尽くすひとりあのバロムワン

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