第135話 淋しきバロムワン

 バロムワン、だったか。

 どこかの遊園地から譲受けた、大型人形。


 ひまわり組という、幼児の部屋の横。

 そこに、彼は立っていた。

 園庭で遊ぶ子どもたちを見ながら。

 彼のやっている仕事は、昔と変わらない。


 しかしながら・・・、

 昔と今では、子どもの質が、明らかに、違う。

 良い悪い、質の高い低いではない。

 その子たちのいる、その環境。

 それがすべて。


 前の彼の職場は、子どもたちの「遊び場」だった。

 よく来る子もまれにいたが、ほとんどが、一度かそこらだけ。

 でも、ここは、そうではない。

 いる子は、いつも、いつでも、ほぼ一緒。

 たまに、誰かの友だちが来ることも、ないではないけど。

 親族に引取られていく子もいれば、来る子もいる。


 自分の横には、新しい同僚のナショナル君。

 彼は、どこかの電気屋さんからやってきた。


 目の前の庭は遊び場のようです。

 見ていれば、確かにそうだ。

 しかしこの場所の実態は、違う。

 こここそが子どもたちの「家」であり、「生活の場」なのだ。

 少なくとも、ここに住む子らにとっては。


 しかも、今日はお盆の初日。8月13日。

 昔の職場は忙しかったけど、今の職場のこの時期は、

 いささかならず、さびしくなっているなぁ・・・、ってか?

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