第89話 パチったろ~で!

 丘の上に理想に燃えて移転した自由の森。

 名と体がぴったり合って、御目出度き哉。

 3つの寮、意識だけは「家庭」の内の1。

 彼は、酒も飲まずに理想に酔う児童指導員のいる寮にいた。

 そこに小学校3年から6年の男子児童は4人あてがわれた。


 洗濯機横に倉庫があった。そこはおやつ置場を兼ねていた。


あそこから、おやつ、ちいと、「パチったろ~で!」


 結局ばれることはなかったけど、何度も、パチった。

 そして、それをこっそり食べたってことになるわな。

 そんなことしか楽しみがない、へっぽこな住処やな。

 今思えば、そうとしかもう言いようがないけどなぁ。


 彼らの心の荒れ具合、酩酊状態の彼に理解できたや否や。

 酒も飲まずに理想に酔ったあの職員には。しつこいけど。

 ま、できたとしても何一つ手など打てなかったでしょう。


 校長あがりの引退寸前の園長なんかいるうちはなぁ・・・

・・・、ってか?

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