第77話 評定不能

 1990年のある日のO大学教養部・経済学の講義


 彼は、担当教授からあるエピソードを聞かされた。

 1回生3人と2回生1人の単位認定時の話だった。

 誰かが書いたものをみんなそのまま写したという。

 4通同じレポートが出されていたってことですね。

 担当教授は、全員を「評定不能」にしたそうです。


 彼ら一斉に担当教授に抗議に来た。まあ来るわな。

 だが、教授の説明を聞いて、ぐうの音ひとつ出ず。

 ありがとうございました。

 そう言って、教授の研究室を去っていったそうな。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 さて、それより4年ほど前の自由の森の丘の上の管理棟


「おまえには何もしてやれてないけど、・・・」

 言い訳がましく、その児童指導員はとある児童に言った。

 その割には、何かを強要するような口調だったのだがな。

ヨーワカッテンジャネエカあんた! 粗悪品ばかり押し付けよって!

 言われた側は、内心そう毒づいていた。もう何も言えん。

 いやもはや、怒るも呆れるも通り越してさえいたのだな。


 言われた元児童、今や著述業の彼。

 その元児童指導員氏の当時の仕事を総括した。


評定不能 = 優良可の成績順単位認定も不可という名の不認定も不能。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 今の彼には、間違いなく総括と称して敵たる人を殺す力はある。

・・・、ってよ。

 

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