第36話 プラ製食器のレクイエム・シーのジューゴよ永遠に

 移転前の、まだプラスチック製の湯呑が使われていた頃のお話。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 その湯呑には、一律、江戸時代と思しき光景が描かれていた。

 白地に青の、プラスチック製の湯呑。基本的には、同じもの。

 だが、納入時期が違ったのか、購入時に何かあったのか。

 一部、傾きの違う湯呑が混じっていた。


 その、傾きの違う湯呑。他のものより、やや傾きがついていた。

 それ以外のものは、比較的まっすぐな感じだったっけ。


 この傾きのついた湯呑と、そうでない湯呑。

 何が違うのか?

 子どもなりに、誰ともなく湯呑を眺めていて、発見!

 傾きのついた少し新しいほうに、製品記号? が刻印されていた。


C-15 (シーのジューゴ)


 他のものは、確か「C-3」か何かだったけど、違いは明らかだ。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 誰かの手元に、あの湯呑がやって来た。

 それを誰ともなく、茶化すように言った。


「シーのジューゴ♪ シーノジューゴ♪!」


 茶化された方も、あちゃー・・・、な対応。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 プラスチックの和風もどきの湯呑たちは、移転とともに自由の森を去った。

 食育の一環として、陶器やガラスのものが、それに変えられることとなる。

 発案したのは、敷地内の職員住宅に住む次期園長の主任児童指導員だった。

 彼は、「前時代の孤児院」のような雰囲気を変えねばならぬと思っていた。

 ひたすら群れさせその場限りの対応を重ねる、「自由の森」を、ぶっ壊す!

 プラスチック食器らは、彼の改革の一つの象徴として、かの地を追われた。

 シーのサンもシーのジューゴも、学食のような茶碗や丼や皿たちとともに。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 プラスチックの食器たちへのレクイエム

 その実は、前時代の自由の森への鎮魂歌

・・・、ってね。

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