第44話 生命にかかわる事態

 自由の森だけじゃなく、全国に養護施設は数百とあります。

 そして、どこも何十年の歴史を紡いでおります。

 さすれば、いい話ばかり転がっているはずも、ないですね。

 悪い話も、いくらとあるってことで、御理解を。

 前者はさしあたり置いておくとして、問題は、後者ですよ。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


生命にかかわる事態


 その施設の管轄内で、関係者の生死にかかわる事態。

 表沙汰になっているいないは別として、ありますよ。

 確かに、あります。いい悪い以前の問題として、ね。

 表沙汰になっていない話をひとつ、ここで披露する。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 春のある日曜日の夕方。そういえば今日も日曜だね。

 今は5月だけど、あれはね、4月の半ばだったっけ。


 Q君という高2になって間もない少年が、園舎の裏にある木のもとに、なぜかロープをもって急いだ。


 彼の「異変」に、誰かが気付いた。

 近所の、人も、なぜか、近くで、農作業を、していて、それに・・・、

異変に、気づいた!

 公休日の、職員住宅に居を構える、某幹部職員氏も、気付いて・・・、

彼を、追っかけた!

 幸い、何人か職員も近くに、いた。


 彼の一命は、取り留められました。

 だが、さすがにこれではということで、「措置解除」となる。

 要するに、その施設を「退所」させる、外に出す、ってこと。

 彼は、親族の下へ去ってしまった。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 その年の夏のある日、入所児童だった後の小説家氏は、街中で彼に会った。

 学校にも通っているようで、元気そうで何よりだった。


けれど、そこまで。


 彼はやがて高校も中退し、東京のほうに出たらしい。

 そして、翌年初旬、事故か何かでこの世を去ったと。

 そんな、風のうわさが、自由の森に吹いてきました。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 彼が何ゆえそのような方向に走ったのかは、触れないでおかせて。

・・・、ってね。

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