第40話 自由の森・全面移転へ

 1981年、昭和56年の春(夏?)の5月下旬。

 自由の森は、住宅地化著しい文教地区を去ることになった。

 その代わり、その名にあまりにもふさわしい場所へと旅立つことに。

 どこが、自由の森の名にふさわしいかって? それはねぇ、

 やっぱり、「自由」より「森」の方が簡単に実現。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 移転先は一級河川をさらに東の人造川手前の丘の上。

 名を「体(てい)」に合せるのは至難の業ですけど、

 名を「体(たい)」に合せるだけなら、割に簡単よ。

 物理的・地理的に、そういう場所に移ればいいって。

 ね、簡単でしょ? 森の中に行けば、がっちりです。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 子どもをやたら集めて群れさせることには超一流のこの森では、

 毎日のように子どもを集め、新たな地のことを紹介していくの。

 大学を出て3年目の男性児童指導員は、その新天地に胸躍らせ、

 熱心に、その地の良さと家庭的な雰囲気を作ろうと説きまくる。

 子どもたちの本音がどこにあるのか、彼には分っていたのかな?


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 みんながみんな、移転に嫌な思いをしたわけではないだろうが、

 いやな思いをした子だって、いたはずだ。少なくとも、一人は。

 その元入所児童氏は、当時のことをあまりよくは言っていない。

 少なくとも、移転後7年弱の間、かの地で過ごした頃のことを。

 彼にとって移転後の自由の森は、二度と住むところではないと。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 丘の上なんか死んでも住むか! クルマがいる場所も右に同じ!

 死んでも住まん! **市長が土下座に来ても住んでやらんわ!

・・・、ってよ。

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