第三十七話 このチームのリーダーは誰?
もぐもぐ
シャキシャキ
会話もそこそこに野菜炒めがみんなの胃の中へと消えていく。
カチャカチャ
次第に机の上から聞こえてくる音が柔らかい音から角ばった音に変化していく。
「ご馳走様でした!いやー、ここのユノさんの腕もですけど、ここの野菜も相当に質が良いですね!」
場に流れていた音が擬音から発声へと変わった。
ユノはえへへと声が聞こえるんじゃないかってくらいにえへへって顔をしてる。
やっぱりどんな人でも褒められると嬉しくなるものなのだ。
「それじゃあ、後片付け位はさせてもらいましょう。一宿一飯の礼とも言いますからね」
「いいえ、大丈夫ですよ。食事というのは準備から後片付けまで含めてのことですから。お任せください」
なんか急に別人格が出たんじゃないかって口調がユノの口から出てきた。
「おや、そうですか?ではお言葉に甘えて。そうであれば僕もここの家にお暇させて頂きますけど、出発のメンバー含めて何か聞きたいことがあればいつでも聞いてくださいね。あ、とは言っても寝てる時とかそういう時は避けてくださいね」
冗談交じりに最早、定型文じみたセリフを告げる。
「あ、そのことなんですけど、もうメンバー自体は決まっています」
自分、ユイ、アヤの方を順々に指さす。
「あとはこの村の代表でアイラが付いてくる4人のメンバーです」
「はい。了解です。そしたら出発は早いと明日になりそうですかね?」
「うーん。アイラにはまだいつ行くかまでは話し合ってないから何とも言えないですけど、アイラがもう準備万端だったら明日にも出発出来ると思います」
ふむふむ、なるほどと言いながらヒイラギは順々に私たちの顔を流れるように見ていく。
「ちなみに皆さんのリーダーと言いますか、代表者はどなたです?一応、仮だとしても決めておかないと後々面倒なのですが」
「え?えぇー…」
私が2人の方を向くと2人は私の方を見ていた。
「え?私!?」
「いや、まあ」
「ええ」
そんな即座に私に視線が向くとは思っていなかったので、驚いた。
なんでそんな2人だけこんなこともあろうかと裏で話合わせてたのかってくらい同時に私の方を見るんだ。
「そんなん言ったらユイの方が頭回るからそういうの向いてるじゃん」
「いや。僕、代表とかってよりも裏方的な方が動きやすいから好きなんだよね」
「じゃあ、アヤは?」
「数日だけど私より先にここにいたことね。あとは直感」
2人とも私が適任だという確たる自信はそれはどないけれども、それでも2人の私を見つめる目はどこまでも純粋で私がリーダーとしての役割を果たすのに何の疑いも不安もないという気持ちが強く伝わってきた。
こうなったら私も腹をくくろう。
「ということなので私がリーダーとして今回は向かいます」
「ん!了解です。そしたら一応念のため、移動は日中に行いますので、明日の夜明け、7時くらいに僕が来たところに集合ということで良いですか?」
「うん。私たちは大丈夫だから後でアイラ達にも伝えておくよ」
「分かりました。それではまた明日の朝、準備を終え次第集まって出発です」
ここに来てからまだ1週間も感覚的にも現実的?にも経っていないのに、仲間もいつの間にかこんなに増えて気づけば国相手に交渉なんてことにもなって、本当に現実味のないことが立て続けに起こって、もうこれまでの私の人生の何倍もの濃密さのある日々を過ごせている。
そして改めてここが現実でないことを嫌でも実感させられている。
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