第三十一話 交渉に向けて

目が覚める。

横にはユノの姿はあるがアヤの姿がない。

窓を開けて外の様子を見ると住民と楽しそうに話しているアヤと源がいた。

急いで玄関まで向かってアヤたちに合流すると、いつも一緒に農作業をやってる面子だった。


「やっほ」

いつもの面子に声をかける。

「おはよう、ユキさん」

「よ」

「おはようございます」


「何の話してたの?」


源はゴブリン達と肩を組みながら

「彼らたちに農作業について話し合ってたんだ」

と言ってきた。


「源さんはこれまでの私たちの農作業の改善点を教えてくれまして。以前よりも作業が早く終わって自由時間が増えて良かったみたいな話をしてたんですよ」

「まあ、それもこれも彼らの強靭な肉体があって成立するみたいな改善点もあったけどな」

「へー、アヤは?何の話ししてたの?」

「最初は源さんとお父さまの話をしてたわ。先日、お父さまに確認したら源さんと知り合いなのは本当だったの」

そう言えば初めて会った時の自己紹介でそんなこと言ってたな。


「しかしアイツもいつの間にかあれほどの会社の社長だからな。それに加えて、こんなべっぴんの娘さんまでいるときた。よし、アヤ。俺が今度アイツの弱みを教えてやるからなんかムカついたことがあったら反撃してやれ」


しかし、アヤと源さんの順応力というか適応力は凄いなぁ。

でも、この2人って初めてここに来た時も私たちに比べて比較的落ち着いていたしそういうところから私とは違うんだろうな。


「おや」

また聞いたことある声が。


「なんだいこの数日で随分打ち解けたみたいだねぇ」

声の主はアイラだった。

「あれ、どうしたの。今日って何か用事あったっけ?」

「いや、今日もいつも通り農作業なんだけどね。例の件がいつ便りを知らせに来るか分からないから、前もって色々準備含めて話しておかないと」


先日、アイダムからの使者が国に帰る時に後日改めて遣いの者を送らせると言っていた。

ただ、それがいつになるかまでは明言していなかったのでこちらとしてはいつでも出発出来る準備をしておかなければならない。

流石に昨日の今日ってことは無いとは思うけど。


「行くのは私とユキとユイとアヤとユノと源で良いのかい?」

「いや、君たち以外の我々みたいな人種がそんなに集まることもないだろう。俺とユノはこのまま集落に残るってことでいいんじゃないか?」


そう言い終わると源はアヤの方を見る。

ユノに関してアヤの意見も聞きたいのかもしれない。


「そうね…。ユノには交渉に行くより源さんと一緒にここでみんなとの交流を深めてもらう方が得意そうに思うわ」

「そしたらとりあえずのところは、私・ユキ・ユイ・アヤで仮決定して準備しておくよ」

「ええ、お願いするわ。ユノにも私の方から話は通しておくわ」

その後、アヤの方からユノに話を通してもらい、最終的にアイラ・ユキ・ユイ・アヤがアイダムに向かい、ユノと源がここに残って交流やら農作業やら技術を教えるやらをする2チームに分かれることになった。


それから3日程経った頃。

再び集落の前に見慣れない“人“が現れた。

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