第二十一話 アヤとお友達

「ユキからの連絡だったから、まさか車で来るとは思ってなかったよ」

 車に乗り込んでシートベルトを付けるとユイが話し始めた。

「しかも、リムジンが急に家の前に停まるからもっとびっくりしたよね」

「ま、そこは私たちの狙い通りよ。ねー」

「ねー」

 すっかり今日の1日で仲良くなった私とアヤは息を合わせて言った。


 数十分も車を走らせている内に、次第に周りの風景も一軒家よりマンションが増えてくるようになってきた。

 その中でも一際高いマンションの前で車は止まった。

「さあ、家に着きましたよ。お嬢さま、ご学友様」

「ありがとう。今日も快適な運転だったわ」

 そう言ってまずアヤが先に車を降りた。

 降りてこちらを向くと

「さ、ユキさんとユイさんも降りて。私の家に招待するわ!」

 楽しそうな明るい声で私たちのことを呼ぶ。

 私も続いて車を降りようとしたところで運転席の方から声をかけられる。


「ユキ様」

「はい?」

「今日はありがとうございました」

「私、何かしましたっけ?」

「私はお嬢様が小さな頃からずっとお側についておりますが、今日ほど楽しそうなお嬢様を見たのはいつぶりでしょうか…」

 若干、運転手の目元が潤んでいる。


「え、そんな久しぶりなんですか」

「学校での雰囲気はどうでした?」


 そう言われて今日の朝にアヤと会ってからの出来事を振り返ってみる。

 教室にいる時アヤが私以外の誰かと接しているのは見てない。

 私が考え込んでいるのが言い淀んでいると勘違いされたのか、

「私は学校に入っていく姿と学校が終わって車に向かってくる姿しか見れませんが、その反応だと学校の中でも似たような感じなのですね」

「うん…まあ……、少なくとも私が見てる限りではそうですね…」


 運転手は少し黙った後に

「さ、あまりお嬢様を待たせるのも良くないですね。どうぞ楽しんできてください」

 と私たちに言ってきた。

「……うん、分かった」


「あ!やっと降りてきたわね。中々降りてこないからどうしたのかしらって思っていたところよ」

 車から降りるとアヤにそう言われた。

「いや、違うのよ。ユイが車の中で落とし物しちゃったみたいで2人で探してたのよ」

「まあ!それで落とし物は見つかったの?」

「僕のポケットに入ってたってオチ」

「おっちょこちょいというやつね!」

 アヤが楽しそうな顔で笑っているのを見ると、私も嬉しくなってきた。

 見えないけど運転手もアヤの笑い声を聞いて嬉しくなっているだろう。

 多分、いや、きっと。

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