第二十話目 一緒に帰る?
5時間目、6時間目も終わり、部活に入っているわけでもないので家に帰ろうかと荷物をバッグに詰めていると、廊下の方(席が廊下側なのでほぼ真横からだが)から私のことを呼ぶアヤの声が聞こえた。
「アヤさん?もうお帰りになるの?」
「わ、ビックリした」
普段はこんなに人と話すとかが無いからいつもと違うことになかなか慣れない。
「うん、そうだね。部活も入ってないしこのまま学校に残る用事もないから帰ろうかなーって」
「そう…ですよね…」
なんかアヤにしてはやけに煮え切らない言い方だなぁ。
「…一緒に帰る?」
そう言うとアヤはとっても嬉しそうな顔で
「是非!」と返してきた
ナンダコイツ、可愛いな。チクショウ。
なんかこれいけるんじゃないかと思って
「ねえ、私アヤの家に行ってみたい」
「そうねえ。うーん、ちょっと待っててもらえる?」
アヤはバックの中から携帯を取り出すと、何処かに電話をかけたみたいだ。
電話が終わり私の方を向くと
「大丈夫みたい。それじゃあ行きましょうか」
「あ、待って。もう1人連れて行っても大丈夫?」
「大丈夫ですけれども…。他に誰を連れて行くの?」
「いや、ほらせっかくだからユイも誘ってみたらどうかな」
「確かにそうね。ユイさんから連絡は…」
そう言って再び携帯を開いてユイからの連絡があったのかを確認する。
「連絡は……無いわね」
「じゃあ、私の方から連絡するよ」
と、ここでちょっと思いついたことがあり
「ねえ、アヤの家に行くのってこのまま行くじゃん?あの車で行くの?」
「まあ、そうなるわね」
「じゃあさ…」
とある考えをアヤに提案してみた。
「なるほど、面白そうね。そしたら、連絡の方はユキさんからしてもらえる?」
「おっけー」
ユイへの連絡も済み、私とアヤは迎えに来てもらってる例のあの車に向かった。
既に車の方は校門に到着しており、車に近づくと勝手にドアが開いた。
「すっごー!」
「さ、乗って。行きましょう」
部活の時間とはいえ私達と同じように少し学校で時間を潰してから帰る生徒もちらほらいる。
そして、朝と同じように何人かはこちらを見てヒソヒソ話している。気になるなら声をかけてみればいいのに。
車に乗る前に運転手に簡易的な地図と住所を書いたメモを見せてそこに向かってもらうようになる頼むと、「運転手は了解しました」と紙を受け取った。
アヤと車内に乗り込むと外観通りに広々とした車内で、こんな広くする必要あるのかってくらいだった。
シートベルトを付けると車はごくスムーズに動きだした。
「ぶっちゃけ通学くらいならこんな広くなくても良いんじゃない?」
「違うのよ。この車は私以外の家族や使用人さんも使うからここまで広くなってるの。それでもまあ、最近はほとんど私の通学にしか使ってないから、言われてみれば確かに広すぎるかもしれないわ」
現代で本当にいるんだ。使用人さんって。
「でも結果的にユキさんがこうやって一緒に乗っているのだから、広くても良いんじゃない?」
「確かにね。これから友達もどんどん増えていったら普通の車だと狭いもんね」
「ええ、そうね。このあとユイさんが乗ってきたらどんな反応をするのかしらね。楽しみだわ!」
そう。さっき運転手に手渡したメモはユイの家の住所。
せっかくだからユイを拾ってからアヤの家に行こうと、さっきアヤに相談しておいたのだ。
「ユイには『ちょっと確かめたいことがあるから、家の前で待ってて』って連絡してあるからね。まさか、自分の家の前にリムジンが来るなんて考えてもないだろうからね。ビックリすると思うよ〜」
「そうね!ユイさんをビックリさせたいわ!」
2人で早くユイの家に着かないかとワクワクしていると
「お嬢様、ユキ様。目的地に着きましたよ」
と運転席の方から声が聞こえた。
アヤと窓を開けて外を見ると、明らかに困惑して立ちすくんでいるユイがいた。
「大成功だね!」
「ええ!」
今度はドアを開けて車を降り、ユイの元に駆け寄り
「ふっふー、ビックリしたでしょ」
「ビックリさせてやりましたわ!」
私たちの姿を見て落ち着きを取り戻したのか、
「いやー…、びっくりしたよ。まさか、アヤさんまで来ると思ってなかったからね」
その言葉を聞いてアヤとハイタッチを交わし、そのままユイも車に乗せてアヤの家に向かった。
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