第十九話 ユキさん、お昼ご飯食べましょう!
階段を3階まで上がってサトセンに言われた通りに左に曲がると1-5に着いた。
中に入ると大体のクラスメイトは既に教室の中にいた。
特に私を意識した人もおらず、すんなりと自分の席に。
……っていうのが教室に入る前の予想だったんだけど、おかしいな。なんか私の周りに人が集まってる気がする。
いや、気がするじゃなくて本当に人が集まってきてる。え、なんで?
すると目の前にいた女子生徒が
「ねぇ!あなたってさっき御影さんと話してた人?」
あー、なるほど。そういうことね。
確かに朝のアレは見てるわな。
「御影さんって授業とか学校の中だと普通に会えるのだけど、放課後って直ぐに車に乗って帰っちゃうじゃない?だから、学校の外であんな楽しそうなところ見たことなくて」
続けて他の女子生徒も
「あんたって学校始まってしばらくしてから全然学校に来なくなったよな。御影さんとどんな接点があるんだ?」
と立て続けに聞いてきた。
うーん。素直に話してもいいんだけど、夢の世界の話したところで十中八九信じてもらえないんだよなぁ。
「あー…、えっとねぇ、前に御影さんが道に迷ってるところにたまたま遭遇して、道案内がてら話してたらなんか意気投合しちゃって仲良くなったって感じ…?」
ちょっと無理矢理な感じもしたけど、聞いてきた生徒も、ふーんって感じのリアクションだったので良しとしましょう。
私とアヤの接点がなんとなく知られたことで教室のざわつきも少し落ち着いたところで教室の扉が開く。
「おー、おはよう。みんなおるか?」
クラス担任のサトセンだった。
「空いてる席は……無いな。んじゃ、今日は欠席無しと。うん。そしたら俺は授業あるから。勉強頑張れよー」
そう言ってサトセンは1時間目の授業の教室に移動して行った。
ほとんど会ってはなかったけど結構緩い感じの人だな。
久しぶりの授業もなんとかやり過ごし…うん…やり過ごせたと思う。お昼ご飯兼昼休みの時間になったので、荷物を持ってアヤに約束していた通り1-1に向かうことにした。
同じ学年だから多分この廊下沿いにあるとは思うんだが。
うん、やっぱり同じ廊下沿いにあった。
1-1に着くと1番廊下側の席に座っていた生徒に
「御影さんいる?」と聞くと
その生徒は教室を見渡して、
「あそこ、窓際」と指差して言った。
指差す方向に目をやるとそこにアヤが座っていた。
なんか窓の外の空を見てる姿が絵になってるんだけど。
ここから声出して呼ぶ勇気はちょっと無かったから、直接アヤの席まで向かう。
「来たよ、アヤ」
「ユキさん、来てくれたのね!お話したいこともあるのだけど、その前にお昼ご飯を食べてしまいましょう…って、あら?ユキさん、お昼ご飯は持って来てないの?」
「あ、教室に置いて来ちゃった」
「それならユキさんの教室に私も行くわ」
持って来た弁当を鞄から取り出しながらアヤが言ってくる。
周りの目が多いような気がする中、自分の教室に戻っていく。
やっぱりアヤがいるのが大きいんだろうな。
それにしてもそんな離れて見なくても直接声をかければいいのに。
教室に着くとこっちの教室でもみんなが少し驚いたようにこっち。というか、アヤの方を見てくる。
アヤを見てるのは分かるんだけど、その隣にいるもんだから私にも視線が集まっているように感じて何とも言えない気分になる。
「じゃあ、私の席ここだから。多分、前の席は空いてると思うからとりあえずそこに座ろっか」
「そうね。お借りさせていただくわ」
アヤと向かい合わせになる形で席についてお弁当を取り出す。
意外にアヤのお弁当は一般的な大きさで、中身も私とまあ似たようなものになっている。
「今日起きた時に筋肉痛とかなかった?」
「そうねぇ。疲れてる感じはあったけど、夢の中の時みたいに筋肉痛で動けないなんてことはなかったわね」
「ふーん」
そう聞いて私は初めて夢の世界から現実に戻った時のことを思い出す。
確かに私もあの時に痛みを感じたことはあったけど、アザとかがあったわけでもないし、動けないほど苦しかったわけでもなかった。
そうなると夢の中でのことは実際に現実にも反映されるというよりかは、その感覚だけが反映されてるって感じなのかな。
それでも仮定の域は過ぎないのだけれど。
「それにしても昨日は楽しかったわね!こちらでもあのような体験はしてみたいわ!」
「ん〜、そうだねぇ。じゃあ、今度ユイも呼んでどっか行ってみよっか。あ、そういえばユイから何か連絡あった?」
「そういえば……。帰ったら携帯の方を確認してみるわね」
2人ともいっぱい食べるタイプじゃなかったみたいで、いつのまにか完食直前になっていた。
すると、アヤは思い出したかのように急にこっちの顔を見る。
「ユキさん、私忘れていましたわ…」
「え、何を?」
「朝、お昼に会う約束をした後にお昼ご飯のおかずの交換をして見たいとずっと思ってましたの…。すっかり忘れてましたわ…。もう交換するものもありませんわ…」
さっきまでの明るい雰囲気から一転、めちゃくちゃ落ち込みオーラが目に見えるようなくらいになった。
「ま、まあまあ。同じ学校って分かったんだから、また今度お昼ご飯の交換しようよ。ね?」
「そう…そうですわね。そしたらまた今度お昼ご飯の交換しましょうね」
ごく自然な形で次回もお昼ご飯を一緒に食べる約束をしたところで、それぞれ5時間目の授業の為にお互い教室に戻った。
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