第十七話 from 夢の世界 to 現実
皆クタクタになりながら、特に約一名は肩を借りるほどにクタクタになりながらユイの家に帰った。
「の、農作業ってこんなに大変なのね……」
肩を借りるほどクタクタになった一名がそう呟く。
アヤはリビングで横になったままほとんど動けないでいる。
その横に座ったままほとんど動けない人間が1人いる。
ユイはもう慣れたものと言わんばかりに鼻歌混じりにキッチンに向かっていった。
「ねー、今日も野菜炒めー?」
「いやぁ、実はね、さっき帰りがけにアイラから卵貰っちゃったもんだからさ。オムレツとかどうよ」
「いーじゃん!」
「今なら何を食べても私にとっては最上級の料理だわ…」
今日の農作業ではっちゃけ過ぎて未だにほとんど動けないアヤが横たわったままなんとか頭だけをキッチンの方に向けて言った。
そんなアヤの姿を見て、「私も初めてここで農作業した時もこんな感じだったんだろうなぁ…」なんて思いながらユイの作るオムレツを待った。
しばらくするとアヤの方から一定のリズムで聞こえてくる呼吸音がするから、フッとアヤの顔を覗き込むとヨダレを垂らしながら頭がフラフラさせてなんとかご飯のために意識を保っていた。
ナンダコイツ、可愛いな。チクショウ。
元々帰って来てた時からクタクタで全く喋れてなかったんだけど、まさかこんなヨダレ全開だとは思ってなかった。
絵に描いたようなお嬢様だから普段は今日みたいな農作業とかしないし楽しくてはしゃぎ過ぎたんだろうなぁ。
と思ったら急に目をパッチリ開けてこっちを見てきた。
「……お、おはよ。どうしたの…?」
目もうつろうつろだったアヤが急に目を開けてきたものだから心臓がバックバクになりつつも落ち着きを維持しようとした。
「……何か良い匂いがすふわ…。……ヨダレが…」
「あ。出来るまでもう少しだからね。箸とか先に持っていっておいて」
ご飯がもう少しで出来ると知るや否や、アヤはゆっくりと立ち上がりキッチンの方に向かった。少しフラフラしてるからまだ少し寝ぼけているんだろうけど、さっきまで爆睡してたんだぞ。
ご飯の力すごいな。
オムレツも完成し食事の準備が出来ると
「まぁ!美味しそうね!早くみんなで食べましょ!」
と、さっきまでの体のバキバキ具合はどこにいったんだと言わんばかりの元気をアヤが見せつけてきた。
「そだね〜、私もそろそろお腹限界」
「じゃあ、みんなで」
「「「いただきます」」」
ユイが作ってくれたオムレツは普通にレストランとかでも商品として成立するんじゃないのかってくらい美味しそうな見た目だった。
オムレツってこんなに綺麗な黄色になるもんかってくらい綺麗な黄色になるんだ。
多分これはユイの腕だけじゃなくてここの育て方も関係してるんじゃないかな。今度、アイラに見せてもらおう。
なんてことが頭をよぎっていると、隣から
「ん〜〜!本当に美味しいわ!今度、作り方を教えてちょうだい!私も作ってみたいわ!」
と、頭に浮かんだことが全部口から出たんじゃないかってくらい素直な感想が聞こえてきた。
「あはは。そんなに喜んでもらえると作った甲斐があるなぁ。ユイはどう?」
「ん、美味しいよ。今までこんな美味しいの食べたことないくらい」
回りくどくなく素直に感想を言えるアヤが羨ましい。
「はー…。美味しかったわ〜…」
「ね〜…」
オムレツを食べ終えて若干リラックスモードになってるところでアヤが
「ねえ2人とも。携帯とか何か連絡出来るものは持ってる?」
「え?そりゃ勿論持ってるけど。ねぇ?」
コクコクとユイも頷く。
「なら、私の電話番号番号を教えるから2人の番号も教えてもらっても良い?」
「いやま、別に良いけど。…良いの?」
まさかこんな急にみんなが知ってるようなお嬢様の電話番号を知れるなんて思ってもなかったから、ビックリした。
「僕も構わないけどそれはまた何で?」
「だって、もう一回寝たらまた元の世界に戻るかもしれないでしょ?その後にまたこっちの世界に来れたとしても2人に会えるとは限らないじゃない…。だったら、元の世界でも会えるようにしておきたいの…」
…ナンダコイツ、可愛いな。チクショウ。
「じゃあ紙を…って、ここって紙あるの?」
「紙に書いても良いけど持っていけないから意味無くない?」
あ、そっか。
「流石に電話番号くらいなら覚えられるでしょ」
そうやって私たち3人はお互いに連絡先を教えあった。
「じゃあ、特に後はすることないけど…どうする?」
「せっかくだから、寝落ち?っていうのをしてみたいわ!」
「お、良いね。そしたら今日は寝かさないよ?アヤ」
「望むところよ!ユキ!」
しばらくするとアヤはヨダレを垂らしながら爆睡していた。
「もしかしたら長期戦になるかもとか思ってたけど、ご飯の前の段階で限界ギリギリだったからね。相当疲れてたんだろうね」
「そういうユキだって疲れてるでしょ。僕たちも寝ようか」
「うん。じゃあ、また現実の世界で…とは限らないのか」
「ま、そうなるね。でも僕たちはもういつでも連絡取れるからね」
「それもそうか」
私たち3人はぐっすり眠った。
目が覚めると体はベッドの上だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます