第十三話 思い込み
アヤをアイラ達と離してとりあえずユイの家に連れていく事にした。
その道中でもアヤはきょろきょろと周りを見渡していた。
やっぱお嬢様はこういう感じの派手な装飾とかがないシンプルな景観はあまり馴染みがないのだろうか。
「さ、あがって下さい」
「ここがあなたの家なのね?シンプルな造りだけど奇麗な外観ね」
……多分、褒めてるんだろう。
ユイ、アヤ、ユキと家に入っていって3人でリビングに座った。
うん、ここはきっとリビング。
「それで?用件は何?」
「とりあえず確認したいんですけど、アヤさんはここが現実の日本だと思ってるんですか?」
「アヤで良いって言ったのだけれど…。ええ、ちょっと和風な感じはないけど日本だと思ってるわ。だって、昨日も家のベットで寝て目が覚めたらここにいたのだもの。流石の私でも気づかない内に一晩で海外には行けないわ」
まあ、そう思うのも無理はない。
私だって最初はここがまさか夢の世界だなんて夢にも思わなかった。
夢だけにね!
「先に結論から話しますね?僕たちはここは夢の世界だと考えています」
「夢の世界?」
キョトンとした顔でユイの顔を見つめるアヤ。
「な、何を言ってるのかしら。現に私たちはこうして会話出来ているじゃない。それも自然な程に。それでもここが夢の世界だっていうの?」
少し混乱しているアヤだが、
「ねえ、ユイ。物体操作見せた方が早いんじゃない?ここが現実じゃないって証拠を見せた方がアヤも納得出来ると思うよ?」
と、私はユイに言った。
そして私はキッチンの方へ向かいコップに水を注いでユイの前に置いた。
「別に石でも良かったんじゃ…」
「こっちの方が種も仕掛けも無いんだから分かりやすくない?」
「そりゃそうだけど…」
液体は疲れるんだよなぁと若干の愚痴をこぼしながらユイは目の前のコップの水に意識を集中した。
「何をしているの?」
「まあまあ、見てれば分かりますって」
ユイの目の前のコップの水は次第に水面が波打ち始めたかと思えば、そのまま宙に浮かんだ。
「は?」
そのまま宙に浮かんだかと思えば、ユイの腕に巻き付き、私の腕に巻き付き、アヤの腕に巻き付いた。
そして一通り動かされた水はユイの操作によって再びコップの中に戻り次第に最初のコップの中の水に戻った。
「……………」
アヤは目をまん丸にして
「…分かったわ……。これはドッキリじゃないのね…」
と、動揺している自分を落ち着けるように言った。
「じゃあさっきの仮装していた方たちは?」
「彼らは仮装じゃなくてそもそもああいう姿なんです。人間じゃないんです」
「でも、彼女たちとは普通に会話出来たわよ?」
「そりゃあ、夢の中なんだから会話も出来ますよ……」
あれ、何か引っかかる。
なんだろう、何か根底からひっくり返るような違和感が…
「ねえアヤ?アイラ。彼女たちと普通に会話出来たの?」
「ええ、普通に会話出来たわよ」
なるほど
その言葉を聞くと私はユイの方を向いた。
「ねえ、ユイ。なんかおかしくない?」
「え?」
「だって私たち初めてここに来た時は普通に会話出来てなかったよ?」
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