第七話 また、夢の世界に

 ユイから聞いた話を少しずつ頭の中で整理しながら家に向かって歩いていたら、いつの間にか家に着いていた。

 家の窓からは部屋の明かりが外に漏れだし、家族が帰宅しているのが分かった。

 私はそーっと玄関を開け、ひっそりと家の中に入る。


「ただいまー…」

「む、外出してたのか」

「あら、おかえり」


 リビングには父と母の姿があった。

 雰囲気と時間的にも夕食の様子だ。


「どこに行ってたんだ?」

「ユイの家だよ…」

「そうか…」

 はい。会話終了。

 ちょっとぎこちない雰囲気が広がるが、お腹も空いていたし私もそのままリビングで夜ご飯を食べることにした。


 夜ご飯はコロッケとご飯と味噌汁。結構一般的な夜ご飯。


「ごちそうさま。美味しかったよ」

 と言って、食器を流しに持って行って自分の部屋に戻ろうとすると

「ユイ」

 父の引き止める声が背中の方から聞こえてくる。


「いつまでも家に引きこもってないで、学校には行くようにしろ。学校に籍を置いておくのだってタダじゃないんだぞ。友達だか知らんが外に出るならもう少しマトモな所へ行け」

 父にそう言われた。


 私は少しムッとしたが、言い返すことも出来ずそのまま何も言わず部屋に戻ることになった。


「むー……」

 どうもこっちの世界は面白くない。

 いや、もちろん父が言っていることが真っ当なことだっていう事は自分でも分かってる。

 でも、ユイを一度も見もしないであんな風に言われたら少し引っかかる所はある。


「……寝よ。あ、でもお風呂も入らないと……」

 昨日からお風呂にも入ってないことを思い出し、着替えを持って一階に降りた。

 脱衣所で服を脱ぎ、痣が残っている右腕を見て少し固まったがそのままお風呂に入った。

 お風呂に入ってサッパリしてからドライヤーで髪を乾かす。


 部屋に戻る前にリビングにいた母に

「おやすみ……」

 と一言告げて自分の部屋に戻るや否やベッドに倒れこんだ。


 昨日の夢での出来事や今日ユイと共有した情報を整理するのに一杯一杯で既にクタクタだった私は直ぐに眠りにつけた。



 そして目が覚めると最早いつも通りと言わんばかりに夢の世界だった。

 ユイの家の天井。

 木造だったんだ。

 部屋を見渡してもユイの姿はない。

 まだこの世界に来ていないか既にどこかに出かけてるんだろうなと思って、私は布をたたんで邪魔にならないところに置いてからユイの家を出る。

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