第33話 生えて飛んで
VJ加入、ウーナのチームマネージャー就任のミーティングが終わり、
リウとエリックは寮に戻る事にした。
VJとウーナは図書館で勉強すると言って東門近くまで来て別れた。
カワセミ寮に入っていくヒューゴとイジーを見送り、薄暗いカラス寮棟に歩く。
カラス寮と違って明るく、新しいカワセミ寮棟をリウは羨ましそうな目で見た。
「いいなあ、カワセミ寮は明るそうで」
「カワセミ寮生も明るいしね」
「カラス寮生って暗いの?」
「カワセミ寮生と比べたら他の寮生はみんな暗いよ」
エリックの言うとおり、カワセミ寮生には明るく活発な生徒が多く所属していた。
三つの寮の中で、運動クラブに所属している生徒が一番多いのもカワセミ寮の特徴だ。
ヤマセミ寮の生徒は大人しく温厚で、仲間を大切にしている者が多い。
良く言えば寮生の絆が強く、悪く言えば内輪贔屓といった所だろうか。
一方でカラス寮生たちは、他の寮生達からは凡人集団と呼ばれていた。
特に秀でた部分はなく、何でも器用にこなせる生徒が多い。
オールマイティーと言えば聞こえは良い。
カラス寮の代表生徒であるマックスは、そのことを象徴するかのように何でも器用にこなし、全てにおいて上位の成績を取っていた。
リウとエリックがカラス寮の不満について話しながら歩いていると、寮の方から男子生徒が一人歩いてくるのが見えた。
両手に何かを抱えている。
「あれっ」とエリックが立ち止まった。
前方から来る生徒はエリックと同じ
「マックス? どうしたの? 」
「こいつ」
マックスは、両手に持っていたモノを二人の前に突き出した。
子猫くらいの大きさで、虹色の羽毛に覆われている。
リウは誰かのペットを連れてきたのかと思い、怪我でもしているのかと尋ねようとした時、マックスの手の上の生き物が聞き覚えのある声で喋り出した。
「リウ、おれ、どう?」
幼い男の子のような甲高い声、ネオンだった。
「えっ、どうしちゃったの、ネオン。鳥みたいだよ」
「リウの机のなかに入って、なんかみつけて……」
羽毛に埋もれていてわからなかったが、
ネオンは自分の腹の下からもぞもぞとペンダントを引っ張り出した。
フジサキ魔法学舎に来る前に祖母からもらったペンダントだ。
リウは入学以来、寮の自室の引き出しの中に入れっぱなしにしていた。
ペンダントの紐が金属ではなく革紐だったため、入浴の時に毎回外すのが面倒くさいと思って初日以降身につけることはなかった。
リウはマックスからネオンごとペンダントを受け取った。
ネオンを目の高さまで持ち上げて観察した。
トゲトゲした鱗のトカゲだったのが、今は鱗と同じような色の羽毛が体を覆っている。
羽毛のせいなのか、一瞬で成長したのか、
近頃は眠いと言ってずっと寝ぼけたような目をしていたが、今は両目ともパッチリと開いて輝いていた。
体の痒みも治ったのか、体を掻きむしるような素振りは見せない。
「会議室から寮に戻ったら、ラウンジにこいつが降りてきて……。
その時にはもうこうなっていた」
マックスはネオンがラウンジに降りてきた時のことを話し始めた。
――
有志チームが会議室を出ていったあと、他の寮の代表生徒たちと少し話してから、私は寮へと戻った。
突然打ち合わせに乱入してきた生徒のうち、一人はヒューゴも知っているVJという男子生徒だったが、もう一人の女子生徒は誰だ?
他の二寮の代表生徒が普通に接していたから、二人は知っている生徒だったんだろう。
ひとまず、
考えながら歩いていると、寮の前だった。
扉を開けて、ラウンジに入ると何か生き物が目の前に来た。
鳥か何かだろうか、誰か寮生のペットか?
ラウンジには誰もいないみたいだな。
飼育許可の申請の届け出をしているのかどうかはさして問題じゃないが、放し飼いにするのは良くないだろう。
鳥のような生き物は私の前までくると、じっと私の顔を見つめてきた。
「兄ちゃん、おれ浮いてるよ! すげー」
聞き覚えのある声に、生き物をよく見てみると
いや、トカゲだった。トカゲだったはずだが、この姿は何だ? というか、前見た時よりかなり大きくなってないか?
「……お前、ネオンか?」
「ネオンだよ。なんかこれに触ったらさ、すっごく元気になって体もかゆくなくなったんだ。でもわさわさーってなったけど。」
「人のものを勝手に触るのは良くないぞ」
「リウのだよ。リウの部屋にあったもん。
ねえ、兄ちゃん、リウに見せに行きたい。リウどこ?」
「ああ……まだミーティングだと思うが……探しに行くか? 」
「行く! あ、でもここまで飛んで来たら疲れた。
兄ちゃん、抱っこして連れてって」
浮いているトカゲに手を差し出すと、擦り寄るように腕の中に入ってきた。
トカゲだから体温は高くないと思っていたが、ほんのり温かみが伝わってくる。
昔、
――
マックスの話を聞いたところ、ネオンが突然変化した原因はペンダントにあるようだ。
祖母からもらったペンダントはただのアクセサリーではなかったということだ。
これでリウは中間試験、特別演出、ネオンの正体探しに加え、ペンダントが何かという問題も抱えることになった。
ただ、リウにそこまで多くのタスクを同時に進行するキャパシティはなかった。
ひとまずは、目の前のことからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます