第4話 明日への期待

 食後のデザートを楽しんで満足した生徒たちがバラバラに食堂から出始めた。


エリックが席を立ってマックスの方に向かうのを見て、リウもイスから立ち上がった。


アズサが新入生である一年生を集めているところに合流した。


「さっきはごめんね。友達に呼ばれちゃって」


 アズサはリウに謝りながら、一年生たちを簡単に整列させた。


人数を数えて全員揃っているのを確認してから「遅れずついて来てね」と大きく手を振りながら一年生たちに声をかける。


リウは先頭に立って歩き始めたアズサの隣を歩いた。


おしゃべりしながらゾロゾロと後ろをついてくる一年生たちを気にしながら、アズサはリウに笑いかけた。


「私も風紀委員なの。エリックとは話せた?」


「そこそこかな。

お兄さんと同じであんまりおしゃべりな人じゃないみたいだね」


「そう?リウがかわいいから緊張してたのかもよ」


「そういうタイプでもなさそうだけど」



 愛想笑いの一つも見せなかったエリックの顔を思い出す。


分け目から横に流した淡い色プラチナブロンドの前髪、グレーの瞳に長いまつ毛に、形の良い眉。


あれは美少年って表現で良いんだろうな、と思いながら寮への道を歩いた。



「あしたの朝も、私が新入生を食堂へ連れて行く係だからリウも一緒に行こう。

私がラウンジに行く時に扉をノックしていくから、一度で起きてね」


「ご迷惑かけます、ちゃんと起きれるよう頑張るよ」


「頑張らなくても起きれるように力一杯扉を叩いてあげる」


アズサは、あしたの練習と言わんばかりに腕を振って扉を叩く真似をしてみせた。


思わずリウが笑うと、アズサも笑った。


二人はおやすみ、と言い合ってそれぞれの部屋に戻った。



 ひとり部屋に戻ったリウはあしたの時間割を確認してから、入学のために新調したリュックサックに教科書や筆記用具を詰め込んだ。


脱いだブレザーとスカートにシワがつかないよう丁寧にハンガーにかけ、パジャマに着替えた。


ベッドに横になって灯りを消して、きょう一日の出来事を振り返る。


狂ったゴンドラリフトに乗って中庭に落ちた。


入学式に遅刻して参加できなかった。


所属寮の代表生徒マックスはドライで端正な顔の先輩だった。


その弟エリックも同じような美少年だった。


初めてできた友達アズサはかわいくて優しい。



 あしたからの初めての授業に期待をしながらリウは眠りに落ちた。

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