第2話 旅の始まり
熊は兎を連れて、薬屋の家へ行きました。
薬屋の家は、森の南側にある赤い三角屋根の小さな家です。良く手入れされた小さな庭があり、玄関の近くにある鉢植えには花が咲いていました。
熊は礼儀正しくドアをノックをして言いました。
「薬屋さん、こんにちは!ぼくは熊です。兎さんもいっしょです。」
すると、扉はすぐに開きました。
「やあどうぞ、よく来てくれたね。」
紫色のローブを着た薬屋は、熊と兎を招き入れると、温かいお茶を淹れてくれました。
それから熊は、自分が素敵な色になれたこと、兎も違う色になりたいことを伝えました。
薬屋は頷いてから、兎に訊ねました。
「君は今と違う色になりたいの?」
「はい。ふつうで、みんなに嫌われないような…そんな色に、なりたいです。」
兎は緊張しながら答えました。
薬屋は少し思案してから言いました。
「残念だけど、あの薬は今手元にないんだよ。」
薬屋の話によると、『なりたい色になれる薬』の材料は、金色の林檎だそうです。
皮は金色の『なりたい色になれる薬』、実は白い『怪我を治す薬』、果汁は透明な『病気を治す薬』種は黒い『心を癒す薬』…薬屋は、金色の林檎を材料に、色々な薬を作ります。
その林檎は、キラキラと輝き食べると大変美味しいのですが、大変貴重な物でした。北にある一番高い山の頂上にだけ生っており、それを銀色の狼が守っているそうです。
「北の山に行く途中で、困っている者たちに薬を届けてから、銀色狼から金色の林檎をもらってきてほしい。そうしたら、君にも『なりたい色になれる薬』を作ってあげよう。」
薬屋の言葉に、森から出たことがない兎は不安になりましたが、熊は呑気に言いました。
「良いなあ!楽しそうだし、ぼくも一緒に行くよ。」
「良いの?」
「だって、もともとぼくが誘ったんだし、それになりたい色になれた君を一番に見たいの。」
薬屋は、一枚の地図と『病気を治す薬』、『怪我を治す薬』、『心を癒す薬』、小さな宝石の欠片を小さなリュックに入れて、兎へ手渡し、こう言いました。
「まずはこれを持って、地図の通りに進んでごらん。」
きみは何色? 熊木翔子 @kumaki_0w0
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