第28話028「クラスメイト<第一王女視点>②」



 私の名はミーシャ・セルティア。15歳。


 父はセルティア王国国王『フィリップ・セルティア』。つまり、私はこの国のお姫様ってわけ。


 兄弟は上に二人お兄様がいて、一番上のお兄様は私の4つ上で名前『ジェリコ・セルティア』。2年前に学園を卒業して、現在は『第一魔法騎士団』にいる。顔も頭も性格も良く、学園ではいつも人気者だったと聞いているが、私からしたら「嘘でしょ?!」って感じだ。


 まーたしかに、ジェリコお兄様は見た目も頭も良い⋯⋯⋯⋯が性格は別だ。ジェリコお兄様は性格が良いのではなく『表向きの顔』が良いのだ。ちなみに、王城では普段、私や2つ上のお兄様をいつも馬鹿にしていた。


 特に2つ上のお兄様である、現・セルティア魔法学園生徒会長である『レオンハート・セルティア』こと、『レオお兄様』への敵対心は顕著だった。しかし、そんな当たりの強いジェリコお兄様に対し、いつも冷静な対応でスマートにあしらうレオお兄様は、誰の目から見てもどちらが役者が上かは明らか・・・だった。


 レオお兄様は、貴族からも評価は高かったが特に国民からの人気が高かった。もちろん、『外面』の良いジェリコお兄様も国民から人気はあったが、レオお兄様のほうがより人気が高かった。7:3でレオお兄様という感じだ。


 だが、皮肉にも現国王である父フィリップ・セルティアはジェリコを溺愛していたので、次期国王はジェリコお兄様であることを私は物心ついたときからずっと聞かされていた。


 ジェリコお兄様が国王になることは決まっていることだ。おそらく数年以内に即位するだろう。これは決定事項なのだ。しかし、正直その先の未来は⋯⋯⋯⋯暗い。


「また、この既得権益まみれの王政が続くのか⋯⋯」


 現・国王である父フィリップも、ジェリコお兄様も思想がほぼ一緒だった。その思想というのが『貴族史上主義』というやつだ。つまり『貴族は平民よりも身分が上なのだから、平民は貴族に逆らってはいけない』という思想だ。


 一応、貴族とは元々は『戦争など有事の際は、自ら先頭に立って国や国民を守る役割を持つ』というものであったが、その精神はもはや形骸化しており、今の貴族は『貴族に無礼を働く平民やそれ以下の者たちは自由裁量で処分してよい』という『貴族至上主義』となり、平民や獣人・亜人から恐れられていた。


「母が生きていたら、また少しは変わっていたのだろうか⋯⋯」


 母は5年前に病気で亡くなったのだが、そんな母はいつも私とレオお兄様の味方だった。もちろん、ジェリコお兄様のことも私たちと同じように接していたが、しかし、ジェリコお兄様は私たちにも優しい母より、自分だけを可愛がる父にベッタリだった。


 当然、父も自分に特に懐くジェリコお兄様を可愛がり、そして現在に至っている。


 父もジェリコお兄様もこの現政権下で多くの貴族に支持されていた。当然、支持している貴族とは『既得権益で甘い蜜を吸っている者たち』のことを差す。


「⋯⋯このままで良いはずがない。でも、父とジェリコお兄様に既得権益の問題を言ったところでまともに取り合うことは絶対にない。だって、その既得権益側の貴族から支えられているのだから⋯⋯」


 八方塞がりとはまさにこのこと。


 しかし、そんなときだった。


 私とレオお兄様の数少ない味方である有力貴族の一人から『現状をひっくり返す可能性』について提案された。


 それは、あまりにも荒唐無稽な内容であったが、しかし、これを提案した人物は元々魔法研究をしていた人物なので、魔法について詳しい者だったということもあり、


「もし、これが本当に実現できればセルティア王国の腐敗を一掃できる⋯⋯。い、いや、それどころか、世界の多くの問題も解決できるのでは⋯⋯?!」


 と、私とレオお兄様はその話に興奮した。


 一通り興奮した私とレオお兄様に、その提案してきた男は「とりあえず、今はその者を影から支えるだけして欲しい」と言われたが、同時に「彼にバレないようサポートしてほしい」という無理難題も言われた。


 理由としては「彼の自発的な研究意欲が良い結果を生むから⋯⋯」ということだった。


 六大魔法研究の第一人者として有名だった彼の言葉なだけに、私とお兄様はその提案をすぐに了承した。


 ということで、私とお兄様はしばらくはその『鍵』となる人物をそっと見守ることにした。


 ちなみに、この『現状をひっくり返す可能性』ということで提案してきた『六大魔法研究の第一人者』として有名なその人物とは、王都の遥か東端の辺境を支える人物で、名はヘミング・ウォーカー辺境伯と言った。


 そして、そのヘミング・ウォーカー辺境伯の話に出た『鍵』を握る人物というのが、彼の実の息子ラルフ・ウォーカーであり、そして今、その人物の見事な所作と佇まいによる自己紹介を見て、思わず拍手をしたところだった。


(これが、あの⋯⋯⋯⋯ラルフ・ウォーカー)


 この目の前の少年こそが、この国の運命を変えるかもしれない『可能性の種』だった。





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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


毎日お昼12時更新(現在は投稿休止中。4月27日(土)から再開予定)。


よかったら、こちらもお読みいただければ幸いです。


mitsuzo

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