第27話027「クラスメイト<ラルフ視点>①」



「皆さん初めまして。『魔法自由科』の担任をしているフリオ・スタリオンです」


 入学式が終わった後、『魔法自由科棟』へと移動した私は一階の一年生の教室へ。そして、生徒全員が集合したタイミングで先生が入ってきて自己紹介を始めた。


 スタリオン先生は身長は私より少し低いくらいで、金髪で端正の顔立ちをした30代前半くらいの人だった。なかなかのイケメンである。ていうか、イケメン多いな、この国。


「さて、ここ『魔法自由科』は知っての通り、必修科目である『魔法基礎』『歴史』『作法』『料理』の授業を3年間規定回数分ちゃんと受ければ自動的に単位が取得でき卒業できます。もちろん、それ以外の授業は受けなくても構いませんし、『お茶会』を催すのも問題ありません」


 スタリオン先生が淡々と事前に聞いていた『魔法自由科』の『特典』を説明する。周囲の生徒たちもまたそれが『当たり前』という認識で特にリアクションを取る者はいない。


「あと、平民や獣人・亜人の生徒たちも同じく必修科目の授業をちゃんと受ければ卒業できる。ただ、君たちは卒業後どうしたいか、どの仕事につきたいかちゃんと考えて、この3年間を過ごして欲しい。まー言わなくてもわかっていると思うが⋯⋯」


 そう。貴族以外の平民・獣人・亜人の生徒は魔法学園に入学できたとはいえ、卒業後は何も伝手がなければ就職は難しい。まー実際はここに来た生徒であれば、ちゃんと将来を見据えているのがほとんどなので先生もとりあえず説明をしておいた⋯⋯という感じだった。


 ちなみに、教室内の生徒の割合だが、生徒全員で30名ほどいるが、そのうち貴族が7割、平民が2割、獣人・亜人が1割という感じで、例年より貴族が多くなっていた。⋯⋯というのも、それには『ある理由』があった。


「初めまして、『ミーシャ・セルティア』と申します。3年間よろしくお願いいたします」

「「「「「きゃ〜〜! ミーシャ様ぁぁ〜〜!!!!」」」」」


 ミーシャ・セルティア——苗字を見ればおわかりいただけるだろう。そう、セルティア王国第一王女である。これが、今年の『魔法自由科』の貴族生徒が増えた理由である。


 それにしても、話には聞いていたが恐ろしいほどの美少女だった。銀色の髪とコバルトブルーの瞳が印象的なその美貌は、男性だけでなく女性さえも虜にすると言われても納得がいく。まー実際、周囲の男子・女子関係なく、ミーシャ・セルティアの美貌に圧倒されていたのだが⋯⋯。


 ところで、魔法学園では座る席があらかじめ決められている。教室の扉側から順に身分の高い貴族から始まり、平民・獣人・亜人と席が配置されている。これも『身分バッジ』と同じくトラブル防止の一環である。


 さて、そんな席順の中で私はというと、


「では、次。ラルフ君⋯⋯」

「はい!」


 そう、私はこの『魔法自由科』では、身分上は・・・・王女の次に身分が高いので、私は王女のすぐ後ろの席なのだ。


 ということで、王女の次は私の番だった。



********************



「初めまして。ウォーカー領よりまいりましたラルフ・ウォーカーと申します。東の辺境の田舎者ですので何卒いろいろと教えていただければと存じます。3年間、宜しくお願いいたします」


 私が挨拶すると小さくパチパチパチと下から拍手のような音が聞こえた。私はその音のする方向へ視線を向けると、それはもちろん⋯⋯⋯⋯王女ミーシャ・セルティアの拍手だった。


(かっ!? 可愛い⋯⋯!)


 ていうか、たかが自己紹介なのに王女がわざわざ後ろ向いて私に拍手送るなんて⋯⋯⋯⋯一体どういうことなのかまったくわからなかった。おかげで、私は多少混乱した。


 あと、もう一つ意味のわからないことがあった。それは周囲の貴族生徒らの反応だ。


 何やら私の顔を見て、皆が驚いた顔をしているのだ。


(な、何だ? この周囲の生徒の反応は? なぜ、私を見てそんな驚いた顔をする?)


 しかし、まー答えなど出ることがないのはわかっているので、私は何とかその思考を手放した。


 その後は滞りなく皆の自己紹介が進んでいく。


 一通り、貴族勢が終わると次に平民の生徒らが挨拶となる。ちなみに『魔法自由科』では、平民は男子5名に女子3名の8名で、獣人は女子1名、亜人はエルフの女子1名の10名が在籍している。


(おそらく、この11名全員の称号は『生活魔法士』なんだろうなぁ⋯⋯)


 貴族であれば、六大魔法士でも魔力量が少ない理由で『魔法自由科』に来るだろうが、平民や獣人・亜人の場合は将来のことを考えた場合、六大魔法士であれば『魔法騎士科』に行くだろう。なんせ、『魔法騎士科』に入って卒業すればほぼ確実に『騎士』になれるし、実力があれば『近衛騎士』やそれ以上・・・・も望めるからだ。


「⋯⋯さて、これで自己紹介も終わったので今日はこれで解散となります。明日からは授業が始まりますので今日は明日の準備と英気と休養を取ってください」


 どうやら、今日はこれで終わりらしい。私としても昨日は宿屋から入学式会場へ向かったので、まだ学生寮の自分の部屋を見ていないのでちょうどよかった。


「⋯⋯最後に、この『魔法自由科』は確かに卒業しやすい学科ですので、それをそのつもりで利用していただいても構いません。ですが、本来この『魔法自由科』は『魔法を自由に探求する学科』という目的で作られた場所なので、もしも⋯⋯もしも⋯⋯魔法の探求に興味があれば必修科目以外の授業もぜひ受けてみてください。魔法はまだまだわからないことが多い。六大魔法はもちろん、生活魔法も含めてです。この『魔法自由科』はそんな魔法全体の探求に興味がある方にとっては最高の環境ですので、興味がある方は私に一声かけてください。それでは今日のホームルームを終わります」


 スタリオン先生は、一気にそう言ってガーッと想いの丈をぶつけた⋯⋯⋯⋯が、ほとんどの生徒はその先生の言葉は響いていないようで特に関心を示していなかった。しかし、



 一部の生徒・・・・・らを除いては⋯⋯。





********************


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


毎日お昼12時更新(現在は投稿休止中。4月27日(土)から再開予定)。


よかったら、こちらもお読みいただければ幸いです。


mitsuzo

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