第26話026「魔法自由科」



——『魔法自由科』


 さて、ここからはいよいよ私が通う『魔法自由科』の紹介だ。


 まず、『魔法自由科』という学科は冒頭でも話したが元々のキャッチフレーズは『魔法を自由に探求する学科』である。しかし、現在はその様相を体しておらず、『魔法自由科』のキャッチフレーズは『魔法学園を100%卒業できる学科』である。


 さて、そのキャッチフレーズの由来だが、これは各学年ごとに『魔法基礎』『歴史』『作法』『料理』の4つの必修科目の単位を取得すれば、それ以外の授業は受けなくても100%卒業できるというところからきている。


 では、なぜ学科のキャッチフレーズが変わったのか。


 それは、ぶっちゃけ『出来の悪い貴族の生徒』への救済措置らしい。


 セルティア魔法学園は『魔法大国』ということもあって、魔法学園の教育レベルは高いのだが、20年ほど前——その教育レベルについていけない貴族の子供が続出した。


 もちろん優秀な貴族の生徒も全体の半数はいたが、逆を言えば、残り半数は『出来の悪い貴族の生徒』だった。そして、そんな『出来の悪い子供を持つ貴族たち』が手を組んで、国王に『我らの子供らの水準でも魔法学園を卒業できるシステムを新しく作って欲しい』と嘆願。


 正直、そのような申し出は家や親さらには息子の『品位・品格を下げるもの』となるのだが、当事者の親や子供たちはそういった感覚はなかったようで、それどころかさらに大きな抗議の声を上げた。⋯⋯果ては「学園の教師や学園長の問題だー!」とも。


 国王は「こんな嘆願を平気で行う親や子供らの将来が心配だ⋯⋯」と嘆きつつも、しかし、貴族の半数以上の生徒が卒業できないというのはやはり外聞が悪いということで、国王は半ば強引に『魔法自由科』に『100%卒業できる学科』という『ゆるい卒業基準』を設けるよう学園長に指示。


 だが、学園長や教師は国王の申し出にかなり抵抗した。なぜならそのような『ゆるい卒業基準』を設けるというのは自分たちの『恥』や『不名誉』に他ならないからだと。


 しかし、『出来の悪い貴族の生徒』が半数以上と数があまりにも多かったため、国王は学園長に溜飲を下げるよう言って、ほぼ命令という形でこの『ゆるい卒業基準』を設けさせた。


 その後、『六大魔法士ではあるものの魔法量が少ない生徒(貴族)』だとか『勉強が苦手な生徒(貴族)』といった、いわゆるエリートから外れた『出来の悪い生徒(貴族)』が入る学科へと変わる。


 しかし、それから何年か時が経ち、最近になってこの『魔法自由科』の『ゆるい卒業基準』を別の形で利用する貴族らが現れた。なんと、その貴族らは『将来の派閥形成のための貴族間交流の場』という形で『魔法自由科』を利用したのだ。


 結果、その利用方法は大きく功を奏した。


 というのも、これまで『出来の悪い貴族が入る学科』というイメージしかなかったので外聞が悪かったのだが、この『将来の派閥形成のための貴族間交流の場』という意味合いで利用されるようになってからは『魔法自由科』に進学しやすくなったと多くの貴族の親や生徒が喜んだ。


——そして、今に至る。



 さて、そんな現在の『魔法自由科』には2つのイメージが定着している。


 1つは先ほど話した『将来の派閥形成のための貴族間交流の場』。そして、もう1つが単純に魔法を探求したいという『魔法オタクが集まる場』というものだ。


 現在、貴族の生徒からは「せっかく派閥形成の場ということでイメージアップしたのに、魔法オタクが集まったおかげで台無しになってしまった! いいかげんにしろ!」とお怒りの声が続出している。


 ちなみに、この魔法オタクの生徒のほとんど⋯⋯9割が『生活魔法士』の称号を持つ平民(貧民)・獣人・亜人であり、そして、この魔法オタクたちが『騎士科』のストレスの捌け口となっている。


 要するに、私がこれから入る『魔法自由科』はこのセルティア魔法学園の中でカースト最下位の学科と言っても過言ではないのだ(えっへん!)(※褒めてない)


 ちなみに、元々の『魔法自由科』のキャッチフレーズ『魔法を自由に探求する学科』というのは現在ではほとんど飾りとなっているが、一応、『魔法大国』という肩書きを掲げているので現在でも魔法研究は行っている。


 しかし、それを行っているのは何人かの生徒や教師だけで、いわゆる『少数派マイノリティ』という者たちだけだ。


「私も変人その部類になるんだろうな⋯⋯」


 ちなみに、今説明した情報はローラが事前に魔法学園について調べていたものだった。


 相変わらず——ウチの妹が万能すぎる件。




 そんな、学園カースト最下位必至の学科である『魔法自由科』の1年生教室の入口に着いた私は、期待と不安で高鳴る心臓の音を抑えるべく、


「スゥゥー⋯⋯⋯⋯ハァァー」


 一度、大きく深呼吸をした私は、


「よし、いくぞ!」


 と、心の中で力強く想いを乗せて言葉を吐き出すと、教室の扉を開け足を踏み入れた。





********************


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


毎日お昼12時更新(現在は投稿休止中。4月27日(土)から再開予定)。


よかったら、こちらもお読みいただければ幸いです。


mitsuzo

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