第24話024「入学式」



——入学式


 現在、『武闘ホール』では入学式が始まった。


 入学式開会の挨拶ということで、このセルティア魔法学園の学園長が登壇した。


「セルティアの若き才能たちよ。セルティア魔法学園へようこそ。私は学園長の『ザナーク・レンフロ』だ。よろしく」


 学園長のザナーク・レンフロという男性——見た目は20代後半で髪は銀髪。それに、


「すごいイケメンだな⋯⋯」


 まだ、20代後半くらいの若者だが、この王族や貴族らが通うセルティア王国主要教育機関である『セルティア魔法学園』の学園長とは⋯⋯⋯⋯。すごい優秀な人なのだろうな。


「ようこそ。セルティア魔法学園へ。王族・貴族の生徒諸君はここで魔法の真髄に少しでも近づくよう励むように。また、狭き門の入学試験を潜り抜けてきた平民や獣人・亜人の生徒諸君⋯⋯ここはゴールではなくスタートだ。試験は大変だっただろうがこれからが本番⋯⋯気を引き締めて頑張って欲しい!」


 ああ、そうだった。私たち王族・貴族はテストはなく希望者であれば誰でも入学できるが、平民や獣人・亜人は入学試験が必要だったな。『人間至上主義』の色が強いこの国であれば平民も試験免除かと思ったがそこは『実力重視』といったところか。


 それにしても、いくら学園長とはいえ、王族や貴族の生徒に対して上からのような言い方だったが大丈夫なのだろうか?


 ただ、生徒を見ると学園長の言葉に特に嫌な顔をしているのは見当たらず、むしろポツポツとだが学園長を尊敬の眼差しというか、憧れの眼差しのような熱い視線を送るのもいる。


「もしかして、学園長って有名人⋯⋯なのか?」


 ちなみに、学園長が平民や獣人・亜人らに言っていた入学試験というのは実技になる。


——————————————————


【入学試験(平民・獣人・亜人)】


<合格条件>下記いずれかに当てはまる者

●『称号が六大魔法士であること(下級士・中級士・上級士・特級といった階級は問わない)』

●『魔法学園生徒全体の平均以上の魔力量』


——————————————————


 つまり、六大魔法士ではない生活魔法士でも魔力量が合格基準以上あれば受かるということ。


 つまり、魔法学園の入学試験で重きを置いて見ているのは『魔力量』ということだ。


「魔法学園が『六大魔法士だけ育てる』という方針でなかったのは助かったな」


 しかし、これは何を意味するのだろう?


 生活魔法にも何か可能性を見出している⋯⋯ということなのだろうか?


「いや、もしかしたら、王族や貴族でも私みたいに子供が生活魔法士であるところもいるから⋯⋯ということか?」


 生活魔法士の将来性に着目しているというよりかは、王族・貴族の子供達への配慮こっちのほうが現実的⋯⋯か。


「まーでも王族や貴族の生活魔法士であれば魔力量は豊富だろう。⋯⋯なるほど。そう考えると、この学園の試験の合格基準が『魔力量重視』なのも納得いくな」


 と、一人脳内で「謎は解けた!」と勝手に盛り上がった。


「⋯⋯また魔法学園は『身分無礼講』と身分による差別は禁止している。だから、平民や獣人・亜人だとしても学園内では『一生徒』として見なされる。だから、権力を振りかざすような行為は慎むように。私からの話は以上だ」


 最後に学園長が『身分無礼講』という話を聞いたが、これに私は普通に驚いた。


 いくら、魔法研究を優先する国とはいえ、『身分による差別を禁じる』と公の場所ではっきりと言うのは難しいと思う。しかし、学園長ははっきりとそう告げたということであれば、意外と学園内では本当に身分による差別はないのかもしれない。


「だとしたら、良い環境かもしれないな⋯⋯」



********************



「では、最後に⋯⋯⋯⋯セルティア魔法学園生徒会長の挨拶です」


 ざわ⋯⋯。


「?」


 司会がそう告げると、周囲の生徒⋯⋯主に女子がソワソワし始めた。⋯⋯なんだ?


「入学おめでとう、新入生諸君! 私が学園の生徒会長レオンハート・セルティアです」


 キャァァァァァァァァァァァァ!! レオ王子ぃぃぃぃ〜〜〜〜っ!!!!!


「っ!?」


 生徒会長が挨拶するや否や、数十人の新入生(主に女子)が黄色い声援を上げる。それを聞いた先生が「コラ! わきまえなさいっ!!」と注意するなど、少し会場がざわついた。すると、


——スッ


「静粛に」

「「「「「っ!!!!!!」」」」」


 レオ王子の一言にざわついた場が一瞬で静まり返った。


 レオ王子は特に怒鳴ったわけではなかったのだが、その声はスーッと心に染み込むような声色で、それでこの荒れた場の空気が一瞬で消え去った。正直、男子でもつい聞き入ってしまうほどの声に私は思わず驚く。


 その後は、淡々とそつなく話を続けるレオ王子。——ちなみに周囲の女性たちはボソボソと「はぁ〜、レオ王子最高〜」とか「端正な顔立ち以上だけじゃなく、あの美声イケボまで⋯⋯天は二物を与えたか」などと言いながら、とろけた顔でため息を吐いていた。


「これが、セルティア王国第二王子レオンハート・セルティア⋯⋯か」


 噂では、国民の中では次期国王として期待されている第一王子よりも第二王子のほうが人気があると聞いていたが納得がいった。あの3分ほどのスピーチであれだけの『カリスマ性』を感じさせる人物などそうはいないだろう。




「どこかでタイミングが合えば一度お話してみたいですね」





********************


「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


毎日お昼12時更新(現在は投稿休止中。4月27日(土)から再開予定)。


よかったら、こちらもお読みいただければ幸いです。


mitsuzo

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