第二章<セルティア魔法学園/入学編>
第23話023「セルティア王国王都セルン」
【第二章<セルティア魔法学園編>】
——セルティア王国王都『セルン』
アガルタ大陸の中央より右下に位置する人口およそ12万人と中規模の国家で王都の名は『セルン』。大陸にある5つの国の中でも最先端の魔法や魔道具研究を行っている『魔法大国』として有名だ。
そんな魔法大国であるセルティア王国の王都セルンに、私は故郷のウォーカー辺境伯領から5日かけて到着した。
「やっと着いた〜」
一応、入学式は明日なので今日は街の宿屋で一泊となった。
学園は『全寮制』になるので個人的には寮に入っても良かったのだけど、私に付いてきた従者らが寮の部屋に荷物を運び、掃除したりするとのことで今日一日だけは街の宿屋へ泊まることとなった。
ちなみに街の宿屋⋯⋯と言っても『貴族街』にある立派な宿屋だ。もちろん快適なので特に異論はない。
王都は『王族領』『貴族街』『一般街』と3つに区画されていて、王族が住む『王城』を中心に『貴族街』『一般街』と同心円上に作られている。
「いや〜、こういう時には貴族に生まれてよかったな〜って思うよね」
私はそんなひとり言を言いながら、このセルティア王国のことを頭の中で復習していた。というのも、私は赤ちゃんの頃の読書で一応はこの世界の国や歴史などについて頭に入れてはいたが、改めて、セルティア王国について記憶を引っ張り出した。
「え〜と⋯⋯たしか、セルティア王国はアガルタ大陸の右下⋯⋯南東部の端に位置していて、東は海に面しているものの、南には『獣人族』が支配する国『ナヴァロ獣王国』があると⋯⋯」
私はこの国の知識を掘り起こし紙に記録していった。
「で、さらに北側と西側にはアガルタ大陸でも大きな領土を有する2つの大国の一つ『グランザード帝国』が隣接しているんだよね。こうやって見ると、地政学的には戦争・紛争の耐えない危うい立地に見えるよね、この国って。でも⋯⋯これまでの歴史上ほとんど侵略戦争は起きていないんだよな〜。まー理由はこの二つの国の間に多種多様で強力な魔物が生息する『深淵の森』が広がっているからだけど」
そう。この『深淵の森』がある以上、他国がセルティア王国に大規模に侵入するのは困難なのだ。
「まーそのおかげで、他国のスパイが侵入して内側から破壊工作を仕掛けることが多かったみたいだね⋯⋯」
そんな歴史があるセルティア王国は、他国からの旅行者や移住者、留学生などにはかなり厳しい監視の目が付くらしい⋯⋯⋯⋯が、それでも豊かな土地であったり、魔物の狩場、あと海に面しているので『海の恵み』にも有りつける魅力的な土地ということもあり、それを承知でセルティア王国に移住する者は多く、さらに、それは人間だけでなく獣人や亜人の移住者も多い。
「この国は『人間至上主義』の国だから、獣人や亜人は結構な差別を受けていると父上が言っていたな」
ちなみに、ウチの領にも獣人や亜人が少なからずいたけど元々見識も広く良識のある両親だったから、奴隷という立場であった獣人や亜人を差別せず、また領民にも差別をさせないよう教育していた。
「まーそんなウチみたいな領主はそうそうないだろうけど⋯⋯」
ちなみに亜人とは『エルフとドワーフその他』を差す。
「それにしても、この国は明らかに『人間至上主義』のくせに、外向きには『人間至上主義ではあるが、獣人・亜人の差別は推奨していない』などと公言しているのはどういう了見だろう?」
例えば、どこにでも良い顔をすることで『利を得られる』可能性が高いからとか、そういう理由なのだろうか?
「まーでも、この国の『外向きの言葉』のおかげで、父上と母上は領民に獣人や亜人を差別しないよう教育することができたからよかったんだけどね」
ダブルスタンダード様様である。
それにしても『奴隷や亜人たちは人間よりも身分が低い』というのが常識なこの世界で、両親の『奴隷・亜人への差別を良しとしない』という考え方ができるのは素直にすごいと思う。⋯⋯だって、両親のその考え方はまさに『異端』なのだから。
「異端⋯⋯か。フフ、なんだ私と同じじゃないか」
私は改めて二人の息子で間違いないなと思い知らされた。
********************
——次の日
いよいよ今日は入学式ということで、早めに起きた私は朝食を済ませ、余裕を持って学園へ向かった。
ちなみに、セルティア魔法学園は全寮制ではあるが、王族・貴族などは執事やメイドを携えているのがほとんどなので、王族・貴族の執事・メイド専用の宿泊施設も用意されている。
え? 私? そんな執事やメイドといった従者なんてのはいない。
なんせ、ウチは『位』だけは侯爵の次に高いが『深淵の森』と『海』に面する何もない田舎領地で有名な『東の辺境伯』なのでお金は潤沢にはないのだ。
一応、両親には「メイド一人くらいは連れて行ってもいいぞ」と言われたがお断りした。
だって、別に一人でも生活はできるしね。
今は貴族でも元は平民みたいなものだから。炊事・洗濯・掃除なんて別に問題ない。
むしろ、一人のほうが気楽だし、いろいろとメリットは多いと思っている。
今日は、入学式が終われば自分のクラスへ行き、そこでホームルームが終われば解散だ。おそらく、ほーうルームで自己紹介とかするんだろう。
「さてと『武闘ホール』はっと⋯⋯⋯⋯⋯⋯ここか!」
その『武闘ホール』という円形上のドームの中に入り、ドーム内の通路を抜けるとただっ広い空間が広がっていた。
「広っ!? 高校の体育館の3倍くらいは広いんじゃないか!」
バスケットコートが8面は入るほどの広さだ。
その会場の奥に舞台があり、そこに生徒たちが集まっていたのでそこに向かう。
「あれ?」
周囲を見ると、以外にも貴族よりも平民の生徒の数が多いように感じた。
一応、学園の生徒の平均的な割合は『王族・貴族:7割』『平民(貧民):2割』『獣人・亜人:1割』と聞いていたのだが⋯⋯見た感じ、平民の数が若干多いように感じる。
単純に数だけで言えば貴族よりも平民の数が多い。だが、『魔法学園のテストに受かるほどの才能がある平民』はものすごく数が少ないので通常は貴族の生徒が多いのだが⋯⋯。
「もしかしたら、今年は平民からの合格者が多かったのかな?」
あと、獣人や亜人であるエルフやドワーフの生徒も聞いていたよりも多いように感じる。
「それにしても、獣人や亜人を見ると異世界感出るな〜」
一応、ウォーカー領の領民にも獣人や亜人はいたが遠くからしか見たことがなかったし、話す機会もなかったので、こうして目の当たりにすると『異世界情緒』を感じる。
ところで、魔法学園では『王族』『貴族』『平民』『獣人』『亜人』と5種類のバッジである『身分バッジ』というものが用意されており、生徒たちは必ず学生服の左胸に刺すよう校則で定められている。
これは、生徒間でのトラブルが起きないよう『相手が何者か』というのを示すためのものだ。校則にするくらいなので、おそらく過去にトラブルなどがあったのだろうと推測できる。
「えーと、身分バッジは⋯⋯⋯⋯付けてるな。よし!」
私は、左胸に身分バッジを付けているのをしっかりと確認すると、自分の名前が書かれているイスを見つけ腰を下ろした。
「ドキドキ⋯⋯いよいよ、学園生活が始まる。一体、どんな出会いがあるんだろうか⋯⋯」
今の私は、前世の学生時代よりも緊張ですごくドキドキしていたが、それ以上に、これからこの魔法学園で何が待っているのだろうという⋯⋯『期待』に胸がワクワクしていた。
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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404
毎日お昼12時更新(現在は投稿休止中。4月27日(土)から再開予定)。
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