第19話019「これまでの思い出」



 皆と別れてから約1時間——今はウォーカー領の隣にある村に近くまで来ていた。


 ちなみに、我がウォーカー領は隣国との国境沿いにある『辺境伯』なので、王都にある魔法学園へは5日ほどかかる。その為、道すがら町や村に滞在しながら王都を目指すこととなる。


 私はウォーカー領以外の町や村に行ったことがないので、道程にある町や村に入るのもまた王都へ向かうまでの一つの楽しみでもある。


「王都に入るまでいろんな町や村に滞在できるのは最高だな!」


 そうして、私は意気揚々と王都へと旅立った。




 地球で寿命を迎え、一度は生を終えた私だったが、気がつけばこのような異世界にウォーカー家の子供として生まれ変わった。しかも、地球では一人っ子だった私に2人の可愛い弟と妹もできた。


 途中から、少しヘンリーとは仲が悪くなったけど、でも今では仲直りをしてすっかり元の仲良し兄弟になった。末っ子のローラに至ってはずっと仲良しのままだ。


 両親は私が『神託の儀』で『生活魔法帝』という残念な称号を授かっても、蔑むことなく私に一生懸命に愛を与えてくれた。


 私はこの世界に転生して、本当に⋯⋯本当に⋯⋯良い人生を送らせてもらったと思っている。


「それにしても⋯⋯⋯⋯『生活魔法帝』か」


 私は魔法学園では『ラルフ式生活魔法』の研究はもちろんだが、自身の称号『生活魔法帝』についても研究する予定だ。


「それにしても、私のように『生活魔法士』以外の生活魔法関連の称号を持つ者はいるのだろうか? あと『生活魔法帝』と称号に『みかど』といった『位』があるということは、別の『位』を示す称号も存在するのか?」


 興味や疑問は尽きない。


 まー、そんなことを今考えたところで答えなんて見つかるわけもなく、むしろ、その程度で出てくるような答えなら魔法学園に行く意味などないわけで。


「フフフ⋯⋯セルティア王国魔法学園か。一体どんな学校なのだろう? そして、どんな人たちに出会えるのだろうか?」


 あの『神託の儀』のときに一度だけ訪れた王都——当時赤ちゃんとはいえ、あの時点で私は意識が覚醒していたので王都の記憶は断片的ではあるが残っている。


「そう言えば、あの時⋯⋯レア称号をもらった、あの銀髪の少女も⋯⋯魔法学園にいるのだろうか?」


 すごくキレイな銀髪が印象的な子だった。


「会えると⋯⋯いいな」



********************



 私は前世では学生時代も社会人時代も『事なかれ主義』と『他人に合わせて生きる』といった八方美人のような人生を送った。


 そんな私が前世で死ぬ間際、10代に戻ることができたら『問題から逃げずに、言いたいことを言える強い人間になりたい』と思っていた。



 そして、私は新しい生を貰い、地球とは違う星に転生した。



 そして、幸いにも転生したこの世界で私は『力』を持って生まれた。



 しかし、これをどう使うかは私の意志に委ねられている。



 やることは多い。



 挫けることもあるだろう。



 でも、せっかくいただいたこの人生——悔いなく最後まで前のめりに生きていこうと思う。



「人生は上々だ!」



 第一章<幼少編> 完



********************



【ここまでわかっていること】

・『神託の儀』で得られた称号は、途中で変更もできない

・『神託の儀』で『生活魔法帝』の称号のとき、水晶から虹色に強烈な光が出た

・この世界では六大魔法(地・水・火・風・光・闇)が主流マジョリティの魔法

・生活魔法は「日常生活の一部でしか使えないクズ魔法」と評価が著しく低い

・生活魔法の称号の場合、『生活魔法士』と1種類しかないはずなのに、自分の称号が『生活魔法帝』と新しい生活魔法の称号っぽいし、これまでの歴史にも出たことのない称号であるにもかかわらず、教会関係者や貴族は関心を示さなかった

・称号は、六大魔法の魔法士であれば『自分の使用する魔法『六大魔法(地・水・火・風・光・闇)』と、その魔法をどのレベルまで使用が許されるかという『魔法士階級(下級士・中級士・上級士・特級士)』がくっついたものとなる(生活魔法士には当てはまらない)

・この世界の『神様』として崇められている『オプト神』も生活魔法に対し、辛辣な評価をしている

・生活魔法は発動させる魔法に制限なく魔力を注げる

・六大魔法は魔法名に『魔法効果・威力・必要魔力量』が記録されており、故に、その記録されている『必要魔力量』以上の魔力を注ぐことはできない

・六大魔法の魔法システムは『権力に見合った魔法士階級』が得られ継承されるので、権力を持つものたちの地位は将来に渡って盤石となっている

・生活魔法しか使えない『生活魔法士』は魔力量が著しく低く、六大魔法の魔法士の中で一番下に位置する『下級魔法士』よりも魔力量が少なく、およそ下級魔法士の半分以下か良くて同じくらいである

・生活魔法は全属性の魔法が使えるが、生活魔法士に魔力量が豊富な者がいないため、生活魔法が全属性の魔法を使えたとしても、どうすることもできなかった

・生活魔法が使えて、且つ、魔力量が豊富にある自分なら全属性魔法の威力を上げて使用できる?

・前よりも魔力量が増えているかも?

・この国の権力者たちは『既得権益』を守るような国なので、生活魔法の研究や発見は秘密にする


New

・ヘンリーに次期当主をやってもらったほうが自分としても何かと都合が良い

・六大魔法の魔法士は『六大魔法の魔力回路』と『生活魔法の魔力回路』2つあるが、この世界の魔法の常識では『六大魔法の魔力回路』を使うのが簡単で効率的だと教えている

・『六大魔法の魔力回路』を使った魔法発動の場合、ほぼ自動的に発動できるので簡単で、且つ、魔法の発動スピードも早い

・六大魔法の魔力回路は『AT車オートマ』という感じで、生活魔法の魔力回路は『MT車マニュアル』みたいなもの。自動か手動か。『自動』は簡単で効率的だが自由度が低い。『手動』は体に馴染むまで大変だが一度コツが掴めば自由度が高い⋯⋯という感じ

・自分以外でも『生活魔法の魔力回路』を使った魔法発動を続けると魔力量が増えていく(六大魔法でも試したが魔力量は増えなかった)

・父には『生活魔法の研究』がバレていたが、父上も「公開するのは危険」と言ってラルフの味方であることが判明

・父がラルフのために『セルティア魔法学園』への入学、それと、その入学となる15歳までの6年間は生活魔法の研究を惜しまなく続けなさいという了承を得る

・ヘンリーの引きこもりも解決し、さらに、ヘンリーとも仲直りができ、昔のような仲良し3人兄妹となった

・ローラとヘンリーの私を見る目が、好意や尊敬よりも少し強い何かを感じる(気のせいかな?)

・領民から『聖人ラルフ様』と呼ばれたっぽい。あと領民の私へのリアクションもおかしい(気のせいかな?)

・15歳になったラルフは、ついに王都にあるセルティア魔法学園へ通うこととなった ←いまここ



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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


毎日お昼12時更新。


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mitsuzo

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