第15話015「ヘミングとの対話(9歳)」
私を監視? 私の使う生活魔法に興味?
「ち、父上。それって⋯⋯」
「ああ。そして、今回お前を呼んだ理由の一つが、そのお前の持つ『生活魔法』についての話だ」
「っ?!」
私の『生活魔法』についての話が今回呼ばれた理由の一つ? ということは、
「私はお前の使う生活魔法が普通ではないことを知っている」
「!」
「さらに言えば、夜明け前から屋敷裏の敷地内の森で生活魔法の訓練をしているのも知っているぞ。途中からローラも混じって一緒に魔法訓練をしていたようだな」
「⋯⋯⋯⋯」
「一応言っておくが、ローラが私に告げ口したとか⋯⋯そういうことではないぞ。さっきも言ったが、元々はヘンリーの監視からお前の『生活魔法の異常性』に気づいてお前を監視するようになったのが始まりだからな」
「⋯⋯⋯⋯」
「お前にずっと黙っていたのは悪いと思っている。しかし、私は私でこの事実を知ってどうするかをずっと悩んでいたのだ。そんなとき、ヘンリーがこうなったことで、逆に今が話す機会だと思ってな。それでお前を呼んだ」
「⋯⋯なるほど。そうだったんですね。でもよかったです」
「ラルフ?」
「とりあえず、父上がどこまで私の『生活魔法』を把握しているのか教えてもらっていいですか?」
その後、父上がこれまでの監視で知った私の『生活魔法』について聞かせてもらった。
********************
「なるほど、わかりました。だいたいは合っていますね」
「だいたい⋯⋯だと? 私の知らないことがまだあるのか?」
「はい。ただその前に⋯⋯⋯⋯父上は私の生活魔法について
「⋯⋯現状、私としてはお前の生活魔法のことを国王へ報告するかどうか⋯⋯いまだ判断しかねている」
「!」
父上は私の生活魔法があまりにも常識を覆す内容ということで国王への報告を
「⋯⋯正直、父上がそう思ってくれていたのはよかったです。最初、私は自分の生活魔法の異常性に気づいた時、父上にすぐに話さなかったのは国王に報告することで私の自由が拘束されないか心配だったからです」
私は父上の言葉を信じて、これまで抱えていた悩みを話した。
「そうか⋯⋯そうだったのか。お前はお前で悩んでいたんだな。気づけずにすまなかった」
父上は私の話を聞いて、何やらショックを受けていたようで私に謝った。
「いえ、そんな⋯⋯! 謝らないでください!」
「いや、お前がそこまで考え悩んでいるとは思っていなかったよ。私がヘンリーだけを見ていたばっかりに⋯⋯⋯⋯本当にすまなかった」
「父上⋯⋯」
そう言って、父上は私に頭を下げて再度謝った。
「さて⋯⋯⋯⋯それで改めて聞くが、お前はどうしたい、ラルフ?」
「はい。私としては次期当主はこのままヘンリーにしてほしいと思っています」
「そうなのか?」
「はい。どちらかと言うと、私は次期当主よりも自分のこの生活魔法についての研究をしたいと考えています」
「生活魔法の研究⋯⋯」
「はい。父上もご存知かと思いますが、私の生活魔法は条件によっては他の人でも使用できることがわかりました。その一例が⋯⋯」
「ローラか」
「はい。ローラは今では私の『高威力版生活魔法』を使うことができます」
「ああ、そのようだな。しかし、報告ではかなり魔力制御が難しいというのを聞いている」
「はい。ですので、今は『魔力量が豊富にある人で、且つ、魔力制御に長けた人』しか使用できないものとなっています。ですが、私はさらに研究を重ね、この『高威力版生活魔法』がもっと身近に手軽に使えるようにしたいと考えています」
「何っ!? もっと身近に手軽に⋯⋯だと!!」
「はい。ただ、それは⋯⋯」
「あ、ああ、そうだな。それが本当に実現すれば、現在の王族や貴族たちの既得権益を脅かすことになるだろう」
「⋯⋯はい」
二人の間に沈黙が流れる。
「⋯⋯そうか。お前の真意はこの生活魔法の発展なのだな。であれば、私がお前の将来に対して考えていることと、お前の望む将来への希望はうまいこと重なるかもしれん」
「え?」
「私はヘンリーを正式に次期当主として任命し、お前には王国の魔法学園へ通わせようと思っている」
「お、王国の⋯⋯魔法学園! そ、それって⋯⋯」
「ああ。お前も知っているだろう?」
「は、はい!」
王国の魔法学園——正式名称『セルティア魔法学園』。
15歳になると、希望者は王族・貴族・平民関係なく、王都にある『セルティア魔法学園』へと入学することができる。
個人的には「王族や貴族だけでなく平民もって⋯⋯大丈夫なのか?」と思ったが、セルティア王国は魔法研究で世界で1、2を争うほど魔法研究で有名な国の一つ。その為、『才能』があれば、平民だろうが認めるほど魔法に関しての理解度が高く、懐の深い国として有名だった。
ただし、その魔法の理解度や懐の深さは、
「お前の生活魔法はこれまでの常識を覆すほど『異質』なもの。故に、この国の王族や貴族には受け入れ難いものだろう。なので、いくら魔法研究に理解のある我が国の魔法学園とはいえ、果たしてすんなり受け入れてくれるかどうかは⋯⋯⋯⋯正直、わからない」
「⋯⋯そうなんですね」
やはり、単純な話ではなかったか。
「しかし、あの魔法学園には
「はい」
「ちなみに、お前の話を受け入れるような物好きな連中がいるとしたら、おそらく生徒ではなく先生のほうだろうな」
「えっ!? 教師のほうが⋯⋯ですか?」
「ああ。なんせ、あそこには魔法探求に人生をかけている先生が私の知っているだけでも何人かいるからな⋯⋯。まー私も学生時代は六大魔法を『研究する側』だったし⋯⋯」
「え? 六大魔法を研究する側?」
そう言って、父上が学生の頃の話を始めた。どうやら、父上は六大魔法を研究したおかげで『風魔法特級士』の才能を遺憾なく発揮することができたらしく、そのおかげで戦場でも活躍することができたとのこと。
そして、その戦争での活躍が子爵から辺境伯という今の地位に成り上がることができた⋯⋯という話だった。
「まーおかげで私は同時に六大魔法の限界も知ってしまったのだがな」
「六大魔法の⋯⋯⋯⋯限界?」
「そうだ」
「あ! もしかして、『称号』や『魔法名』によって扱える魔法が制限される『縛り』のことですか?」
「なっ!⋯⋯⋯⋯ラルフ、お前そこまですでに理解しているのかっ!?」
「は、はい」
父上が私の言葉にかなり驚いたリアクションを見せた。
「し、信じられん⋯⋯。確かに、お前は生まれてからすぐに本が読めるほど聡明な子であることは知っていたが⋯⋯だとしても、今言った『称号や魔法名の縛り』に気づくなんて⋯⋯。そんなことは本には載っていなかったはずだ。⋯⋯一体どうやって?」
「あ、えっと⋯⋯そうですね。自分がこの『高威力版生活魔法』について、いろいろと研究するようになった結果という感じでしょうか。六大魔法って何かすごく窮屈だな〜⋯⋯と感じたのがきっかけですね⋯⋯」
「なるほど。お前のその『高威力版生活魔法』があったからこその気づき⋯⋯か。それにしてもすごいな、ラルフは!」
「い、いえ! それほど⋯⋯でも⋯⋯」
これまでずっと敬遠されていた父にここまで手放しに褒められたのが久しぶりだったこともあり、私はかなり嬉しくて、でも、すごく恥ずかしくて照れてしまった。
「そうか、そうか。であれば、やはりお前は絶対に魔法学園に行くべきだ。私が全面的に協力しよう!」
「父上!」
「ヘンリーのことは心配するな。私がきちんと責任を持ってヘンリーを引きこもりから立ち直らせ、このウォーカー辺境伯の次期当主として指導し支えていく。お前は気にせず、魔法学園入学までの残り6年間はできること・やりたいことをしっかりやりなさい」
「あ、ありがとうございます、父上っ!!」
私はまさかここまで父上が協力してくれることになるとは思ってもいなかったので、驚きと同時にとても嬉しかった。
こうして、私は今後は父上に隠すことなく『高威力版生活魔法』の研究を行うことができるという⋯⋯⋯⋯最高の環境を手に入れたのだった。
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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo
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