第11話011「ローラにバレました(6歳)」
——6歳になった
私は「ヘンリーが次期当主となるほうが個人的にも都合がいい」と悟ると、次に「どうやったらこの家から円満廃嫡することができるだろうか?」と考える日々が続いた。
あ、ちなみに2つ下の妹であるローラとは今でも仲が良い。⋯⋯⋯⋯ていうか、ローラがかなり懐いてくれている。
なので、この頃よく4歳のローラに私の『愚痴』を聞いてもらったりすることが多かった。⋯⋯というよりも、私が一方的に話をしているだけだったのだが。
まーローラはそんな私の話を聞いてもキョトンとしているだけだったのでたぶん私の話を理解していない。でも、私としてはかえってそのほうがありがたかったので、ローラに悪いと思いつつも「人とは違う生活魔法が使えるんだけど〜⋯⋯」とか「もっとみんなが豊かさを共有する社会になればいいのにな〜」などと愚痴や将来への展望などを話したりしていた。
さらには「実は、お兄ちゃんは生まれる前の別の人間だった頃の記憶があるんだよ〜」とか「前にいた世界ではね、空飛ぶ乗り物とか馬より何倍も早い乗り物があってね〜⋯⋯」と『前世の話』までもしていたが、それでも、ローラは相変わらずキョトンとして「よくわかんな〜い」と言って、笑って話を聞いていた。
私の話を理解できていないはずなのに、それでも私の話にいつも付き合ってくれた彼女のおかげで、ヘンリーに言われてへこんだ気持ちがだいぶ回復した。
まー、そんなこんなでローラは私にすごく懐いていたし、私もとても可愛がっていた。
だから、将来——この家を出て彼女と別れることになるのはすごく寂しいことだと思っていたが、しかし、私が家を出ることで多くの問題が解決するので、そこは何としても我慢しようと思っている。
「別に一生会えなくなるということではない。だからこそ、どうにかして『円満廃嫡』を目指さなければ⋯⋯」
私はさらに決意を固くした。
「それにしても、ローラもヘンリーと同じように私を軽蔑してもおかしくないと思っていたがそうならなかったのは意外だったな〜。まーそれはそれでとてもありがたかったけど⋯⋯」
私は元いた地球の記憶や知識があるので、この世界の常識はそこまで強く影響されないが、ヘンリーやローラのような賢い子であればこの世界の貴族社会のことを学べば、私の『称号』のことで軽蔑の態度を取るのが普通だろうに。
「まー、ローラに嫌われなかったのは私にとっても救いだったけどね」
さて、そんなこんなで6歳の頃の私は、朝は父に剣術・体術を習っていたので、生活魔法の研究はそのさらに夜明け前の午前3時頃に起きて続けていた。
さすがに最初の頃は眠たかったが、しばらくすると慣れてきて今では『超朝型人間』になった。
そんな夜明け前に生活魔法の研究をするようになり、朝起きるのにも慣れた頃——私は『大きな失敗』をした。
ローラに生活魔法の研究している姿を見られたのだ。
「お兄⋯⋯様⋯⋯?」
「ロ、ローラ! なぜ、ここにっ?!」
「た、たまたま、目が覚めて何気に窓から外の景色を眺めていたら⋯⋯森のほうに明かりが見えたので⋯⋯」
ローラの話では、森からいろんな色の光が見えたので「何だろう?」と気になり、こっそり屋敷から出て様子を見にきたとのこと。
ローラは好奇心旺盛のところがあるので仕方ないことだが、しかし、もう少し慎重にやればよかったと私は後悔した。⋯⋯だが「時すでに遅し」である。
「ラ、ラルフお兄様⋯⋯。さっきまでやっていたあの魔法は何なのですか?」
私はローラの質問にどう答えようか、とプチ混乱していた。
すると、意外にもローラのほうから声をかけてきた。
「お、お兄様。大丈夫です。私、誰にも言いませんから」
「え?」
「でも⋯⋯『条件』があります」
と、ローラは「誰にも言わない」というかわりに条件を提示してきた。
「わ、私にも⋯⋯⋯⋯ラルフお兄様の生活魔法を教えて欲しいです!」
********************
私はローラの申し出に迷った挙句、「秘密にしてくれるならいいよ」と彼女の申し出を了承したが、しかし、「私の使う生活魔法はかなりの魔力量と魔力制御が求められるから難しいかも⋯⋯」と説明をした。しかし、ローラは、
「それでも構いません! やり方だけでも教えて欲しいです! それに、もし私に扱えないものだとしてもお兄様の秘密は絶対に守ります!」
と、そこまで言ってくれた。
そこまで言ってくれたローラに、私が断る道理などあるだろうか⋯⋯いやない。
「わかった。じゃあ、いろいろと試してみよう!」
「あ、ありがとうございます! ラルフお兄様、大好きっ!!」
ローラがそう言って満面の笑みを浮かべながら私の胸に飛び込んだ。
「見つかったのがローラで良かったよ⋯⋯」
私はそんな本音を漏らしながらホッと息をついた。
それからは、私の夜明け前の生活魔法研究にローラも参加することとなった。
最初、ローラに私の『生活魔法』を使うにあたっての注意点とコツを教える。
「いいかい? とりあえず⋯⋯⋯⋯そうだな、まずは『
「わ、わかりました。う〜⋯⋯⋯⋯『
ピカー!
ローラの出した『
なので、ローラに『もっと魔力を注いでみて』と言って再度試してもらったが、どうしても普通の『
そこで、私はローラに魔法を発動するまでの過程を聞いてみた。
「一生懸命魔力を注いでいたのですが、途中で魔力を注ぐのが勝手に止められてしまう感覚でした⋯⋯」
と説明してくれた。
それを聞いて、私は「どういうことだろう?」とその問題について考える。
ローラには「この問題が解決しないと次に進めない」と説明し、その間はお休みにしようと告げた。
——それから一週間後、
私は2つの『仮定』を導き出した。
——————————————————
『仮定』
①ローラが生活魔法の『
②そもそも魔法の威力を上げられるほどの魔力量がない
——————————————————
ローラが「魔力を注ごうとしたら、途中で注ぐことができなくなった」と言っていたのは、おそらく『仮定①』が原因じゃないかと私は推測した。
そこで調べてみると、『生活魔法は六大魔法では下級魔法に位置する』という記述を見つけた。私はこれを見て、ある一つの可能性と自分が勘違いしていたことがわかった。
「⋯⋯以前『生活魔法は誰でも使える』と本で書いてあったので、私は『自分と同じ生活魔法が誰でも使える』と思っていた。でも、ローラが出した『
だから、ローラが魔力供給を途中で止められたと言っていたのではないか。
ちなみに、それを裏付けるような内容も見つかった。それには、本来、六大魔法の魔法士は六大魔法だけでなく『生活魔法専用の魔力回路』も存在するが、実際、日常で生活魔法を使う際『六大魔法の下級魔法』を利用するのが主流らしい⋯⋯と。
そこで私はローラに質問をした。
「ローラ、君は家庭教師から魔法を習っていると思うけど、生活魔法を使うときはどうすると教えられたのかな?」
「えーと、光魔法の下級魔法を利用しなさい⋯⋯と教えられました。そのほうが簡単だし効率的だと」
やっぱり。
これで、ローラが発動した『
「では、ローラ。『
「や、やってみます⋯⋯!」
すると、
ピカァァァァァァァァァァーーーーっ!!!!
「えっ!? い、以前より、かなり明るく⋯⋯!」
やはり、『生活魔法の魔力回路』で生活魔法を発動すれば魔力を注げることができた。しかも、
とりあえず、仮説②の『魔力量が少ない』ということはないようだな。
ということで、ローラにどんどん生活魔法で練習しようと勧めた。しかし、
「お、お兄様⋯⋯。この生活魔法の魔力回路って⋯⋯すごく⋯⋯扱いづらいです」
「⋯⋯え?」
ローラの話だと、『生活魔法の魔力回路』を使った生活魔法を発動するのは初めてだったとのこと。そして、実際に生活魔法の魔力回路を使って生活魔法を発動してみると、いつもと違ってだいぶ魔力制御が難しかったとのことだった。
「お、おそらく、生活魔法の魔力回路を使ったことがなかったからだと思いますが、でも、それにしても、六大魔法の魔力回路に比べると、随分制御が難しかったです。光魔法下級魔法の『
「自動的?」
********************
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo
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