第12話012「ウチの妹がすご過ぎる件(6歳〜8歳)」
私はローラの『自動的』という言葉に引っかかった。
「もしかして、六大魔法の魔力回路って⋯⋯⋯⋯自動車の『
私の『生活魔法帝』も、生活魔法しか使えない『生活魔法士』も六大魔法の魔力回路は存在しないので、ローラが言っている『六大魔法の魔力制御は簡単』というのはわからないし確認もできないが、しかし、もしかすると、
「六大魔法の魔力回路は『
私は確証はないもののその可能性は高いと思ったので、
「ローラ! 大変だと思うがこの生活魔法の魔力回路を使って、これからしばらく生活魔法を試してみてくれ。たぶん、最初はエンスト⋯⋯じゃなかった、魔法発動を失敗することが多くなると思う。でも、それでもめげずにやってみてくれないか?」
と、ローラに『生活魔法の魔力回路』に慣れるよう指示を出した。
「わかりました。やってみます!」
それから、毎朝、森に来てローラは練習した。
初めて、私の前でやったときは一発成功した『
しかし、それでもローラは諦めずに毎朝私のところに通い、生活魔法を必死に練習した。
——それから二週間が経過した頃
「で、できましたわ! これで、生活魔法の魔力回路を使って、ほぼ完璧に魔法を発動できるようになりましたわ!」
ローラがついに生活魔法の魔力回路を使った魔法発動をほぼ完璧にこなせるようになった。
そんな、ローラの顔を見ると『達成感』のような自信に満ちた笑顔が迸っていた。
「ラルフお兄様。これは大発見だと思いますが、すごく危険に感じます」
「え?」
ローラが生活魔法の魔力回路で魔法発動を安定してできるようになり、さらに威力を増す訓練をしていたある日——突然そんなことを言ってきた。
「ラルフお兄様のこの発見はこれまでの魔法の常識、いえ世界の常識を覆すものです。ですので、公表されるのは控えたほうがよろしいかと⋯⋯」
と、ローラが私がずっと危惧してきた『危険性』を指摘した。
あ、あれ? ローラって、まだ4歳だよねぇ?
ウチの妹が天才過ぎる件。
「あ、ああ、そうだね。それは私も理解しているよ。だからローラも用心するんだよ?」
「はい! お兄様と私だけの秘密ですね!」
そう言って、ローラが満面の笑みで答えた。
それにしても、この歳ですでに物事をここまで冷静に判断・分析できるこの知性は、頼もしいやら末恐ろしいやらである。
こうして、私とローラはその後も引き続き、敷地の森で『夜明け前魔法訓練』という名の『スーパー朝活』を共に行うようになった。
********************
——7歳になった
ヘンリー6歳。ローラ5歳。
この頃にはローラもかなり精細な魔力制御ができるようになっていた。そんな中、
「ラ、ラルフお兄様⋯⋯⋯⋯な、なぜか、魔力量が増えてるみたい⋯⋯なんです」
どうやら、ローラも私と同じく生活魔法の魔力回路を使った魔法発動を繰り返すうち、潜在魔力が増えている現象が起きたらしい。
それはつまり、私以外の人でも「生活魔法の魔力回路を使った魔法発動を続ければ魔力量が増える」という証明になった。
実際、ローラは『スーパー朝活』で限界まで生活魔法の練習をしていたので、もしかすると魔力枯渇を繰り返していた結果、魔力が増えたのかもしれない。
「魔力枯渇まで追い込む必要があるのだろうか? それとも、魔力枯渇までいかないにしても魔法を使い続けるだけでも魔力量が増えるのだろうか? はたまた、その魔力の増加スピードに違いもあるのか?⋯⋯⋯⋯いろいろ調べることが多いな」
「お兄様?」
ローラは私がブツブツと一人言を言っているのを見て、心配して声をかけてきた。
「あ、すまない。えっと、そうだな⋯⋯まずローラの今言った魔力量が増えているというのは⋯⋯」
と、私は自分も実際に魔力量が増える経験をしたということと、さっき一人でブツブツ言っていた『魔力量増加ロジックの解明』についてローラにできるだけわかりやすく説明をした。
すると、去年とは違って5歳になったローラは、
「素晴らしいです、ラルフお兄様! すでに、そこまでの見識があったとは⋯⋯!」
と、私の説明をちゃんと理解したようで、さらには見識が高いとすごく褒められた。
何か、ウチの妹の理解度が高過ぎる件。
その後、ローラが「では、私も『魔力増加ロジックの解明』のお手伝いをしますわ!」と言って、精力的に私の生活魔法研究の一部を手伝ってくれることになった。
ちなみに、『六大魔法の魔力回路』でも同じことをやってみたが、結果、六大魔法の魔力回路を使って魔法発動を限界までやっても魔力量が増えることはなかった。
********************
——8歳になった
ヘンリー7歳。ローラ6歳。
ローラと私はいつものように敷地内の森でスーパー朝活に励む日々を送っていた。
ローラもこのスーパー朝活を始めてから2年。今では私の5歳のときくらいの『高威力の生活魔法』が使えるようになっていた。
ローラは何でも覚えるのが早いし、器用なのですごいスピードで成長している。以前、その事をローラに言って褒めたが、
「いえ、お兄様の見識の高さや何事にも造詣の深い思考、そして、底知れぬ強さからすれば、私なんて羽虫の成長程度です」
「⋯⋯⋯⋯」
6歳なんて『承認欲求の塊』くらいなはずなのに、ローラにはそんな感じはまったくなく、むしろ謙虚⋯⋯⋯⋯を通り越して自分を卑下するような言い方さえしていた。それはある意味ローラが賢い故のことなのだろうが、だが、さすがにそこまで自分を卑下するのはいけない。
「ローラ、いいかい? そんなに自分を卑下してはいけないよ。君は自分が思っている以上に素晴らしい才能と素質を持った魅力的なレディだ。もっと自信を持って、もっと自分のことをちゃんと褒めてあげて。そして、凛とした強さを身につけたレディになってください。これは兄からの願いです」
「! ラ、ラルフ⋯⋯お兄様⋯⋯」
ローラの頬が紅く染まった。
「フフ⋯⋯ローラはやっぱり可愛いね。きっと成人したら素敵なレディになること間違いないよ」
そう言って、私はローラの頭を撫でる。
「!」
トゥンク!
あれ? 何かの音が聞こえた気がしたけど⋯⋯⋯⋯気のせいかな?
「お、おおお、お兄様は、こ、ここ、こういうことを平気で無意識にやるので、私にはこれからの、お、おお、お兄様の魅力が知れ渡った未来が⋯⋯⋯⋯すごく心配ですっ!!」
「え? 私の魅力? 何を言っているんだい? 私なんて大した魅力なんてないじゃないか。ハッハッハ⋯⋯おかしなことを言うな、ローラは」
「あー⋯⋯⋯⋯デスヨネー。ワカッテナイデスヨネー」
「ん? ローラ?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜⋯⋯ナンデモナイデス」
「??」
何か、ローラが凄く残念そうな目を向け、深いため息を吐いた。
思春期かな?
********************
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404
毎日お昼12時更新。
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mitsuzo
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