第10話010「剣術・体術訓練とヘンリー(5歳〜6歳)」
——5歳になった
この頃から剣術と体術の訓練が父の指導のもと始まったのだが、この訓練は1個下の弟ヘンリーと一緒にやることとなった。
ちなみに、ヘンリーもその下の妹のローラも生まれてすぐに『神託の儀』を受けたのだが、その結果、ヘンリーはなんと父と同じ『風魔法特級士』を授かり、妹ローラは母と同じ『光魔法上級士』を授かった。
ヘンリーもローラもすごいレア称号を授かったことで、両親も私も大いに喜んだ。
その後、成長していくにつれ、最初は私にべったりだったヘンリーが3歳頃になると、少しずつ私と距離を取るようになっていった。特に喧嘩をしたわけではないのだが、なぜか避けられるようになった。
たまに、廊下ですれ違うと私のほうから話しかけることはあったがヘンリーから話しかけられることはなかった。それどころか、ヘンリーはいつも私に対してずっとイライラしているように見受けられた。
最初、何でヘンリーが私にそんな敵対心を持っているのかさっぱりわからなかったが、ある日、ヘンリーが私に面と向かって「僕は父と同じ称号を持っている。だから、兄上より僕のほうが次期当主に相応しい!」と言ってきた。⋯⋯それで、はっきりとわかった。
「ああ、そうか。ヘンリーも大人と同じように『生活魔法』という私の称号に⋯⋯」
まー「いずれこうなるかも」と思っていたけど「もしかして、ヘンリーなら大丈夫なんじゃないか?」とも思っていた。⋯⋯⋯⋯だが現実はそう甘くはなかったということだ。
「そっか。この世界の常識とはいえ⋯⋯⋯⋯なかなか、しんどい⋯⋯な」
そんなヘンリーの言葉に落ち込む私を見て、ヘンリーはさらに追い打ちをかけるようなことを言ってきた。
「僕も妹も父と母の称号を授かったのに兄上だけ『生活魔法帝』という生活魔法の称号を授かった。それって、もしかして⋯⋯⋯⋯本当の両親は別にいるのではないですか?」
「っ!!!!」
さすがに、これはひどい言葉だと思った私はヘンリーに厳しく注意した。しかし、ヘンリーは聞く耳を持ち合わせておらず、それどころか、
「僕は兄上をこの家の者だと思っていません! だから、今後は兄貴づらして僕に話しかけないでください!」
「⋯⋯ヘンリー」
ヘンリーにそこまで恨まれていたとは思っていなかった私は、ショックで思わずその場から逃げ出した。そして、自分の部屋へ入ると電気を消して一日中体育座りをしながら考え込んだ。
「⋯⋯確かに、私だけ両親の属性魔法は授けられなかった⋯⋯。それって、やはりヘンリーが言うように別の家の子供だからってことなのか⋯⋯?」
すると、私は最悪な行動に出てしまう。
母上の部屋に行き、本人に直接聞いてしまったのだ。
「そんなことは絶対にありません! ラルフは⋯⋯私が⋯⋯お腹を痛めて⋯⋯産んだ⋯⋯初めての子よ」
母上は涙を流しながら諭すように私に言葉を紡いだ。私はそんな母上の姿を見て「何てことを言ってしまったんだ⋯⋯私は」と激しく後悔した。
私はその時の母の悲しい顔を一生忘れないだろう。
ヘンリーの言葉はいろいろと酷かったが、しかし、ヘンリーが言うことももっともだという部分もあった。それは『ウォーカー家の次期当主』の話だ。
ヘンリーの言う通り、私の称号でこの家を継ぐのはどう考えても良いものではない。実際、私自身も「父と同じ称号を持つヘンリーが当主となったほうが他の貴族にも見栄えはいいし、領民にとっても安心するだろう」と考えていたからだ。
「ヘンリーのことや、ウォーカー家、領地のことを考えれば、私がこの家を出ていくのが最善⋯⋯ですね」
私はヘンリーにいろいろと酷いことを言われたりされたが、しかし彼のことが嫌いではない。むしろ大好きだ。
それに、私には「この家を継ぎたい」という気持ちはない。むしろ、『魔法』や『自分の称号』について研究をしたいのだ。
「あれ? じゃあ、ヘンリーがそのまま次期当主になったほうがすべて丸く収まるじゃん?」
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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo
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