第9話009「生活魔法の可能性(4歳)」
——4歳になった
この年、ちょうど私たちの領地の森で魔物が増えたので『間引き』の依頼が領主である父に入った。
ウチの家は『辺境伯』なので、王都からだいぶ離れた地にあり、そして、遠くに目を向ければ微かにではあるが隣国が見えるというこの土地をずっと守っている。
とはいえ、隣国とウチとの間には凶悪な魔物が生息する森『深淵の森』があるため、お互い隣国へ簡単に渡れない。しかし、そのおかげでお互い隣国の脅威を回避できているため、基本、平和である。
ただ、『深淵の森』の魔物が時折魔物の数が増えることがあり、その時
その周辺には強力な魔物が住む森が多く、そのため領地内にある『冒険者ギルド』だけでは間引きが間に合わない時は父へと間引きの依頼が来ることがある。
ちなみに、私が生まれてから去年までは冒険者ギルドだけで対処できる程度だったが、今年は魔物の数がかなり増えたということで父へ依頼があった。
父はすぐに対処が必要だということですぐにその間引きに向かった。領地の歴史が記された本を読んで知っていたのだが、この間引きはかなり安全マージンが取られて行うらしく、そのため私はダメ元で父に「私もその間引きを見たみたい」とお願いをした。
最初は父も母も反対だったが、普段わがままを言わない私が必死に何度もお願いをしたおかげか、何とか父の了承を得ることができ、魔物の間引きの見学が許されることとなった。
母は「危ない」と言ってずっと反対していたが、最後は父が説得して何とか許してもらえたが、そのかわり「絶対にお父さんの言うことを守るように!」と強く言われた。もちろん、私は自分が戦闘に参加するなどとは考えていなかったので「はい!」と元気よく母上へ返事を返した。
そうして、1週間後——私は父と共に『魔物の間引き』に参加した。
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魔物が生息する森は、私が普段魔法の研究で利用している家の敷地内にある森とは違って不気味な雰囲気があった。家の敷地内の森には魔物がいないので、この不気味な感じは魔物がいるのが何か作用しているのかもしれない。
そんなことを考えていると、早速『間引き対象の魔物』が現れる。その間引き対象の魔物とは『ホーンラビット』という角を持つ兎でかなりの数がいた。
たぶん100匹以上はいたと思う。見た目は愛らしいが、しかし性格は凶暴で気性が荒く、人間とわかると角を使って突進してくる。油断すればその角に刺されて出血多量で死ぬこともある。
とはいえ、父やベテラン冒険者からすれば弱い魔物に部類するので脅威ではない様子。実際100匹近くいるホーンラビットを剣や斧、魔法でどんどん殲滅していった。
そして、その時使用していた魔法というのが『六大魔法の属性魔法』だった。
この時、私は初めて六大魔法の属性魔法を見た。
そして、その感想だが⋯⋯⋯⋯やはり私が思っていた通りだった。
「私の使う生活魔法のほうが遥かに高威力だ」
その後は特に苦戦することもなく、慣れた手つきで魔物を殲滅していき、5時間後には予定の魔物の数を間引きすることができたので依頼は完了となった。
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家に帰った後、私は夕食のときに父の勇姿について母に熱っぽく話をした。
父はもちろんのこと、母も私が父の勇姿の話を聞いて喜んでいた。ちなみにこの時、1個下の弟ヘンリーが「次あったら僕も見にいきたい!」と言ったので父も母も少し困っていたが、個人的には今度はヘンリーと二人で見学に行きたいと一応注文を出しておいた。
夕食が終わり、部屋に戻った私は今日初めて見た属性魔法について考えた。
「やはり、私の生活魔法の威力は尋常じゃなかった⋯⋯」
正直、全然威力が違っていた。段違いに。その事実を知って私は、
「これなら十分にやっていける! 生活魔法でもこの世界でやっていける!」
自分がこれまで生活魔法の実践や研究で得た推論は間違っていなかったと⋯⋯⋯⋯推論が確信に変わった瞬間でもあった。
できれば、この嬉しさを両親に伝えたい。しかし、
「⋯⋯それはできないよね」
そう。これを父に報告すると下手すれば国王へ報告する事態になるかもしれない。すると、どうなるかはわからない。
「もし、この国が前例のないものに対して『好意的』なら丁重に扱われたり爵位を貰ったりするかもしれない。しかし、逆の場合なら⋯⋯⋯⋯」
その場合、おそらく私自身に危険が及ぶ可能性は高いだろう。最悪、殺されるか⋯⋯よくて、国外追放といったところだろうか。
生活魔法はこの世界の常識では『最弱なクズ魔法』という位置付けだ。そんな生活魔法の魔法士が、六大魔法の属性魔法を持つ魔法士よりも威力のある魔法を扱えるとわかったとき、果たしてこの国が諸手を上げて喜んでくれるかは⋯⋯⋯⋯かなり怪しい。
何よりこの世界の歴史は長いこと六大魔法で大成した貴族が世襲している。この国もそうだ。そうなると、そんな『既得権益』を手放すようなことはまずしないだろうし、それを脅かす存在は、
「消される⋯⋯のがオチだろうな」
よくある話だ。
「この世界も『日本』と一緒でズブズブの官僚構造なんだろうな⋯⋯」
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【ここまでわかったこと】
・『神託の儀』で得られた称号は、途中で変更もできない
・『神託の儀』で『生活魔法帝』の称号のとき、水晶から虹色に強烈な光が出た
・この世界では六大魔法(地・水・火・風・光・闇)が
・生活魔法は「日常生活の一部でしか使えないクズ魔法」と評価が著しく低い
・生活魔法の称号の場合、『生活魔法士』と1種類しかないはずなのに、自分の称号が『生活魔法帝』と新しい生活魔法の称号っぽいし、これまでの歴史にも出たことのない称号であるにもかかわらず、教会関係者や貴族は関心を示さなかった
・称号は、六大魔法の魔法士であれば『自分の使用する魔法『六大魔法(地・水・火・風・光・闇)』と、その魔法をどのレベルまで使用が許されるかという『魔法士階級(下級士・中級士・上級士・特級士)』がくっついたものとなる(生活魔法士には当てはまらない)
・この世界の『神様』として崇められている『オプト神』も生活魔法に対し、辛辣な評価をしている
・生活魔法は発動させる魔法に制限なく魔力を注げる
・六大魔法は魔法名に『魔法効果・威力・必要魔力量』が記録されており、故に、その記録されている『必要魔力量』以上の魔力を注ぐことはできない
・六大魔法の魔法システムは『権力に見合った魔法士階級』が得られ継承されるので、権力を持つものたちの地位は将来に渡って盤石となっている
・生活魔法しか使えない『生活魔法士』は魔力量が著しく低く、六大魔法の魔法士の中で一番下に位置する『下級魔法士』よりも魔力量が少なく、およそ下級魔法士の半分以下か良くて同じくらいである
・生活魔法は全属性の魔法が使えるが、生活魔法士に魔力量が豊富な者がいないため、生活魔法が全属性の魔法を使えたとしても、どうすることもできなかった
・生活魔法が使えて、且つ、魔力量が豊富にある自分なら全属性魔法の威力を上げて使用できる?
・前よりも魔力量が増えているかも?
・この国の権力者たちは『既得権益』を守るような国なので、生活魔法の研究や発見は秘密にする
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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404
毎日お昼12時更新。
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mitsuzo
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