第4話004「気づくと異世界転生〜神託の儀〜①」



 私の名は、ラルフ・ウォーカー。



 アガルタ大陸にあるセルティア王国ウォーカー辺境伯家の嫡男として生まれた私は、ついに『神託の儀』の日を迎えた。——そんな私は現在王都の教会にいる。


 私の父⋯⋯ヘミング・ウォーカーは一代で子爵から辺境伯へと成り上がった有名な貴族で、その成功の原動力となったのが高い威力の風魔法を使える称号『風魔法特級士』を持っていたことだった。父はその力を活かして数々の武功を立て今に至る。


 私は、そんなすごい家の嫡男として生まれたのだ。


 この国では子が産まれると毎年12月に教会で行われる『神託の儀』を受ける。


 ちなみに『12月』というのはこの世界の暦のことで、不思議ではあるがこの世界は地球と同じ暦や時間・単位を使う。というかほとんど地球と変わらない。


「まるで、作品ラノベ準拠の異世界仕様だな」


 などと、冗談めいたことを考えながらクスッと一人笑った。




 さて、この『神託の儀』とは、この世界の神様のような存在から『称号』というものをいただく儀式で、この与えられた『称号』により、その子のその後の成長が左右されるという⋯⋯この世界の人間において最も重要なイベントである。


 そして、今年も12月になると王都の大聖堂に貴族だけでなく平民の子も含めて召集がかけられた。ちなみに平民の子も参加する理由としては何と過去に平民にすごい『レア称号』が授けられたからだそうだ。


 噂では、この『神託の儀』で得られる『称号』というのは『血』が重要であると言われているらしく、それは『王族や貴族の血』であれば『強力な称号』が得られるということが、まことしやかに囁かれているらしい。


 ただ、ごく稀に平民の子からも『強力な称号』が出現することがわかったため、それ以降『神託の儀』は平民の子も貴族の子たちと一緒に絶対参加ということとなった。


 ちなみに平民から『強力な称号』が出た場合、貴族がその子の両親に多額のお金を渡してその子を養子にするのが一般的らしい。なので、『神託の儀』は平民の親からすると『裕福になれるワンチャンイベント』という認識らしく、親は生まれた子に一縷の望みを託すというちょっとした祭りと化している。


 前世の社会を経験した私からすると、親が少し薄情に感じたがこの世界ではそれが常識なのだろうととりあえず納得した。


 ただ、そうは言っても、実際平民の親御さんは自分の子がすごい称号を得られるというのをそこまで期待はしていない。なんせ、平民の子から『レア称号』が出ることはまず無いからだ。


 どのくらい無いかというと⋯⋯⋯⋯デイリーガチャで『SSRスーパー・スペシャル・レア』を単発一撃で引き当てるような確率と言えばご理解いただけるだろうか。




 さて、そんな⋯⋯さながらお祭りと化している『神託の儀』は滞りなく進行していた・・・・・・・・・・。逆を言えば、特に珍しい称号は出ていないということを意味するのだが。


 そうして淡々と儀式が進んでいく中、突然明るい光が教会内を包みこんだ。


 そして、その光に会場が大きくどよめく。


 どうやら「強力でレアな称号が出た!」とのことだった。


 父は周囲の野次馬と同じように、一目見ようと、急いでそのレア称号を引き当てた赤ちゃんのもとへ走った。


 その赤ちゃんが見える場所に着くと、父に抱っこ私もその光を発する赤ちゃんを見た。


 すると、そこにはキラキラ輝く銀髪の可愛らしい赤ちゃんがいた。どうやら女の子らしい。そんな彼女が得た称号は、



『光魔法特級士』



 ただでさえ、希少価値の高い回復系魔法の光魔法でありながら、さらに『特級士』というレア称号ということもあって場内がかなり騒然となった。


「光魔法⋯⋯しかも特級士⋯⋯! 間違いなく王宮の護衛対象となるだろうな」

「いやいや⋯⋯それどころか陞爵もあるかもしれんぞ。なんせ、彼女の親は『子爵』だからな。最低でも『伯爵』以上は間違いないだろう」

「う〜む、それにしても美しい銀髪ですな〜。色々な意味で将来が楽しみな子じゃ」


 ちなみに、この世界の爵位システムは『男爵 → 子爵 → 伯爵 → 辺境伯 → 侯爵 → 王族』となっている。うちは『辺境伯』だからかなり位の高い貴族であることがおわかりいただけただろうか(ドヤァ)。




 彼女の『SSR称号』出現後はまた通常業務に戻っていく。私はガチャの順番が最後だったので(もはやガチャ扱い)、それまでは他の赤ちゃんの儀式を父親の胸からボーっと眺めていた。


 しかし、やはり先ほどの銀髪の子以外は皆『〜魔法下級士』とか『〜魔法中級士』といった『地・水・火・風・光・闇』の六大属性の下級士や中級士がほとんどだった。


 いよいよ自分の出番が近づく中、私の出番一つ前の男の子に授けられた称号が、再び会場にどよめきを起こした。



「火魔法特級士!」



「「「「「おおおおおおおっ!!!!」」」」」


 特級士は滅多に出ないレア称号。それが一日に二人も出現したということで会場は異様な興奮に包まれた。


「また出た! しかも、あの火魔法で有名な『スレイプニール伯爵家』の子か!」

「や、やはり、両親の『血』が色濃く反映されるという噂は本当だったのかっ!?」

「ち、ちなみに、この王都以外の他の主要都市でも三人ほど『特級士』が出現したらしいぞ!」

「本当か! それって、ここ10年でも特にすごいんじゃないかっ?!」

「当然だ! もしかすると、この子らが成長した20年後——この国は大きく発展しているやもしれぬっ!!」

「す、すごいぞ、今年はっ!! まさに『黄金世代ゴールデン・エイジ』じゃなっ!!」



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「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16817330650503458404


毎日お昼12時更新。


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mitsuzo

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