第5話 ゴールデンとタイムとラバー
ゴールデンウィークのゴールデンタイムの真っ最中。
俺は、アニメ業界の今!がキャッチコピーの某白箱を視聴していた。
どんどんドーナツ、ドーンと行こう!
ゴロゴロしながらクロームブックで白箱を観ていると、スマホがプルプルと鳴った。
ディスプレイを見ると、「峠崎こみち」と名前が表示されている。
部長様だ。
電話にでんわ、みたいなことを冗談でもしたら、本気でヤバそうだったので大人しく電話に出た。
『もしもし、どうした?』
『もしもし、畝間君。今日、部費で本を買いに行くわよ。多ノ郷駅に十三時までに集合ね。以上、待ってるわ』
此方の返事も聞かず、一方的に告げられる。えっ、何この子。六畳間とかの侵略者なの? 俺のゴールデンなタイムが侵略されたようだ。ゴールデンタイムラバーとか歌いたい気分。味わうのは苦汁かな。
時計を見ると十一時を指し示していた。
昼食をカップラーメンで手早く済ませ、歯を磨く。
二階の部屋に行ってジャージを脱ぎ、武装を完全解除する。
色々と着る服を悩んだ結果、薄めのテーラードジャケットに、白のシャツ、黒色のチノパンとモノクロームなコーディネートとなった。
我ながら女の子と出掛けるには、それなりに見える格好だ。
再び時計を見ると、十二時半になっていたので、早めに家を出ようとローカットの黒色の靴を履く。
二階に居る妹に聞こえるように「行ってきます」と一声かけてから出掛ける。
玄関のドアを開けると、風がそよぐように入ってきた。太陽の日差しが眩しい。五月だというのにまるで初夏のように暑い。
マウンテンバイクに乗り、スマホで音楽を聴くことにする。
自転車に乗っているので、弱虫ペ○ルのテーマソングを聴く。
リズムに合わせて頼もしく自転車は、加速を続ける。
自転車は加速し、景色がどんどんと流れていく。不思議と音楽があるだけで景色が何時もと違って見える。
すいすいと自転車は回転とスピードを伴い、路面を滑走する。
吹き抜ける風がほんとに気持ち良い。
まるで風が全身の細胞という細胞に巡り、循環しているようだ。
もしくは、風の精霊に祝福され、加護を受けたみたいだ。
勿論、風が体の細胞を巡り、循環する訳は無いし、精霊の加護を受けたということもない。
そんなことを言ってしまえば夢も希望も無いから、そう思うことだけは自由であるとそんな風に前向きに考える。
精霊は居ないし、神も幽霊といったアストラル体も信じていない。
だが、この世には常識を越えた出来事や、物語がある。
それらは、人々の努力や思いが積み重なって出来ていると思う。
でも、それだけではなく、目に見えない神や精霊の加護等があるのかもしれない。そんなことを考えながら自転車を進めていく。
そのようなことを思っている俺にももしかしたら、加護なんかがあるのかもしれない。
自分が知っていることの全てが常識では無いだろうし、その常識を覆す天変地異が起きる可能性だってある。
未来は分からない。何が起こるか見当がつかない。
だからこそ、わくわくするし、面白い。
再三に渡って繰り返すが、未来は何が起きるか分からない。
故に、未来を生きたいし、観測していきたい。
本人の預かり知らぬところで未来の歯車は動き、
様々な出会いからの物語が生まれていく。
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