注意が必要な歯抜け小僧


息子はよく転ぶななどの軽い自損事故(その場で回転して頭から転倒など)は多いが、大きな怪我は得に無かった。


唯一慌てたのは、歯が折れたこと。


3歳の頃だった。


20時を過ぎた頃に布団に入る。


片手には玩具を握りしめていた。


その玩具を取り出して眺めていたところ、顔面に落下。


私も携帯電話を顔面に落下させることが頻繁にあるから大したこと無いだろうと思っていたが、息子は泣き止まない。


泣き続けているが少し落ち着いたところで歯を見てみると、上の前歯がグラグラいている。


一応調べてみるが、夜間に開いている歯医者なんて近所には一つも無い。


無料電話相談に、夜間に開いている病院を順番に紹介された。


「まずはA病院に電話して下さい。A病院が駄目だった時はB病院に電話して下さい。B病院が駄目だった時はC病院に・・・」


5ヶ所以上を案内してもらい、指示通り電話を掛けていくが歯の受診は全て断られた。


予想はしていたが、痛がる息子を見ると私も涙が止まらなくなる。


一旦カロナールを飲んで明日受診することに。


痛みが引いて息子が眠りについたときには、既に日が回っていた。



幸いなことに、翌日かかりつけの歯医者に連絡するとすぐに治療してもらえた。


歯茎の中で歯が折れていたのだ・・・痛かっただろう。


治療中、息子は「早く治して欲しい」と助けを求めながらも案外冷静で、落ち着いて抜歯ができた。



永久歯ではないことが不幸中の幸いだと思う。


ただし、息子は3歳からずっと前歯がないため

歯を見せた笑顔はなんとも面白かった。

(なかなか前歯は生えてこない・・・。)


幼少期の大きな怪我というのは、これくらいだ。



真夏と真冬以外の休日は、

ほとんど大型遊具にいたが絶対に目を離さない。


危なっかしいから。


ママ友同志で夢中になって話している場合ではなかった。




外で遊ぶことが大好きな息子は、頻繁に家から脱出を試みる。


私も玄関や窓を開けれないように工夫をするのだが、不意にあるとき突破するのだ。


家の中では四六時中 見張っているわけにもいかない。


静かだな~と思うと、庭に出ていて

私に気付くとニカッと笑う。


本当にヒヤヒヤだ。



発達障害の子が、家や施設や保育園から脱出して

川に落ちて死亡というニュースが定期的に目に付く。


自宅の裏にある塀を超えたら小さな川がある。


それ以前に道路に飛び出したら・・・。



結果、今のところヒヤリで済んでいるが成長し続けていても油断はできない。





小学1年生になった頃、庭でバーベキューをしているとき

長男と次男が追いかけっこをしていた。


家の周りをグルグル回っているだけだったから、付いていかずに道路側に立って見守っていた。


すると、裏に回ったきり出てこない。


声は聞こえるのでそのまま待っていたら

「ドボン!!」と聞こえた。


この時期は川の水が一気に増えて、鯉も沢山泳いでいた。


鯉や鳥がドボンと音を立てることは頻繁にあったが、嫌な予感がして私は裏へと走る。


川の側には次男の姿が。


子供たちは塀の向こうへと行ってしまっていたのだ。


次男の視線の先には、川に落ちて登れず護岸壁にしがみついている息子の姿。


ひとまずホッとした。


何故なら、前日も溢れそうなほど水位が高かったのに、この日は川の水が息子の膝くらいまでしか無かったから。

(もちろん低い水位でも危険。)


息子の頭は川の護岸壁より下にあった。


顔に水がかかるのが苦手だから水泳に行っているが泳ぐことは出来ない。

お風呂場ですら何度も滑って溺れかけたことのある息子だ、

水位があと少しでも高かったら命は無かったかもしれない。


服を着ているから重みも増し、川から引き上げるのも私一人の力では無理だったので父親を要請。


ここで分かったこと。

足だけ浸かっている息子を引き上げることすら出来ない私は

万が一息子が流されてしまっても、私一人の力では助け出せないのだ。


川の怖さを身をもって実感した。



普段は叱る時に上手く言い回しが出来ないかを考えるが、

命が懸かった危険なことだったので、今回は鬼のように叱った。

(数分後には恐怖心も忘れて川に近付いていたが・・・。)



”子育て四訓”は私の中ですごく大切にしていること。

 1.乳児はしっかり肌を離すな

 2.幼児は肌を離せ、手を離すな

 3.少年は手を離せ、目を離すな

 4.青年は目を離せ、心を離すな


今まで”普通”だとしても、あるとき急にいつもと違う危険なことをする。


大体が目を離してしまった時だ。


私はヒヤリとするたび、初心に戻る。


たまに疲れてしまうこともあるけど、子供たちのためだと思うと頑張れる。


子供たちの命を守りたい。


子供の命が事故で失われることが少しでも減って欲しいと願う。

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