幼児期の勉強


息子が2歳になる頃に、ベ〇ッセの通信教育を始めた。


平日は朝から夕方まで保育園のため習い事をする時間が無い。


だから少しでも何かをさせてあげたかった。


ただの私の自己満足である。


DVDも入っているので、私にとっては一番助かるアイテムであり重宝していた。


見ているだけで日常生活について学べるから。


車内移動の時につけっぱなしにしていた。


でも息子にとっては当然 付録が楽しみで、毎月ポストで見つけるたびに大喜び。


開封するときは私も一緒でないと、中身があっちこっちに行ってしまい大変な思いをする。


そう思って、家に持ち入ってから手洗いや荷物の整理をするまではどこかに隠しておく。


それでも不思議と見つかってしまい、中身がバラバラになってしまう・・・なんてことは頻繁にあった。


届いてすぐに付録の一部を失くしてしまい、遊べなくなることも。


大体が後から見つかるのだが、一度も遊べることなく見つからなかったことは3回ほど。


当時新築で割と片付いていたはずの我が家で、どうして失くなるのかがすごく不思議だった。


ただ・・・「一度も遊べてないから、どうしても遊ばせてあげたい」と思った時はフリーダイヤルに購入の相談をする。


3回のうち2回電話した。


すると「無料で発送します」と気持ちよく返事をくれるのだ・・・。


本当に感動して泣きそうになる。


申し訳なさすぎて「お支払いさせて下さい!」って言ったが、「また次回このようなことがあったらお支払いをお願いするかもしれないので、今回は結構ですよ」と。


結局2回目の時も無料で発送してもらえることになったため、申し訳なさすぎて同時に予備としてもう1本購入させてもらった。


このように、ベ〇ッセの教材だけでなく、対応にもすごく満足している。


もちろん教材通りに息子は学べなかったし、トイトレも学習時期に完了することは出来なかったが、私としては”遊ばせてる”という感覚で受講していたから別にそれで良かった。





だが、結局4年ほどで辞めることを決意・・・。





当然、辞める前に悩んだ。


息子は両親に似て、絵の芸術センスは皆無だ。


保育園のクラスで貼り出されている絵を見ると、やはり一番劣っていることがぱっと見で分かる。


私も人のことを言えた義理でもないし、不得意なものをどうこう言うつもりもないから、息子には「頑張ったね~」「上手だね~」と言い続けていた。


これでも自宅では、お絵かき・ぬりえ・絵の具などを一緒にしていた。


息子も結構楽しんでいた、絵の具なんて特に。


それでもこの結果なんだから仕方がないではないか。


楽しかったらそれで良い。


キツい言葉を浴びせて苦手意識を持たせる方が駄目だと思う。





保育園では年中で文字の練習(硬筆)が始まる。


文字を書けるようになるために鉛筆はよく握らせていた。


鏡文字になることは多いが、クラス内でも平均並みに書ける方だった。


ここで初めて発覚したこともある。


息子は言葉の遅れもあり、活舌が悪い。


一番苦手なのは「さ行」だと思う。


「さ行」を言うと、全部「た行」になってしまうのだ。




文字を書くことが楽しくなった頃、クリスマスがやって来た。


息子は一生懸命、サンタクロースに手紙を書く。


プラレールが欲しいらしい。


「しんかんせん(プラレール)がほしい。よろちくね。」


本当に見ていて愛らしかった。


そこで私は息子に言う。


「よろ”ち”くね、になってるよ~。」


息子は私が言った意味を理解できず、「え?何がおかしいの?」といった感じだった。


息子は「よろちくね」が正しい言葉だと思っていたらしい。


活舌の問題かと思っていたが、聞き間違いによって勘違いをしてしまってっている部分もあったのだ。


活舌が悪いのも本当なので、本人は理解したあとも「し」を「ち」と言ってしまうことに変わりないが。


このような間違いを息子が理解・納得するには、

通信教育ではなく対話による指摘が必要だった。


年中から年長になってくると、通信教育の教材を”遊びで良い”という考えを改めるようになってきたのだ。





最後に辞める決意が固まったのは、卒園する直前だった。


タブレット式の受講に変わった時期だった。

(タブレット以外のコースもある。)


タブレットになると、正解も不正解もタッチペンで選択してどんどん進めてしまうから、理解せずに適当に進み続けていた。


小学生になると勉強についていけないことが想定されていたのに、これはマズい。


それに加えて、息子の進学は”通級”と決めていたことも気がかりだった。


通級は、勉強時間に抜けて通級指導を受けるからだ。





そのことも踏まえて考えたのが、学〇教室。

(ここが駄目なら個別指導を考えようと思っていた。)


昔、習い事を断られた経験もあり(前項『療育医療センターで検査ー現実ー』より)積極的にはなれなかったが取り敢えず相談の連絡をすることに。


後から知られるよりも先に言おうと思って、息子の発達障害についても先に話した。


断られるなら最初に断ってくれた方が私の心の傷も浅いから。


すると、とても丁寧な先生で1時間くらい電話で話をしてくれていた。


”元教師で息子のような子も沢山見てきた”

”発達障害だからと言って最初から断るなんてことはしません”

”私は出来る限りのことはします”


先生と話していると、嬉しくて・・・嬉しくて、涙が止まらなかった。


ここで、”断られた”という私のトラウマはすっかり消え去った。



この教室の良い点(?)はもう一つあった。


先生はいくつかの教室を受け持っているが、私が通いたい教室は開講したばかりで受講人数が少なかったのだ。


通う時間帯によっては、個別指導状態になる。



何度か先生と面談した後、息子は3回くらい体験教室に通った。


先生との相性も良いようで、息子も楽しそうに見えた。



息子と同い年の子が1人通っていて、

ある日その子の親と話す機会があった。


ここで、息子と同じ保育園に通っている人だと知った。


お受験して違う小学校に通うが、息子たちは意気投合。


以前は他の学〇教室に通っていたが、事情がありこの教室へ変わって来たらしい。


「この教室の先生がすごく良くて、知ってたら最初からこっちの教室に通ってたのに」とまで言っていた。


先生にも息子が何人かいて、男の子の扱いが上手だと言う。


息子と相性が良いとは思ってたけど、そういうことかぁ~。


その話が聞けて私の期待はさらに膨らむ。







だが、父親の壁が立ちはだかる。


学〇教室に通うことを相談していたが、あまり良い顔をしていなかった。


「勉強が出来なくても怒らないよ」と。


ーーー違う、そうじゃない。


私だって勉強が出来ないからといって怒らないと思う。


でも、勉強が全くついていけなくなって学校に行きたくなくなったらどうする?


保育園ですら毎朝のように「行きたくない」という息子。


小学校の勉強が1ミリも楽しくなかったら、余計に行きたくなくなるのではないか?


勉強ができるかが問題ではない。


学校に楽しく行ってもらうための材料に過ぎない、私にとっては。





私の訴えを最後まで聞くと父親は、

「分かった、それなら俺が息子に勉強を教えてみせる」と言い切った。


それなら私だって既に試みた。


だからこそ自閉スペクトラム症の息子に”理解”させることの大変さがものすごく分かっていた。


この時期が1月頃。

小学生になる4月までに学〇教室に通えたら良いと思っていたので、私は父親と息子を見守ることに。





・・・2週間は頑張っていた。


普段帰りの遅い父親がたまに早く帰ってくると、勉強は行われた。


なので2週間といっても数回だ。


教えるテーマは父親が決めた。


「1+1=2」

まずはこれを理解させてみせると意気込んでいる。


ーーーふん、やれるもんならやってみろ!(切実な心の声)


本当に簡単な問題だと思う。


まだ学ぶ必要もない足し算ではあるが、説明すればその場では理解出来る子がほとんどだろう。




父親との勉強初日。

勿論、息子は理解できない。


最初は優しく教えている父親が少しずつ苛立ち始めているのが分かった。


父親の教え方は決して悪くなかったとは私も思う。




父親との勉強2日目。

勿論、理解できない息子は父親が怖くて泣きだしてしまった。





父親との勉強3日目。

理解することもなく泣いてしまった息子は、「もうパパと勉強したくない!」と言い出した。





父親との勉強4日目。

勉強を始める前から嫌がって何もできなかった。





父親との勉強5日目。

ご褒美で釣って必死に教えようとしたが、結局理解することなく息子は泣く。





「やる!」と言い切ってしまったために、私に「やっぱり無理だった」とは言い辛いのだろう。


私から「もう辞めてあげて」という一言で、父親も諦めがついたようだ。





これ以上続けると、息子は勉強自体を嫌いになってしまう。


父親が悪いわけじゃない、これは仕方が無いこと。


伝わらない苛立ちは私だってよく分かっている。


それが自分の子となると余計に感情的になってしまう。


だからこそ外部に頼めるものは頼んだ方が良いのでは?


これは私達だけではなく、息子のためにも。





父親も納得したようだ。


”俺では無理だ”

”こんなに分かってくれないとは思わなかった・・・”

”先生が引き受けてくれると言うのなら、お願いしたい”


こんなに弱気に言う父親を初めて見た。





息子も、「もう父親と勉強はしたくない!」の一点張り。


「それより学〇教室で勉強したい!」と言う。


勉強を嫌いになってないうちに、すぐに学〇教室へ入会した。


無事に学〇教室に入れたため、

惜しむ気持ちはあったがベ〇ッセは辞めた。





学〇教室は、”年長だから”とか”小学1年生だから”といって、学年に合わせた勉強は行われない。


例えば、

小学1年生だけど年長レベルの問題が分からない場合、年長レベルの問題が理解できるまでそこから先には進まない。


小学6年生になっても、小学4年生の勉強をする可能性だってある。

小学4年生の勉強が分からないのに、その先を理解するなんて難しいでしょう。

それでも良いですか?と前もって説明を受けていた。


もちろん!!そうして下さい!!

というか、息子にとってもそれが良いはず!!


といことで、小学校に入学した後も息子は年長レベルの問題を進めていた。


1日2枚の宿題を出される。

おかげで小学校入学前から宿題の習慣が出来ていた。


宿題をするとき、やはり私が問題の意味を説明しても全く理解しない。


それでも学〇教室へ行くと、息子は問題の意味を理解して帰って来てくれるのだ!


何と有難い・・・。


父親も一度だけ迎えに行く機会があり、最後の10分近く見学していたが「あの先生はすごいなぁ。息子にも合ってる。」と感動していた。


本当に、学〇教室の先生と出会えて息子は運がある。




おかげで、小学校に通い出した息子は「学校が嫌」と言うことはなかった。


むしろ、「学校楽しい」とまで言うようになっていた。


もちろん勉強だけのおかげではないが、多少の影響はあるだろう。


だって毎朝のように「保育園行きたくない」と言い続けた息子が、楽しそうに通い始めたのだ。


他の子にとっては普通のことだとしても、私にとっては感動と喜びに満ち溢れていた。

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