療育手帳の交付   ー軽度知的障害ー


初めて療育に通うことが決まった時、療育を利用する人はみんな”療育手帳”を持つものだと思っていた。


結論としては、療育手帳を持っていなくても療育の利用は可能。


逆に息子は「グレーゾーンなので療育手帳を取得できるかどうかも分からない」と心理の担当から言われたし、説明を受けた当初 興味を示していた私に「え、必要ですか?」的な反応だった。


だから療育手帳は持っていても大して意味が無いのだろうと思うようにしていた。


それに療育手帳の交付を希望した場合、

手続きは平日に児童相談所へ行って検査をしてから福祉事務所に申請しないといけないと聞き、当時フルタイムで働いていた私にとっては少し負担に感じたため丁度良かった。


ところが、「療育手帳を持っていますか?」と訊ねられる機会が増える時期に直面した。


それは年長になってから。


保育園から訊ねられ、

進学予定の小学校から訊ねられ、

見学に行った放課後等デイサービスの施設から複数訊ねられ・・・


なんとなく「持っていた方が良いのかな?」と思い始めてきた。

(実際には持っていなくても問題は無い。)


それに、療育手帳について簡単にインターネットで調べてみると

軽度判定でも交付されれば交通機関の割引などがあり魅力的に思える。


心理の担当はあまりおすすめしていなかったし仕事も休み辛かったので、療育手帳が欲しいなんて言う間もなく約2年が過ぎていた。



そこで年長の終わり頃、小学校進学に向けて仕事との両立に限界が見え始めた。


その頃は息子の症状もなかなか酷いもので・・・

言語担当と就学後のことについて相談した結果

学童は精神面の負荷が大きいだろうと言われて諦め(代わりに放課後等デイサービスを利用)

小学校の見学時に息子の様子を見ていた先生から「登下校の付き添いをお願いできますか?」と言われ(よっぽどひどいと思われたのだろう)


保育園の卒園を前に仕事を退職した。


そして時間に余裕ができたこともあり、療育手帳の取得に踏み切ることを決意。


もちろん言語の担当に一言伝えたが、心理の担当と同じように「え?何でですか?必要無いですよ?」みたいな反応だった。


頑なに意思を変えない私を見て言語の担当は苦笑い。


過去の話になるが

息子は年長の春頃に、2度目の心理検査を行っていた。

進学先の小学校に検査結果を踏まえた診断書の提出が必要だったから。



《検査2回目》

  5歳5ヶ月時点

  知能検査:IQ74 精神年齢4歳0ヶ月



言語の担当はその前回受けた検査結果に目を通すと

「検査から1年近く経ってはいるのですが・・・

 療育手帳の交付はIQ75以下が対象なので、ギリギリなんですけど・・・。」と言った。


おそらく他の人は簡単に理解できるセリフなのだろう。


だが私は、

「え?療育手帳の判定はIQで決まるの?」と驚いた。



息子が自閉スペクトラム症と診断されて約2年間。

本当に無知で、理解能力もなく恥ずかしい・・・

とても大きな勘違いをしていた。

(本当に馬鹿ですみません。)


自閉スペクトラム症と知的障害が別物であることを、ここで初めて理解したのだ。

(もちろん精神科の先生から説明は受けていたはず。)


IQを見てグレーゾーンと診断されて、

「だから発達障害なんだ=自閉スペクトラム症なんだ」と思っていた。


しかし実際にはIQは知的障害を決める数値であって、

自閉スペクトラム症とは別物だった・・・。


療育手帳は知的障害の人だけが対象だと知って

「そうだったのかー!!!」と納得しつつ、

同時に「なんで自閉スペクトラム症には療育手帳が無いんだろう?」と不思議に思った。


自閉スペクトラム症に限らずだが、それぞれが抱える障害も軽度から重度まで様々だと思う。


それでも取り敢えず療育手帳の交付には挑戦することに。


だって例え療育手帳を取得できなくても、それはそれで「息子は知的障害ではないんだー!」で済む話。





児童相談所に連絡すると、割と早く予約が取れた。


息子は児童相談所の人と2人きりで検査を行い、私は別の人と面談を行った。


息子の行動に苦労していることを必死に伝えたが、やはり療育手帳は知的で決まるか複数回の面談を重ねて決まるか、と言われた。


それにしても、児童相談所の人はすごく優しかった。

もちろん仕事だからと思うかもしれないが、私は話しながら涙が溢れ出てきた。

児童相談所=虐待関係の相談場所とか思い込んでてすみません・・・。



《検査3回目》

  6歳1ヶ月時点

  知能検査:IQ67 精神年齢4歳1ヶ月

  判定  :療育手帳B2(軽度)

  有効期限:2年間



息子曰く、検査のお姉さんが可愛かったからすごく頑張ったらしい。


それでもIQは以前に比べて下がっており

前回はグレーゾーンだった息子が軽度知的障害の認定を受けた瞬間だった。



そのあとは児童相談書から受け取った検査結果をそのまま福祉事務所へ持っていき、療育手帳の申請手続きへ。


息子の写真(証明写真くらいのサイズ)が必要だったのだが、普通の写真を切って使っても良いと言われたので普通の写真を持っていくと福祉事務所の人が正確なサイズに切り取ってくれた。


療育手帳が届くまでに約1ヶ月がかかったが、

有難いことに療育手帳B2でも観光施設等の入場料が減額されたりするらしい(その他もあり)。


いつかユ〇バに行く時に活用してみたい。


でも私的に一番うれしいのは、児童相談所と繋がることができたこと。


療育手帳の更新もあるし、相談履歴も残るし、今後いつでも相談して下さいって言ってもらえた。



児童相談所というと、虐待関係とか悪いイメージしかなかった。


実際には普通に育児で困った時にも気軽に相談できる場だ。


療育手帳が目的で児童相談所へ足を運んだだけだったが、

”相談できる場所が増えた”

これが私にとって「療育手帳を取得して良かった」と一番思えたことだった。


保健センターは新年度になるたびに担当が変わるからだんだん相談しなくなってきていたし(もちろん新担当は皆優しかった)。


個別療育の時に毎回相談していたけどもうすぐ就学するので終了するし。


精神科の先生との面談は数ヶ月に1度なのでタイムリーに相談が出来ない。


就学後は放課後等デイサービスで相談することもできるが

親は付き添わなくて良いので、少しの困りごとくらいなら相談しないだろう。


その後、実際に児童相談所に相談をしたのかと聞かれると全くしていないのだが

本当に困った時には頼りたい。


だから ”相談できる場がある” これだけで心の支えになる。



療育手帳の申請はあまり重要に思えないかもしれないが

本当に取得して良かったと思う。

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