約2年間の療育 ー親も学ぶ場ー
就学前の2年間、個別療育に通った。
息子が通った施設は、未就学児のみが対象。
心理・言語、それぞれの担当が決められるが、数ヶ月に1回は精神科の先生との診察もある。
ちなみに療育終了後の就学後も、精神科の先生とは診察が続くので相談する場は残る。
療育内容は施設によって違うと思うので、下記に続く内容はほんの一例。
《心理》約1年間/年中
担当の先生は2人で、
A先生が息子と一対一で活動して、私はその隣で見守る。
B先生は部屋の後ろで様子を見ている。
〇お仕度
靴を脱いで教室に入り、手提げ袋から持ち物を出して片付けていく
↓
〇ご挨拶
椅子に座って挨拶をする
この時に1日の流れを説明される
↓
〇手遊び・歌遊び
先生を見ながら真似して遊ぶ
↓
〇ボール遊びなどのゲーム活動
順番を守って、A先生・息子・私の3人で行う
待っている間は応援の声かけなどもする
↓
〇机の上でお勉強
迷路・シール貼り・パズルなど
息子はシール貼りが真っすぐ貼れずに苦戦していた。
普段からよくシール遊びするから意外だった。
↓
〇自由遊び
A先生と息子が自由に遊び、B先生は私とお話しをする時間
今日1日の活動を通しての感想やアドバイスをいただいた後は、日常生活で困っていることも相談できる。
B先生が後ろから様子を見ているのは、息子のことだけではない。
母親である私のこともしっかり見ているのだ。
活動中は、私から息子へ声掛け(シール貼りに苦戦していたら声掛け、等)をするように言われていたため、その声掛けの仕方についてなど、私も指導をいただく。
有難いことに、ここで初めて”自閉スペクトラム症の息子との関わり方”がよく分かった。
今まではインターネットで調べて分かったつもりになっていたが、個別に指導いただけるのとは全く違う。
みんな様々な特性を持っているのだから、対応方法もそれぞれ違ってくるはず。
インターネットの情報は参考程度に留める方が良い。
息子への声掛けの仕方も個別療育を始める1年前から、かなり気を遣ってた方だと思っていたが、本当にまだまだ勉強不足だった。
ただの声掛けでは駄目だ。
どのように息子に伝えるのか、その”言い方”がどれだけ大切なのかを知った。
●学んだ声掛けの例を参考として3つ挙げる。
①手遊びの際、何も言わない息子に「〇〇って言ってね」と声掛けしたが、何も言わなかった。
私は再び声掛けをしたが、息子の態度は悪くなっていく一方だった。
↓
息子は私に”指摘された”と感じて不安に思い、積極的に取り組むことを避けてしまった。
ポイントを伝えながら「〇〇って言うと上手く出来るよ」と、工夫した声掛けをした方が良い。
②座っている時に立ち上がったり、姿勢が悪いとき「きちんと座って」「背筋伸ばして」などと声掛けをしたが、改善されなかった。
↓
まずは上手に座れているときを見つけてしっかり褒めていくこと。
そして、注意したい時は出来ていない部分ではなく、出来ている部分を言う。
出来ている部分に目を向けて具体的に褒めることで、更に良い姿勢にしようと意識してくれるのだ。
・たまに立ち上がってしまう時は、座った時に「ちゃんと椅子にお尻をくっつけてスゴいね」
・座っているが足は胡坐をかいている時は「背筋伸びててカッコいいね」「手を膝に置いててえらいね」など
そうすると息子はもっと頑張ろうと思って、姿勢が改善してきた。
息子の性格的に、”具体的に褒める”ことは良い行動を引き出しやすかったのだ。
(その子にもよるので、褒めすぎると”これくらい出来るのに”や”バカにされてる”と感じる子もいる。)
また、良い姿勢のポイントを伝える絵カードを作って見せるのも効果的だった。
③自由遊びの際、息子が私におもちゃを見せたがっていたので「〇〇しているから少し待ってね」と言うと息子は「待たん!」と怒った。
↓
私の言った”少し”が息子にとってどれくらいの時間なのかが分かりにくい。
例えば「時計の針が〇のところに来るまで」など、見て分かるもので伝えた方が良い。
心理療育は日常生活で役に立ち、親子ともに”過ごしやすさ”の光が見えてきた。
もちろん困りごとなんて次々出てくるが、その時点で困っていたことはどんどん解決していったのだ。
本当に、解決策を教えてくれるのは有難い。
もう次のステップに進んでも良いだろう、ということで言語療育へと移ることに。
(ちなみに、言語療育に変わっても後々心理に戻ることも出来る。)
《言語》約1年間/年長
担当の先生は1人で、C先生が息子と一対一で活動して、私はその隣で見守る。
心理とは違って、私の声掛けは一切行わないし活動内容も毎回変わる。
例えば・・・
〇ご挨拶
↓
〇ひらがなの練習(自分の名前や数字程度)
↓
〇絵探し
↓
〇迷路
〇パズル
〇コインゲーム
〇ビンゴゲーム などをローテーション
↓
〇絵本(その季節に合った絵本)
↓
〇カード遊び
絵カードを見て、誰が何をしているか答えるなど
↓
〇先生と私が話す時間(息子は一人遊び)
流石、言語の先生・・・というくらい、何度も話が脱線する息子を上手に誘導してくれていた。
何を言っているか分からないし、会話のキャッチボールも上手くできない息子が、就学前にはある程度の会話が出来るところまで伸びたのだ。
まだ自分の気持ちを伝えることは難しかったが、すごい進歩だと思う。
そして、言語でもやっぱり親の声掛けの仕方が大切なんだと再認識させられる。
先生と私が話す時間は、心理と同じように日常生活などの心配事も相談できたし、本当に貴重な時間だった。
未就学児が対象なので、就学と同時に個別療育は終了した。
因みに(余談)・・・
絵カードを見て、誰が何をしているかを答える遊びを私は次男にも行った。
すると面白いことになった。
例えば、「大工さんが家を建てている」カードを見せる。
息子は「家を作ってる」と答えることができた。
次男は「家が火事になったから消防車が火を消して、おうちが無くなったから家を作ってる」と言った。
他のカードを見せても次男はこのように物語を作って答えた。
兄弟で同じカードを見せても考えることは全く違う。
もちろん私だって「大工さんが家を建てている」としか答えないだろう。
だからこそ次男の回答には驚いた(周りで実際に火事が起きたこともない)。
自閉スペクトラム症である息子は、何事にも”先が見えない不安”があるため
朝の支度などは絵カードなどを使っているし、1日の流れも絵カードにすると本人はすごく安心する。
一方で次男は、一つのものを見ただけで一気に流れをイメージすることが出来たのだ。
ただ、それは日常生活において必ずしも正しい流れではないので
場合によっては先のことについて余計な不安を持つことがデメリットだ。
(確かに「お絵かきしたい」と言った時、いつもと違って用紙に次男の名前を書いて渡したら、ひらがなの練習をさせられると勘違いして怒っていたりしたので、そういうことだろう。)
《作業療法》検査のみ/年長の秋頃
息子はよく転ぶ。
1歳前に歩き出した時から、道路でよく転んでいた。
普通に歩いているだけの平地でも転ぶ。
運動会のリレーでも転ぶ。
よく転ぶとは思っていたが、年中までは特に気にしていなかった。
しかし年長になった頃にあまりにも酷いと泣きそうになった。
私が一緒にいる時だけでも1日に1回は必ず転んでいて、ズボンの膝部分に穴が開くのだ。
穴が開くことは昔から定期的にあったが、この年長になった時期は1週間以上毎日ズボンに穴が開き、とうとう履けるズボンが無くなってしまった。
慌てて新しいズボンを4着購入。
すると次の日には新しいズボンにも穴が開き、その次の日にも新しいズボンに穴が開きかけたのだ。
C園の担任に相談したが、園では特に転んでる所も見ないとのこと。
ここで私は療育の言語の先生に相談して、就学前に一度検査をしようと決意したのだ。
割と早く予約が取れて、年長の秋頃には作業療法士による検査をすることができた。
まずは地面に引かれた長い一本線に立ち、先生と同じステップ(簡単な)をして線の上を進んで行く。
息子は先生と同じステップが出来なかったが、近い動きはしていた。
先生曰く、動きを速くして誤魔化していたらしい。
その他も様々な道具やおもちゃを使っていたが・・・あまり思い出せない(汗)。
ただ、息子は先生の言う通りに身体を動かすことが難しい。
という事実が確認できた。
先生は試しに鉛筆と用紙を息子に渡して「ここに自分(息子)の絵を書いてみて」と言った。
我が家はみんな絵が苦手である。
作業療法の検査なのに何で絵を書くんだろう?と疑問に思った。
それでも息子は楽しそうに鉛筆を手に取る。
最初に 『顔の輪郭→目→口』 を書いた。
耳も鼻も髪の毛もない・・・本当に丸の中に目と口のようなものがあるだけだ。
笑顔で「できた!」という息子に、先生は「身体も書いてね」と言う。
息子は少し戸惑いながら、身体らしきものを書いたが正直何を書いているのかいまいち分からなかった。
先生は書き終えた息子を褒めてくれたが、この絵によってあることが分かった。
”身体の絵が描けない”
それは自分の身体をまだ理解できていないということ。
だから先生の動きを見て真似することもできないし、手と足バラバラの動きをすることも難しい。
しかしこれは「様子を見れば良いだろう」という程度のことでそこまで気にしなくても良さそうだった。
そして一番心配していた、よく転ぶことについて。
息子は自閉スペクトラム症ということもあり、みんなが普通にできていることが同時には出来ない。
例えば相手の目を見て話を聞くことができない。
なぜなら、目をみること+話を聞くこと+話を理解することが同時にできないので話を聞くことのみに集中してしまう。
それでも聞くことと同時に理解することが出来ないので、相手は息子のことを「話を聞かない」と誤解する。
つまり”1つ聞いて10覚える”というのも息子のような子には難しい。
そしてこれは、よく転ぶことについても同じだった。
人は普通に歩いている時、何も考えていないようで実は様々なことを注意して歩いている。
息子は目で見える情報のみでは気を付けて歩くことができない。
ただ右足→左足と順番に足を動かすだけでも頑張っているのだ。
この件もひとまず様子見ということになったが、ある程度の理屈が理解できたのでやっぱり検査して良かったと思う。
一度療育に足を踏み入れたから、先生たちの力を借りて次々と進むことが出来たので、私は周りの人が「うちの子の発達遅れが気になる」と言っていたら必ず診察を進める。
保育園の先生に指摘されていた子だったし、
少しでも気になったら、早めの診察が子供のためだと思ったから。
でも診察に行った子はいなかった。
こんなに支えてくれる制度があるのに、私からしたら勿体ないな・・・の一言。
一番気になってた子は、息子より年上だったが
小学生の時に普通学級で入学して、結局は年度の変わり目で支援級へ移ることになったりもしていた。
人それぞれだから私の考えが正しいとは言わないが、
一人で悩んで周りに相談して結局解決できないよりも
専門医に相談して子供が過ごしやすくする方法を見つけることが出来たらな、とは思う。
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