言葉の遅れ ー届かない心の声ー
言葉の遅れについては特に気になっていなかった。
というより、息子はもともと話すこと(言葉を口に出すこと)すら少ない。
私の母は早い段階から”言葉が遅い”とか”表情が無い”気にしていたが、私は「そんなことない」と一点張り。
だってよく笑ってくれるもん。
表情が無いなんて思えない。
それに私の息子と同じ時期に生まれた他の子と成長具合も同じくらいだし、
男の子で・・・特に一人目の子だと言葉は遅いと言う人が多い。
”男の子は喋らなくても、1歳になったら急に話し出すって聞くよ”と先輩たちも言っていた。
だから吞気に構えていて、初めて気になったのは
ちょうど1歳になった頃、通っていたB園の先生に言われてからだった。
「息子君、あまり言葉を話しませんよね。絵本読んであげて下さい。」
絵本は毎日読んでいた。
前の日にも10冊以上読んでいた。
息子は絵本が大好きだったから、読み終わっても次から次へと絵本を持ってくるのだ。
先生には「読んでます」と答えたが、きっと信じてない。
でも、息子のクラスの子もあまり言葉を話してないのではないか?
考えてみると「あの子はどんな声だったんだろう?」と思うほど記憶にない。
先生に言われたから息子の言葉の遅れについて多少は気になったが、
やはり私の心の中は「そんなことない!大丈夫に決まってる!」と思い直した。
だから言葉の遅れについては微塵も不安を抱かなかった。
ただ、少し悔しい気持ちは残ってしまい
引っ越しのタイミングでそのままB園からC園へ変わった。
そしてC園に通い始めて驚いた。
2歳クラスで同じクラスになった子供が私に話しかけてくれた。
2語文・3語文なんてものではない。
3語文以上を文章にして話している。
しかも普通に会話のキャッチボールが出来ているのだ。
会話が続く、続く・・・私は本当に息子と同い年の子供と話しているのか!?と信じられなかった。
息子は冬生まれで、そのクラスの子は4月生まれ。
月齢が半年以上違うとは言え、ものすごく衝撃的だった。
ここで初めて、私は息子の言葉の遅れに焦りを感じた。
息子が話さなくても私が話し続けた。
少しでも言葉を耳に入れて欲しいと思いながら。
しかし相変わらず息子は無反応。
色々な方法も考えた。
アレ●サを使って言葉の練習もしたし、
”ミニ●ンズ マネしておしゃべり散歩ぬいぐるみ”や、”くまモ● マネしておしゃべりぬいぐるみ”を数えきれないくらい購入(息子が乱暴なのですぐに壊れる)して、喋る楽しさを実感してもらった。
どちらもかなり効果はあって、相変わらず息子は何を言っているのかは分からないがよく声を出すようにはなった。
それが息子にとっての第一歩だったのかもしれない。
そして2歳クラスの秋頃、ついに息子の発達について指摘される。
「お母さん、家ではテレビやYouTubeばかり見せていませんか?」
正直、心の中では(キタ・・・。)って感じ。
何で先生って言葉が遅いと、”本を読んであげていない”、”テレビばかり見せてる”、”携帯で動画ばかり見せてる”って決めつけのように聞いてくるんだろう。
先生の言い方は別に決めつけではなくただの質問だったとは思う。
けど受け取り側からしたら、決めつけのように感じてしまう。
自意識過剰なのかもしれないが・・・。
しかし私は赤ちゃんの頃からテレビや動画はあまり見せていなかった。
家事をするときにNHKの子供向け番組を見せるくらいだ。
でもそれって悪いこと?
息子は目を離すと、本当に何をするか分からないくらい驚くことをしてくれる。
物を壊す分には構わないが、怪我だってする。
やむを得ず目を離さないといけないから、テレビに子守してもらう方が安全だと思ったんだけど、駄目なの?
保育士になった友人から聞いた言葉を思い出す。
”発達の遅れについて、今時は少しのことでも気になったらすぐ保護者に言わないといけないんだ”
きっと担任だって言いたくて言ってるわけじゃない。
頭では理解していたが、2度目の屈辱に耐えられず泣きそうになった。
「うちは家事する時しかテレビは見せてません。」
すごく素っ気ない返事になってしまったが、それがその時の精一杯。
先生も私の態度に気付いて、この日はそれ以上なにも言ってこなかった。
本当に悔しい、悔しい、悔しい!
言葉の遅れを気にし始めてからは、かなり声掛けの仕方に気を付けていた。
我慢できずに、帰り道の車の中で涙が溢れ出た。
当時3歳の時点で3語文は言えていることもあった・・・が、言い慣れた言葉しか使えてないし、何を言ってるのか親ですら分からないことの方が多かった。
0歳から1歳頃の子供は、車のことを最初は「ブーブー」ということが多い。
だが息子は、私が「ブーブー」と教えても
実物を見て指さしながら「パッパー」と言う。
おそらく耳は良いのだろう、本物のクラクションの音だ。
本人からしたら車は「パッパー」と鳴るのになぜ「ブーブー」なんだろうと疑問に思っていたのかもしれない。
私は担任と話したその日、帰ってから風呂場で子供と言葉の練習を始めた。
なんだかんだ、帰ってから最低限のこと(風呂・ご飯・歯磨き)を済ませるとあっという間に寝る時間。
だから風呂の時間を有効活用した。
ひとまずこの3語文を言ってみよう。
『あんぱんまんが ごはんを たべた』
(当時あんぱんまんのおもちゃを沢山持っていたため)
《1回目》
「『あんぱんまんが ごはんを たべた』って言ってみて?」
「・・・」息子はだんまり。
《2回目》
「じゃあ、『あんぱんまん』って言ってみて?」
「・・・」息子はだんまり。
《3回目》
「いいよいいよ、それなら『あ』って言ってみて?」
「・・・」息子はだんまり。
この流れを1週間以上続けてみたが、息子は何も言わなかった。
それよりも、息子は”風呂に入ると嫌なこと言われる”と思うようになってしまったようで、一時期かなり風呂を嫌がった。
普通に前日と同じように練習しようとしただけで大泣きした日もあり、練習は辞めた。
上手く発音はできないが、もともと「あんまんまん」と言うことはできていた。
だが、「言って」とお願いしても一切言わない。
その時は、”息子が言葉を口にしない”ことばかりに気を取られて気付かなかった。
数年後に気付いたのだが、息子はきっと「『あ』って言ってみて?」の”言って”の意味すら理解していなかったのかもしれない。
なぜなら、息子が「リモコン取って」に答えて動くことができるようになったのは5歳くらいの時だった。
1歳を過ぎた子供は割と取ってこれることが多いのに、息子は出来なかった。
言葉の遅れや癇癪の酷さばかりに気を取られて、当時は本当に見落としていた部分だと思う。
そして言葉の遅れにより更に困ったのが、癇癪だ。
1歳の頃から既に癇癪持ちだったが、
3歳になった今、言葉にして自分の気持ちを伝えることができない分、癇癪がどんどん激しくなっていった。
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