第3話 憂鬱
~異世界メジューワ、リデニア国首都クヨトウ~am4:00
ナトスとミノアは寝具ではなく
窓辺の椅子に腰かけて仮眠を取っていた。
静寂の中、彼女が眠りから覚める。
「ん・・・うん~~~・・・・・・・・・(っは!)」
ガバ!!勢いよく起き上がり辺りを見渡す彼女と目が合った。
すでに彼女が起きたのを察知して居たナトスとミノアは、
その一部始終を見ていたのだ。
ナトス/ミノア「・・・?」
無言の二人と目が合ったソロルはパニックになっていた。
「(え?な、なに?どこ?この人たち何なの・・・ち、ちがう?えっ!?・・・そう!樹海!え?じゃここ何なの?宿?ベットの上!?え・・・まさか・・・いや、何だっけ?この人たち・・・そう!見た!気を失う瞬間!・・・なんだったかなぁ・・私はあの時・・・えーと、えーと・・私は・・・誰?いや!ソロルじゃん!そうじゃなくて・・・オラン?そう!オランアームレッドは!?あの時私は死を・・・!!)」
サーっと血の気が引くのをソロルは感じた。
自分が死ぬ覚悟をしていた事に思考が追いついたのだ。
それと同時に安堵した。
今確実に生きていることに。
「(私・・・)生きてる・・・」
「・・・お、起きた?」
ソロルの反応に戸惑いながらもミノアが立ち上がり声をかけた。
「近づかないで!!」
「(ん!?)」
「(え!?)」
ソロルが声を発すると同時に、
二人は体中に違和感を覚える。
よく見るとソロルの左目が青白く
光っているように見える。
ミノアの反応から同じものを感じていると
考えたナトスが、念話で話しかけた。
『なんだ?攻撃ではなさそうだが』
『兄さんも感じるんだね?何だろう』
そしてナトスが気づく。
『っは!ミノア彼女を見てみろ!』
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氏名:ソロル・ノウビシウム 職業:召喚士(冒険者)
レベル:65 lv 年齢:20 歳 状態:普通
HP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
MP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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『え?何かが見えてる、彼女の情報!?』
ナトスに促されミノアも気づいた。
『わからんが、違和感の正体と関係はあるだろうな』
二人が混乱しつつも念話で話していると、
ソロルの呟きが聞こえた。
「ナトス・・とミノア・・・」
『!!え!?僕らの名前を!?』
『まさか、なら彼女も俺たちを“見た”、それを感じたのか!?』
『でも何で僕たちに彼女が“見える”の?』
ソロルが話を続けた。
「私が召還した・・で間違いなさそうね」
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氏名:ナトス(ソロル・ノウビシウムに召還されし者)
職業:召還者(使途)
レベル:1 lv 年齢:23 歳 状態:普通
HP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
MP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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氏名:ミノア(ソロル・ノウビシウムに召還されし者)
職業:召還者(使途)
レベル:1 lv 年齢:19 歳 状態:普通
HP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
MP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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「(レベル1・・・よくもまぁ生きて帰ってこれたわね・・え!?ちょっと待って!)そっちの・・ミノアだっけ?今しゃべらなかった!?」
「え?う、うん、ごめんうるさかった?」
「(あ・・・う・・・・)」
ソロルはアワアワして驚いていた。
自身の召喚獣も含め、召喚獣が言葉を発するなど
教科書にも載っていないのだ。
「しょ、召還獣ってしゃべれるの?・・・今まで聞いたことないけど・・」
「おそらく召還“者”であって“獣”ではないからだろう」
ナトスは他人の情報が見えるのであれば自分のも見えるのではと、
意識を自身に集中し確認していた。
そして見えている範囲が違うことに疑問を抱いていた。
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氏名:ナトス(ソロル・ノウビシウムに召還されし者)
職業:召還者(使途)
レベル:1 lv 年齢:23 歳 状態:普通
HP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
MP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
技能:有
肉体強度:S Rp 精神強度:S Rp
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ソロルは自身が召喚した者だと知り、
警戒心がなくなり安心しきっていた。
そして自身の召喚獣“シャリ”との表記の違いに気付く。
「“者”であって“獣”じゃないからかぁ・・まぁそれもあるかも、ってアンタもやっぱり話が出来るのね」
そういうとソロルはベットから立ち上がり窓の外を確認した。
ソロルは“クトヨウ”中央に近い東側のこの街並みに
薄っすらと記憶があった。
「・・あら、ここって“クヨトウ”の東側じゃない?(おじいちゃんに聞いたほうが早いかもね)」
この疑問にミノアが答えた。
「あっ、そうだと思うよ、ここのルルさんって人が言ってたけど、何かの東支部が近くにあるみたいだし」
一呼吸おいてソロルが応答し話を切り出した。
「・・・なんか変な感じね、自分の召喚獣とこうやって意思疎通どころか会話が出来るなんて・・あっごめん召喚者だったわね、とりあえずここは安全だし、私は知り合いを探したいからもう大丈夫よ、どうやって生き延びたとか、ここまで来た手段とか気になるところではあるけど、今度ゆっくり聞くわね、ありがとう、もういいわ」
ナトス/ミノア「・・・・・ん?」
ナトスとミノアは要領を得ない顔でソロルを見ていた。
「・・・・・え?」
そしてソロルも疑問の声を発した。
そしてミノアが反応した。
「あっ、そうかごめん、ここは女性が泊ってる部屋だし僕らみたいな男が居たらゆっくり休めないよね、すぐ出ていくよ、僕らもやらないといけない事あるし、行こう兄さん」
「ま、まぁそれには概ね同意だが、そ、その前に話しておかなければならない事がある、お、俺は心の準備がまだ・・」
ナトスはミノアに同調しながらも自身の抱える
大きなハードルを越えられずにいた。
そんな二人の発言を聞いていたソロルが否定する。
「ちょーっと待ったー!違う違うそうじゃない・・・どう言えばいいのかしら、いい?まず一つ、あなた達イケメン二人を引き連れて外を歩き回りたくないの、変に噂立てられかねないでしょ、二つ目、あなた達に勝手に外をうろつかれたく無いの、そもそもやりたい事って何よ、何か問題でも起こされたら私が召喚したって見る人が見ればわかるし、責任問題になるでしょ」
『さらっと褒められたね♪』
『こ、心の準備が・・・』
「そうね、言葉で説明するより、見てもらった方が良いかもね、召喚魔法“シャリ”!」
魔法発動と同時に青白い光の柱が現れて消えた、
後には一角の白馬が残っていた。
「(おぉ!馬だ)」
「(ユニコーンだ♪)」
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氏名:シャリ(ソロル・ノウビシウムに召還されし魔獣)
職業:召還獣(シャリ)
主従状態:機能 年齢:3 歳
HP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
MP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ナトスとミノアは“シャリ”の情報を“覗き見していた”
ソロルはあの時消滅させられたシャリが
無事なのを確認しジャレ出した。
「あぁ~シャリィ~大丈夫だった~」
「ヒュイー」
「痛いとこ無い?ちゃんと再生出来たねぇ~」
「ヒューン」
ソロルはシャリを愛でつつ、話しかける。
「勇敢だったよ、シャリ、ごめんね顔が見たかっただけなの、今度ゆっくり遊ぼうね、ありがとう、もういいわ」
満面の笑みでソロルが言うと、
“シャリ”はヒュイ!っと一鳴きして音もなく消えた。
「・・っね?今の感じ、わかった?」
ナトスとミノアを見ながらソロルが質問をした。
「うむ、賢そうな馬だな」
「シャリちゃんって言うんだね可愛い!」
「そこじゃない!今見てたでしょ、シュッて音もなく消えたでしょ?」
やっと要領を得たナトスが切り出す。
「なるほど、確かにそれなら俺達にも可能だ、しかし見たところ俺達の能力と今の現象は異質なものだと感じている、俺達のは“ソロちゃん”が言った“二つ目”となんら変わらない能力だ」
「(ソロちゃん?)」
ソロルが違和感を覚えると、
ミノアもナトスの話を補足する。
「兄さんの言う通り、シャリちゃんは何処かに行ったというより、消失した様に見えた・・僕らはその場から消える事は出来ても、何処かには存在しているんだ、だから“お姉”の言う“勝手にうろつく”事になると思うよ」
「(お姉?・・)・・・あんた達・・・覗き見したわね!!?」
ソロルが突然、怒りで満ちた眼を光らせながら
ドスの効いた声でナトスとミノアに圧をかけて来た。
『え!?怖い・・オーラが見える』
ミノアは怯え念話でナトスに話しかけた。
『の、覗き見ってあれだろな、情報が見えるやつ』
ナトスは状況を理解できず焦っている。
『やばいじゃん!見たらダメなの!?な、なんとかごまかしてよ、兄さん』
『お、お前やれよ・・得意じゃん、そう言うの』
『無理!プレッシャーの質が怖すぎる、無理だよ無理!』
焦る二人をよそに、さらに追い打ちをかけるソロル。
「勝手に人の“ステータス”を覗き見するなんて、モラル無いの?欠片もないでしょ!特に女性や女の子を“鑑定”するなんてマナー違反も甚だしいわ!大罪よ!」
ここでナトスは真実を織り交ぜながら
なんとか否定しようと試みる。
「誤解だソロちゃん、そもそも俺達は“ステータス”や“鑑定”と言った言葉すら今始めて知った!覗き見なんてモラルに欠ける事するわけない」
しかしソロルは聞く耳を持たない。
「ハイ!嘘~、あなた達の発言から私は気付いてします~、私やシャリの“ステータス”を見ないと説明付かない発言をしているの、まずアナタ!」
「!?」
ビシ!っと指をさされナトスに緊張が走る。
「アナタは私を“ソロちゃん”と呼んだ、百歩譲って自分のステータスから私がソロル・ノウビシウムであると推察できたとしても、“ちゃん”付はおかしい、でも事実あなたは23歳で私より年上、そしてアナタ!」
「(ビクッ!)」
ビシ!っと指をさされミノアが怯える。
「アナタは私を“お姉”と呼びシャリには“ちゃん”付をしたわね、事実あなたは19歳で私より年下、シャリより年上になるわ、あなた達が他者をすぐに愛称で呼び年下に“ちゃん”付する癖がアダとなったわね!!」
2人は
「暴論だ!必ずしも“ちゃん”付するわけではない!思い込みだ!」
と心の底から叫びたかったが、
この女性に何を言っても
“ハイ!嘘~”と切り捨てられる
恐怖が勝り何も言えずにいた。
見たのは事実、もはや認めて謝罪を考え出していた。
「年齢は、“鑑定”以上の技能で相手のステータスを確認するか、相手から開示・公表してもらう以外知る由はないは、そして私は開示も公表もしていない、女性の私が20歳である事、女の子のシャリが3歳である事を知るのはステータスを覗き見する以外ないのよ!このスケベ!!」
「(ス、スケベ!?そこまで飛躍するのか!)」
「わ、わかった、ごめん、認めるよ、でも本当に知らなかったんだ、“ステータス”の事も“鑑定”の事も、いきなり召喚されて知らず知らずにやってしまった事なんだ、ごめんなさい、で、でも女性が男性を“鑑定”するのは許されるの!?お姉だって僕らの事見たでしょ?」
「ハン!何にも知らないみたいだからこの際しっかり“教育”してあげる!さっきも言ったようにあなた達の言動で起きたトラブルは召喚した私の責任になるの、まぁ“親”みたいなもんね」
ソロルの発言からナトスはハードルを
越えるためのヒントを見出した。
「(“親”・・だと?こ、これは!・・・心の準備が出来た!)」
更にソロルは続ける。
「男女に関係なく勝手にステータスを覗くのはモラル違反よ、特に女性を“鑑定”するなんて“品定め”のようなものでマナー違反もはなはだしいわ、私にとっては大罪でしかない!でも例外が一つだけあるの、それは召喚士が召喚したものを確認する場合よ、召喚獣には“主従状態”と言うものがあって、召喚士はそれを確認し管理する責務があるの、“暴走”なんてことになったら周囲に迷惑が係るしね、そもそも確認する能力“鑑定”以上の技能を習得しないかぎり召喚魔法陣の習得自体禁止されてるぐらいなの、わかった?あなた達が召喚した者から“鑑定”されるのは当たり前の事なの」
ミノアは
「僕たちは“獣”じゃない召還者だ、僕らにも人権をー!」
と反論しそうになったが、
それをナトスが遮った。
「ぼく・・」
「なるほど!理解した!解りやすい説明をありがとうソロちゃん!ミノア、これは避けては通れない通過儀礼のようなものだ」
「(え?)」
「な、何突然、潔いわね・・・」
ソロルはナトスの変わり様に一瞬身構えた。
「いや、突然この世界に召喚されて知らなかったとはいえ大変失礼な事をして申し訳なく思っている、この通りすまなかった」
ナトスはかしこまり、深々と頭を下げた。
それを見て何となく罪悪感がソロルに芽生える。
「そ、そうなのね・・まぁ私が召還したわけだし・・私にも責任はあるの、言い過ぎたかもしれないし・・・だからあんまり・・・ね?」
ナトスは話を続けつつ、ソロルを持ち上げだした。
「いやぁしかし、ソロちゃんはすばらしい女性だ!なんだったか・・“親”だったか?召還士の責務に対する姿勢・・・“教育”を受けた俺達は“子”みたいなものとして、尊敬の念すら感じている、ソロちゃんに迷惑をかけて自責の念を覚えたよ」
そしてミノアが気付く、兄ナトスの悪い癖。
「(はっ!まさか兄さん!・・言うつもりだ、このタイミングで、先に“言質”をとって・・・じ、“自縄自縛”・・・)」
ソロルはナトスに誘導されていく、ナトスの超えるべきハードルを下げるために。
「エライ!偉いわ!素直で宜しい!!そうよ、私は召還士として誇りを持って居るの!この“メジューワ”広しと言えども、召還士はそんなに居ないのよ!才能と努力の賜物なんだから」
「俺達を召還したのがソロちゃんで良かったよ、今後はこのようなことにならない様十分に注意し、もとの世界に帰るまでは余計なことをしないよう誓うとしよう、本当に“今後は”迷惑をかけない!だから今までの“今までの”事はちゃんと謝罪させてほしい」
「な、何よ・・変な含みのある言い回しね・・・」
ナトスはあえて露骨な言い回しをした。
当然ソロルはその言い方に違和感を覚え、
疑念を口にする。
「言いにくい事だか、実はこの世界にいきなり召還され、右も左も判らぬまま命からがら何とかこの街まで来たのは良かったが、ソロちゃんをゆっくり休ませ保護する場所がここしか見つからず・・入るとき、ここでの料金すべて、あっ俺達の分含むだが、支払うことを約束してしまったんだ、資金を持たない俺たちが勝手なことをして申し訳なかった・・・」
ナトスの言葉を聞いたソロルは“この私に任せなさい!!”と
言わんばかりに言い放った。
「なーんだ、そんなこと、さっきも言ったようにあなた達のことなら私が責任を持つわ!ここの料金も私が清算するから大丈夫よ!それに手ぶらに見えるけどこう見えて私、多目の資金を持ち歩いてるの、だから安心して!」
「そうか、安心した、だが、俺達も良い歳をした男である事を自覚している、女性に迷惑をかけっぱなしでいる事は出来ない、少し時間をくれれば、ここでの借りを返せる算段が付いている事を覚えておいて欲しい、だから俺達の行いに悪気はなかった、悪意はなかったんだ!それだけは信じてくれ」
ナトスはここでの料金、食事代含む清算を、
ソロルに確約を取った形に出来た。
しかしナトスにも罪悪感は残る。
料金を返すための算段がある事を念押しした。
「な、何なの、ちょいちょい変な言い方するわね・・。まぁ良いわ、話しを戻すけど、あなた達はシャリみたいに戻れないのよね?なら、この世界の事を何も知らないあなた達は私の監視下に置いておいた方がよさそうね、同行してもらうわ」
「承知した、宜しく頼む」
「わからない事、色々教えてください」
「よし!」
こうして三人は行動を共にしていく。
しかしこれは偶然ではなく“神”の導き、必然。
兄弟の“運命”と彼女の“使命”は交差し繋がっていく。
{しかし彼女はまだ知らない、兄弟の“運命”と二つの魂の“救済”を。
そして兄弟はまだ知らない、彼女が“奇跡”への最後の鍵である事を。}
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