第11話 最終話 一番会いたい人は

『美羽さんへ』



 もうわたしのことわすれちゃってるとおもうから、ここに書いておくね。


 美羽さん、わたしとたくさんあそんでくれて、ありがとう!


 あのゆうえんち、未来ではもうなくなっちゃってたから、つれてってもらって、うれしかったよ!


 それから、わたしにやさしくしてくれて、いっしょにママをさがしてくれて、ありがとう。


 わたし、ウソついてたの。

 本当にごめんなさい。



 ホントはね、美羽さんがわたしのママなの!

 わたしは未来からママに会いに来たんだよ!

 そしてパパとママに未来でもなかよくしてくれるようにお話ししに来たの。


 でも、だいじょうぶみたい。

 だって、パパはママをすごく大好きみたいだよ!


 今日、起きなかったのは、わたしが未来にかえって美羽さんがわたしのことわすれちゃう前に、この日記に書きたかったからなんだ。だから眠たいフリしてたの。

 ごめんなさい。おこってた?

 もう時間がなかったから、ねむたいおしばいしちゃったの。


 さいごに、わたしが未来にかえったら、パパになる人にあやまっておいてね。パパのことわるく言っちゃったから。



 それから、ママがパパに言えなかった本当のこと、ちょっとだけしってるよ。

 パパとママがむずかしい話してるのきいちゃったの。


 パパが言ってたのは、ママのこと、ほかにも好きな人がいたのに、パパとけっこんして幸せだったかってことと、その人の方がママをもっと幸せにできたかもって。ママはいつもその人に相談してばかりで、パパには相談してくれないって。


 なんか、いろいろごかいしてるかもしれないから、ちゃーんと言ってあげてね! パパのことがいちばん好きって!

 それにね、パパにママのこと聞いたことがあったの。パパはママのこといつも愛してるみたいだよ! それをママにしらせたかったんだ!



 今はまだパパの名前いわない方がいいとおもうから、パパがだれかちょっとだけヒント出すね!



 それはね 

 じゃじゃ~ん!

 今日きっといちばん最初に美羽さんに会いに来てくれる人だよ、きっと!


 その人がわたしのパパになる人だとおもうよ! パパはとーっても心がきれいでやさしい人だから。


 さあて、だれでしょう!

 それは、未来での、お、た、の、し、み!!

 これからかぞくみんな、もっとしあわせになれるね?

 じゃあ、サヨナラ、じゃなくて、また未来で会いましょ~! 


                                         『まだ名前はひみつのあなたのこどもより』








 少し幼い字ではあったが、しっかりとした丁寧な文で書かれていた。


 ――これって……。一体どういうこと?



 美羽の日記にいつの間にか書かれている3ページに渡る奇妙な未来からの? メッセージに、美羽は思い当たることはなかった。



 しかし、このたどたどしい大きな文字で書かれた子供の愛しい言葉は美羽の胸を熱くしていた。

 なぜか懐かしく切ない気持ちが溢れてくるのだ。



 ──やっぱり最近の私に何かあったのね――。この手紙の子は、私の未来の子供なの? 

 ゆうえんち? 私に会いに来てくれたということ? それにヘアピンもあったわ。

 

 何か私の事故にも関係があったのかしら……。




 ──でも、良かった! 

 きっとこの子は無事に未来に帰れたのよね? だから私の記憶が無いんだわ。

 だけど……この子のお父さんは……私の旦那さまになる人は誰なのかしら? 


 裕くんだといいけど………とても優しい人って……もしかして…いつも私に優しくしてくれる光太さんのこと? 

 それじゃ……裕くんとはまさか……。


 美羽は頭が混乱して胸がざわざわしていた。


 するとその時、シスター伊藤が階下から美羽を呼んだ。


「美羽! 心配してまたいらしてくれたわよ!」



 今日一番に会いに来てくれる人……私のことをいつも想っていてくれる人──。



「は~い!」


 美羽は急いで部屋着を片手で器用に脱ぎおろしたての水色のワンピースに着替えると、一気に目が覚めて爽やかな気分になった。


 そして、期待と不安で胸がドキドキと跳ねながら窓から顔を出すと、路上に停めた車に寄りかかっている若い男性の姿を見つけた。


 天使の美羽を見つけて、無邪気にくしゃっと笑ったその人は……美羽が今一番逢いたい人だった。







 運命のツインレイシリーズ『天使降臨編』終

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運命のツインレイシリーズPart12『天使降臨編』 星の‪りの @lino-hoshi

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