【7500フォロー&120万PV突破感謝!】VTuberを支えるためにマネージャーとして事務所に入社したら公式スタッフとして会社の顔になってしまったんだが?
検証!灯織くんはどこまで相手を観察できるのか(その1)
検証!灯織くんはどこまで相手を観察できるのか(その1)
「本日集まってもらったのはほかでもない」
「ういちゃんが◯ゲンドウみたいなポーズして話し始めた」
「どうしたのういちゃん」
社内の休憩室で、1期生の砂原うい、2期生の鞍馬こはく、藍原葵が一つのテーブルで会議を開いていた。
「灯織くんってさ、目がいいじゃん?」
「どういう意味?」
「私達が気づかないことによく気づくって意味」
「それはそう。正直あの洞察力は異常」
「前にね、たまたま廊下で出くわしたんだけど、その時自然に『髪切ったんですね』って言われたの」
「実際のところは?」
「その日の前日に毛先を1cmだけ切ってもらったんだ」
「ほんとに切ってたんだ…」
「私も、香水付けてるときは必ず言ってくれるから私のことをしっかり見てくれてるんだなって分かる」
「そういえば最近葵、事務所に行くとき香水付けるようになったね」
「……灯織さんなら、気づいてくれるかなって」
「……ふふ、攻めるねぇ」
ただならぬ感情を察知したこはくが楽しそうに笑う。
「私は嬉しいよ。男性が苦手だった葵が、まさか男性を意識することになるなんて…」
「…うるさい」
顔を赤くしながら葵が隣の席に座る相棒を叩いた。
「へぇ…葵ちゃんがね」
向かいの席でそう呟いたういは本題に入る。
「というわけで、灯織くんはどこまで相手の変化を見破ることが出来るのか、隠れて検証したいと思います」
「おおー」「なるほどね」
「まず始めにいつものように灯織くんと会話をして、その後に二人には何かしら服装に変化をつけてもらいます。その状態でもう一度話しかけ、灯織くんが変化に気づくかどうか検証しましょう」
「気づかなかったら景品とかないの?」
「確かにあったほうが盛り上がるかな」
腕組をしてういが考え込む。
「じゃあ、気づかれなかったらWanazonのほしいものリストの一番上にあるやつを買ってあげよう」
「おっ、いいね〜」
「いつやるの?」
「用意とかもあるから明後日とかにしようかなって思ってるんだけど、どう?」
「私は特に用事ないしいいよ〜」
「私も」
「よし、じゃあ明後日、各々で考えてきてね」
かくして突発的に始まった企画――後に灯チャレンジと呼ばれるそれ――は幕を開けたのだった。
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「こんにちは灯織さん」
「こんにちは鞍馬さん。あれ、今日会社に来る予定ありましたっけ?」
約束の日、一番始めに漣と出会ったのはこはくだった。
「ううん。特にないけど、ういちゃんに呼ばれててね」
「ああ、そうなんですね」
「ところで、灯織くんは私の服装を見てなにか言うことはあるかな?」
こはくが今日来てきたのは、自身が高校時代に着ていたセーラー服だった。
「……えっと、コスプレ、ですか?可愛らしいですね」
「高校の制服を引っ張り出してきてね〜。2年ぶりだったけど、まだまだ着れそうで安心したよ〜」
「ああ…卒業後も学校の制服着て外出ってしていいんですっけ…?」
「ふふん、ちゃんと会社の更衣室で着替えてきたよ」
「……はぁ」
漣が頭を抱える。多少考え込んで顔を上げると、その紺の瞳を伏し目がちにして着ていたジャケットを脱いで差し出した。
「ん?」
「いや、コスプレならともかく、以前通ってた高校のだと写真を撮られて特定なんてされたらたまったものじゃありません。一応廊下とかいるときはこれ羽織っておいてください」
「……紳士だねぇ」
にへらとこはくは頬を緩ませる。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ、もう着替えるから」
「…ならいいんですが」
ほっと息をつくと、漣はジャケットに再度袖を通した。
「あ、このあとういちゃんと葵にも会うかもしれないから、そのときはよろしくね」
「あ、了解です」
そうしてこはくは漣と別れると、言ったとおりにすぐに更衣室に入りもともと着ていた私服に着替え直した。
「さて……ういちゃん達はどんな服で来るんだろうなぁ」
きっと葵は少し張り切ってワンピースとかを着てくるだろう。
ういちゃんは……なんだろう。シンプルな服が多いからあんまり予想できないな…。
まだ姿を見せていない二人の服装を予想しながら、待ち合わせのために予約していた会議室の椅子に座って流行りの曲を聞き始めた。
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「みゃあああああああああ!!!」
「むりむりむりむりむり」
しばらくして、ドタドタとけたたましい足音とともにういと葵が同時に部屋に飛び込んできた。
その様子を目を丸くして目の当たりにしたこはくは、慌ててイヤホンを外して二人に駆け寄った。
「だ、大丈夫!?何があったの!?」
「ごっ、ごごごごごご、ごごっ」
こはくが葵にそう問うが、壊れたラジオのように異音を発するのみだ。
「…ご?」
一瞬こはくの脳裏に台所に現れる黒光りした恐怖の象徴がよぎるが、あまりにも衝撃的なことがあったので言語機能が一部崩壊しているだけのようだ。
こはくは比較的落ち着いているういに話を聞くことにした。
「えっとですね……葵ちゃんと一緒になったからそのまま二人で灯織さんに会いに行ったんです」
普段の口調から「です」「ます」調になるのはういの配信中のキャラ付け…癖だ。チャンネル登録者100万人を超える大物が、いつもの調子を取り戻すことができてないことからも事の重大さが伺い知れる。
「それで、とりあえずいま来ている服の感想を聞いたら……次々と歯の浮くようなセリフを…」
それだけ言うとういは机に突っ伏して沈黙した…。
「えぇ……何言ったの…灯織くん」
撃沈した二人を見て困惑を隠せないこはくなのであった。
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