検証!灯織くんはどこまで相手を観察できるのか(その2)

「大丈夫そう?」


「なんとかね…」


「私も…多分行ける」


少し時間がたち、なんとか悶絶の波から帰ってこれた二人がこはくの問いかけに答えた。


「次会うのはお昼休みのときにしようと思うんだけど、どうかな」


「うん、絶好のタイミングだね。多分灯織くんも休むだろうからその時に見せようか」


「じゃあそれで。でもその間の時間何しよう…」


時計を見ると時刻は午前10時。漣の昼休みは12時なので、2時間ほど時間が余ってしまっている。


「特に深く考えずに時間決めちゃったからなぁ。私は大学のレポート持ってきたけど」


「私も」


「えぇ〜…じゃあ私はネットサーフィンでもするかぁ」


そうして三者三様に時間を潰す。そして時刻は11時30分を回った。


「一応灯織さんに昼休み会社にいるか聞いてみようか」


「あ、うん。おねがい〜」


ういがスマホからフィスコに連絡をいれると、すぐに漣からも返信があった。


「あ、灯織くん休憩室で食べるらしいよ」


「よし、じゃあそろそろ時間だし、早速衣装変更タイム開始〜」



===========================================



「ういちゃん結構変えるね」


「うん。変化量のゴリ押しでやってみようと思って」


「それと比べたら…こはくは、普通?」


「まあ色々思い出ある制服だし…髪型とかかな。そういう葵は?」


「人は、目先の大きな変化に囚われてそばにある小さな異変に気付けないって聞いたことがある」


「なるほど!たしかにこれは目を引くね」



===========================================




「急に呼び出して、どうしたんですか?」


「急にごめんね〜。後でご飯奢るからさ。少し付き合ってよ」


「奢って貰う必要はありませんけど、俺弁当ですし」


3人がいた会議室に呼び出された漣は、椅子に座りながらこはくと向き合っていた。


もちろんこはくは朝、漣に見せたセーラー服を着た状態だ。


「実はね。ある検証をしてたんだ」


「検証?」


「灯織くんは私達の変化に気づくことが出来るかクーイズ」


「ふむ?」


「今の私もなんだけど私、ういちゃん、葵が朝と比べて服装に変化があります。それをできるだけ全部当ててください」


「リアルモーフィングクイズみたいなものですか」


「あ、あれモーフィングクイズっていうんだ。段々景色が変わるやつ」


「らしいですよ。さて、鞍馬さんの変化を当てれば良いわけですか」


「うん」


「えーっと、まずヘアピンが3か所、腕時計が逆の腕にある、リボンの結びが逆」


「…おぉ、一瞬でほとんど当てられた…」


「まだあるんですね…あ、スカートのポケットになにか入れてます?スマホとか」


「正解正解!全問正解だよ!」


「意図的じゃなさそうな違いも言っちゃって良いんですね。それで、奢ってくれるとか言ってましたけど」


「うん。今日はお弁当持ってきてるし、今度機会があったら奢ってあげるよ」


「ありがとうございます」


「じゃあ次は、ういちゃんで〜す」


そうして入れ替わりで今度はういが漣の前に立った。


「というわけで次は私だよ。分かるかな?」


ういの服装は「働いたら負け」とプリントされたTシャツにジョガーパンツ、そして小物としてバッグを持参してきている。


「ちなみに間違いの数は10個!」


「多いですね…」


「じゃあスタートね!」


「…まず、マニキュア塗りましたね。爪に艶があるので。パンツの色が少し違う、バッグにキーホルダーが付いている。髪型が変わってる、あとはピアス付けましたね」


「うわ、あっという間に半分当てられちゃった。さぁ、あと半分だよ」


「結構難易度上がってますね…あ、時計が上下逆だ。んー、Tシャツのプリントのフォントがちょっと違う気がしますね。後は…うわ、そのパンツにいつの間にかベルトループが付いてる…」


「流石だね、あと2つ!」


「ううん……すみません。お手上げです」


ここで漣がギブアップを宣言する。ういは『この分だと全部当てられるなぁ』と思っていたので、以外な結果に驚きながらも答えを伝える。


「残り2つは、リップを塗ったのと、アイラインを若干濃くしてみた、でした〜」


「あ、ああ、あはは、そうだったんですね。全然気づかなかったです」


「んも〜、女性は顔が命なんだから、気づかないとダメだぞ〜」


「いや〜、面目ないです」


「全部当てられなかった灯織くんは今度私のお昼ご飯奢ってね」


「失敗時のデメリットあるんですかこれ…」


「じゃあ最後は葵ちゃんだから。…ちゃんと全部当ててあげるんだよ?結構気合い入れてたからさ」


「圧がすごいですね…全力を尽くしますが…」


「うん。じゃあ交代」


そうして入れ替わりに出てきたのは最後の刺客、藍原葵。


「…」


「…」


両者、睨み合いが発生する。


「スカートの裾にリボン、靴下の柄、香水の匂い」


「…正解」


「あと…あとは……」


漣の視線が下から段々と上に登っていく。


脚部、胴体、そして頭部。


「……すみません、わからないです」


しばらく考え込んだ後、漣は絞り出すように答えた。


「……灯織さん」


「はい」


「私、まだ変化が何個あるか、言ってない」


「え?」


「変化の数は、全部で、3つ」


「…つまり」


「うん、灯織さんは全部当ててる。だから今度のご飯は奢る」


「お、おお。ありがとうございます」


「今日は付き合ってくれてありがとう。あと…服、褒めてくれてありがとう。ういちゃんもさっきはいつもどおり話してたけど、その前は結構照れて取り乱してた」


「そう、だったんですか。意外ですね」


「うん。それだけ。じゃあね灯織さん」


「あ、もう終わりですか」


「うん。ちょっと着替えるから少し外で待ってて」


「わかりました」


漣が外に出ていくと、葵は奥にいた二人のもとに行った。すでに二人は着替えており、後は葵の帰りを待つだけだったようだ。


「おかえり。こっちからだとあんまり聞こえなかったけど、全部当ててた?」


「うん」


葵は目に着けていたカラーコンタクトを取ると、それをゴミ箱に捨てる。


「…よし、行こう」


「はーい」


「灯織くんは?」


「外で待ってるように言った」


「よーしレッツゴー」


3人が部屋の外に出る。


「あ、来ましたか」


「うん。お待たせ〜」


「灯織くんは今日何食べるの?」


「俺は今日普通の弁当ですね。卵焼きとか鮭の塩焼きとか」


「あ、卵焼き一つもらっても良い?」


「灯織さん、私もほしい」


「たまごソムリエの私が見定めてあげよう」


「俺の食べる分なくなりませんか?」


「私のご飯一口上げるからさ」


「まあ、それなら…?」


こうして4人は仲良く休憩室に向かったのだった。



===========================================



更新が遅くなってすまない。そしてこはくとオフ状態のういの口調がほとんど同じでスマナイ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る