拝啓、新しい担当を受け持つことになりました

拝啓、新しい担当を受け持つことになりました

前略、小火の裏で準備が進んでます

俺が公式スタッフとしてデビューしてから数週間が経った。


4月に入り新年度を迎え、新しい生活を始める人も多いのではないだろうか。


「というわけで今年度新しく社会人になる方や学生さんの生活の悩みについてのマロに返信していきたいと思います」


[ワイ新社会人]

[高校生になった!]

[メッセージが削除されました]


相も変わらず俺の配信に張り付くアンチ層。いつもお疲れ様です。


とはいえ段々とそう言ったコメントも全体の割合で見れば減ってきた。多くの人から小波灯という存在が受け入れられてきた証拠だろう。


「1つ目のマロ『今年から社会人になります、何か気をつけておくべきことはありますか?』…え、敬語とか?」


[ちゃんとアドバイスしろ]

[しっかりしろ社会人]

[なんで疑問形なんだ社会人]


「え、だってさ、気をつけておくべきことなんて特にないし。相手を不快にさせないように振る舞ったりとか、そのくらいだよ。ああ、仕事のミスはすぐに報告すること。報連相は大事」


[そんなのでいいのか]

[ワイそれ怠ってクビになったわ]

[基本が大事だな]


「そういえばさっきフィスコで桐藤さんが提出物終わってないって嘆いてたな。大丈夫だったのだろうか #仕事しろ桐藤 で呟いてね」


[息子に叱られてるぞ桐藤]

[#息子に迷惑かけるな桐藤]

[#お絵かき配信しろ桐藤]


「そういえばVではイラストかいてくれた人をママっていうんだよね。実は桐藤さんは年下だったりするんだけど」


[百歩譲って姉かな?]

[なんであんなのがあかりんのマッマなんじゃ・・・]

[おいあんなのってなんだ 桐藤カノン]


「次のマロ『今年高3で卒業するのですが、後輩を異性として意識してしまっています。受験もあるのでこの気持ちは抑えておこうと思っているのですが、伝えたほうが良いでしょうか』」


[定番やな]

[高3で恋愛はハイリスクハイリターン]

[というか恋愛したことあるのかお前]


「コメント欄に失礼な発言をした人が何人かいますね〜。恋愛?したことねぇけど?」


[ないんかい!]

[このDTが!]

[このマロを送ったものですが、不安になってきました]


「ご本人様!?大丈夫ですよ、真剣に答えるので……そうですね……何も思いつかない…」


[溜めたのにこれは草]

[おい社会人しっかりしろ]

[メッセージが削除されました]


「もし付き合ったとして、それを起爆剤に受験勉強に集中できるかどうかだよね。恋愛にうつつを抜かして足元掬われても笑えないし」


[それな]

[バランスが大事]

[そう考えると恋愛って面倒]


「恋愛面倒だからしたくないっていう人もいるけど、人を好きになるっていうのは好きになりたいから好きになるんじゃなくて気づいたら好きになってる受動的なものだと思う。彼女を作ろうともしなかった俺が言うのもなんだけど」


恋愛観なんて人それぞれだし突き詰めるとキリがない


「さてじゃあ次のマロ――」



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「わー、焦げ臭い」


張り付いていたアンチ層が重箱の隅をつつくような事を批判して炎上の火種をストックしている。この人たち他にやることないのかな?


俺はヴィッターで配信終了のつぶやきを行い、ベッドに体を投げ出した。


「明日の仕事は…」


そして翌日の仕事の確認。明日は藍原さんがダンスレッスン、鞍馬さんは休みか。


あとは俺が公式番組の打ち合わせ、共に仕事をしている先輩が別企画の打ち合わせか。


「明日も一日頑張ろう。おやすみなさーい」




俺の名前は灯織ひおりれん。VTuberグループ『ホロウエコー』のマネージャーとして働く傍ら、3人目の公式スタッフにして初の男性ライバー、小波さざなみあかりとしても配信する男だ。


そんな俺だが、現在、この業界においてなかなかのビッグイベントに携わることになっている。




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