最近できた後輩と一緒に(火ノ川光視点)
新年あけましておめでとうございます。こちらの投稿は新年1発目ですね。本年もよろしくお願いします
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「あ、灯織さん、プリントするんで取ってきてもらってもいいですか?」
「はい。行ってきます」
時刻はそろそろ昼休みとなるお昼時。これまで私は灯織さんに細々とした事務作業を手伝ってもらっていた。
今のようにプリントした書類を取りに行ってもらったり、企画に必要な物を確認して連絡を取ったりなど、通常一人でやる作業を二人で行うため仕事のペースが格段に上がった。
しかも丁度喉が渇いたときや一息つきたい時にお茶を淹れてくれる。
しかも美味しい。いつもと同じパックの茶葉を使っているはずなのに、自分で入れるよりも美味しく感じる。
驚いた私が理由を聞くと、
『少し淹れ方にコツがあるんですよ。後でフィスコに書いておきますね』
と言ってくれた。
「……えっ、有能すぎない?」
察しの良さ、仕事の手際、全部高いレベルだ。正直どんな仕事でも就職できそう。
「火ノ川先輩。持ってきました」
「あ、ありがとうございます。ここ置いといてもらってもいいですか?」
「はい」
そう言って数枚の印刷した紙を灯織さんが置く。
「お疲れ様です。そろそろお昼にしましょうか」
私が軽く伸びをしてそう言うと、灯織さんも頷いた。
「そうですね。火ノ川先輩は何食べるんですか?」
デスクを立って、お昼を食べるために休憩室に向かう。
「今日はエビフライ弁当ですかね〜」
「おお〜良いですね」
「エビフライ好きなんで――わっ!」
その時、ドアのところに足を躓いてしまった。
「わ、危ない」
普通だったらそのまま転んでしまうところだったが、前のめりになってしまった私の体を灯織さんが手を回して支えてくれる。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、気をつけてください。床がちょっとめくれてるみたいですね」
そう言って彼はかがみ込んでドアの
「…なるほど」
彼がなにか納得したように顔を上げたので、慌てて顔を背けた。
「…? どうしました?」
「いえ、気にしないでください」
その後、昨日のことを思い出して赤くなった顔を冷ますまで彼から顔を背け続けた
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休憩室は既に人で賑わっており、私達は席を探す。
「俺が席取ってるので、先輩は弁当取りに行ってきてください」
「ありがとうございます」
席取りは彼に任せて私は300円で買うことができるエビフライ弁当を取りに行く。我がホロウエコーは惣菜屋さんと提携することで通常より少し安く弁当を買うことができ、とても助かる。
「戻りました。灯織さんも取ってきていいですよ」
「あ、いえ、俺は弁当持ってきているので」
そう言って灯織さんが持参した小さめのお弁当箱を取り出す。
「お弁当作れるんですか!?」
私が驚いて聞くと、彼が照れくさそうに笑う。
「前職では帰る時間が殆どなかったんでコンビニの惣菜で済ませてたんですけど、大学のときは基本自炊だったので人並みには作れますよ」
「すごい…」
私が大学生の頃はずっと両親に頼りきって生活していたから一人暮らしを始めた今でも自炊は苦手。
灯織さんがお弁当箱の蓋を開けると、中には美味しそうな具材が綺麗に盛り付けられていた…美味しそう。
「得意料理とかあるんですか?」
「そうですね…チキン南蛮とかは好きなのでよく作ってますよ。あとは従妹が唐揚げが好きだったのでそれも得意ですね」
「あっ、今日のおかずに入ってるじゃないですか」
彼の昼食には、唐揚げが3つ付いていた。とても美味しそう。
「…そんなに食べたいんですか?」
「えっ!? いや、そんな事思うわけ無いじゃないですか!」
そんなに顔に出てた? たしかに美味しそうでひとくち食べてみたいとは思ったけど…
「いや、別にほしいのであればあげますよ」
「ほ、ほんと…?」
「ただ、それだと俺の昼食が少なくなっちゃうんで、先輩のエビフライ1本と唐揚げ2個を交換でどうでしょう」
「え、そんなにもらっても良いんですか?」
「いいですよ。俺もエビフライは久しく食べてないので食べたいですし」
「じ、じゃあ頂きます…」
「どうぞ」
差し出された弁当箱から唐揚げを2つ箸で摘んで自分のエビフライ弁当に乗せる。それと交換で灯織さんもエビフライを持っていった。
「いただきます」
彼が手を合わせてエビフライを食べるのを見てから、自分も唐揚げを食べる。
美味しい。作ってから時間が経っているのにまだジューシーさが残っている。
「美味しい…!」
「そうですか? お口にあってよかったです」
ご飯と一緒に食べると更に美味しい。あっという間に食べ終えてしまった。
「ごちそうさまでした…!」
こんなに美味しい唐揚げを食べたのは久しぶりだ。
顔を上げると、灯織さんはまだご飯を食べている。
「…灯織さん少食なんですか? 私の弁当よりご飯少なくないと思うんですけど」
「ああ、そうなんですよ。あんまり食べない体質で…」
「へえ〜、男の人って結構食べるものだと思ってたんですけど」
「人によりますよ…ごちそうさまでした」
彼がお弁当箱をしまう。
「あ、じゃあ私片付けてきます。ちょっと待っててください」
「俺もちょっとコーヒー淹れたいので一緒に行きますよ」
そう言って一緒に立ち上がり、容器の廃棄場所に向かう。
その時だった。
「キャッ!」
ちょうどすれ違った人と肩がぶつかり、尻餅をついてその人の持っていたコーヒーが服にかかってしまった。
「あ、ゴメン」
「大丈夫ですか!?」
灯織さんが慌ててハンカチを渡してくる。
「コーヒーのシミは落ちにくいんで早く洗ったほうが良いですけど……先輩、着替えとか持ってますか?」
「はい…ロッカーに替えの着替えがあるので大丈夫です」
「なら良かったです…コーヒーこぼした人は?」
「あれ…どこ行っちゃったんですかね」
周りを見回してみるが、さっきぶつかった人を見失ってしまった。
「とりあえず、着替えてきます」
「容器は俺が捨てときますね」
「ありがとうございます」
灯織さんが容器を持ってゴミ捨て場に向かっていく。私は彼からもらったハンカチで軽く濡れてしまったシャツを拭きながら、着替えるために私も立ち上がって自分のロッカーがある場所に向かった。
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