最近できた後輩について(火ノ川光視点)
新年あけましておめでとうございます~。本年もよろしくお願いいたします。
というわけで新年1発目のお知らせ。
新年に合わせて新作の小説を投稿いたしました。
詳細が気になる方は、この話の一番最後に新作の概要とリンク先を貼っておくので、ぜひご覧ください。
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私の名前は火ノ川光。VTuberグループホロウエコーの公式スタッフとして日々タレントさんと公式企画の進行やスタッフチャンネルでの配信など、多岐にわたる業務をこなしています。
そんな私は事務所でタレントとしては一番の後輩なのですが、この度私に後輩が出来ることになりました。
名前は灯織漣くん。初対面の印象はとても礼儀正しい男の人でした。細身でスラッとした体型をしていて、俳優としてもやっていけそうなくらい顔が整っていました。
何より目を引くのが、瞳と雰囲気。落ち着いた立ち姿と、まるで全てを見透かすような不思議な眼が、私と同い年とは思えないミステリアスな雰囲気を醸し出している。
いざ研修をはじめてみても凄まじい学習速度で配信時の注意事項や配信設定などを覚えていった。
運動神経もいいみたいで……いや、これは思い出さないでおこう。
顔が火を吹くくらい熱くなってしまって配信に支障が出るかもしれない。
男の人と抱きしめ合うなんて……あわわわ……。
[まどちゃんどしたの?]
[ボーっとしてるぞ〜]
[そういうとこもすき]
「…あっ、そ、そうですそうです。皆さんに耳よりな情報があるんですよ」
[おっ、なになに?]
[新人!?]
[まどちゃんの新衣装!?]
彼のことを思い出して少しボーっとしていたらしい。
運営さんから彼の話は少しなら出してもいいと許可をもらっているので、その話題に切り替える。
「新人さんって言う点ではそうですかね……近々、新しい公式スタッフさんがデビューする予定なんです」
[キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!]
[ついに窓ちゃんに後輩が…!]
[おめでと 窓の埃 ¥500]
「そうなんです。ついに私にも待望の後輩が!」
[どんな子?]
[拙者、黒髪ロングのロリっ娘が良いでござるねデュフフ]
[もう顔合わせとかした?]
「丁度今日研修がありましてですね。その時に初めて会ったんですよ」
[どんな子〜?]
[どんな子だった?]
[wktk]
「すごい落ち着いた人、でしたね。私と同い年なんですけど、すごい優秀なんです」
[まどちゃんをして優秀と言わせしめるとは…]
[益々楽しみですね]
[ロリですか?]
「ロリですか?」というコメントに目が留まる。そうだ、リスナーの皆は新しい「女性」スタッフが来るって考えてるんだった。
あれ? だとしたら彼、すっごく燃えるのでは?
私はなるべく煙が立たないように警告しておいた。
「あー…えっと、もしかしたらリスナーの皆さんは残念に思うかもしれません…ね」
[まさかの残念美人!?]
[期待で胸が爆ぜる]
[肝心なところでテンパっちゃってまどちゃんに涙目で助けを求める残念美人…最高じゃねぇか]
あ、あれー!? なんか誤解が広がっていっているような気が……
「ひ、ひとまず私が言えるのはこのくらいですかね。詳しくは公式からの情報を待っていてもらって……」
[TA☆NO☆SI☆MI☆DA!!!!]
[待ち遠しいな]
[なんかやな予感する]
ま、まあ女性のみなのはタレントだけですし、多分社長がなんとかしてくれるでしょう。
そんなことを思っていると、裏で起動しているフィスコードからメッセージが届く。
相手は社長。
用件は……
「…えっ」
[ん?]
[どした]
[お仕事?]
予想だにしていなかった内容に思わず声を漏らすが、今が配信中であることを思い出してすぐに取り繕う。
「あーいやいやなんでもないですよ。ただ私が投資してる株が暴落しただけで」
[大事件で草]
[生涯収支マイナス2億円?]
[うーんこのおっちょこちょいめ]
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今日のお仕事はほぼすべてが公式スタッフとして動く仕事ばかり。
それに目をつけた社長が私にもう一つ仕事…というかミッションを与えた。
イケジュン『どうやら灯織くんが公式スタッフとして収録や身の振る舞い方の理解を深めたい、と言っていてね。せっかくだから今日1日、君のマネージャーとして配属させることにしたよ。色々と教えてやってくれ』
イケジュン『P.S 彼はなかなか頼りになる男だからなにか困っていることがあったら気軽に相談するといい』
「おはようございます」
「あっ、おはようございます!」
始業前に出社をすると、既に灯織くんがスーツ姿で迎えてくれた。
「結構早く来たんですね」
「そうですね。今日やる分の仕事を片付ける必要があったので」
だとすると何時間前から会社に来ていたのだろうか。
「取り合えず、今日の予定は――」
私が今日の予定を口頭で伝えようとすると、すぐに彼が口を開いた。
「10時から公式番組の収録、14時から夏のフェスに出すグッズの確認…ですよね?」
「そ、そうですね」
いつの間に予定を把握したのだろうか。
「社長が火ノ川先輩の予定を送ってくれました。普通のタレントさんと同じ感じのスケジュールなんでびっくりしましたよ」
「いつもは通常業務と半々くらいなんですよ? 今日だけ忙しくて……」
「ふふ、大変ですね」
「う、うぅ……と、とりあえず自分のデスクに行ってもいいですか? 荷物とか置きたいので」
彼の微笑に少しドキッとしながらも、私はそう伝える。
彼は平然と話しているが、ここは会社の入口である。
「ああ、すみません。どうぞ」
私の歩調に合わせて彼が半歩後ろを歩く。
「火ノ川先輩は、なんでこの会社に?」
エレベーターに乗り込むと、移動時間に彼がそんなことを聞いてきた
「えっと…そうですね。私の場合は、大学の時からホロエコの方々を見ていて、モーションキャプチャとかの勉強をしていたこともあったので、それで」
「元はプログラマー志望だったってことですか?」
「はい。入社したあとに温さんと池谷さんに目をつけられ――いえ、私の声を評価してくれて、それでやってみようと」
「やっぱり初配信とか緊張しましたか?」
「そうですねー。でもそう言った緊張とかのミスでもある程度はリスナーの皆も笑って喜んでくれますし、それでハイスペックポンコツスタッフの地位を確立したので…自分の短所すらも魅力に変わるのが救いでした」
そこまで言って気がついた。確かにこの界隈では短所すら魅力になることが多い。
しかしそれはある程度リスナーが配信者のことを受け入れていることが条件だ。今まであったイメージと実際のギャップが魅力を生み出し、ファンの心をつかむ。
しかし灯織くんが公式スタッフとしてデビューしたら、たとえ灯織くんがこってこての博多弁を話すポンコツ系男子だろうと、初手で受け入れられるのは難しいだろう。
この灯織漣という男性が
それを受け入れられるのは、男女カプに飢えるノマカプ厨や、寛容な女性層だけだろう。
「……君も大変ですね」
「ん? そうですか? 俺は結構ワクワクしてます」
私が心のなかで感じた哀れみとは逆に、本人は少し生き生きしていた。
そんな話をしているうちに、私が使っているデスクに到着する。
窓際の日当たりの良いそこは、私が公式スタッフとしての名前を考える時の由来になったものでもある。
決して窓際社員から取ったなどは断じて無い。
「あれ?」
デスクを確認すると、いつも置いていたはずのピンクのペンケースがなくなっていた。
「どうしました?」
「ピンクのペンケースが見当たらないんです。どこにやっちゃったっけ…?」
引き出しの中を探してみるが、どこにも無い。
「火ノ川先輩、これですか?」
そう言って彼が差し出してきたのは少し汚れてしまったピンクのペンケース。
「あ、そ、それです! ありがとう…」
「いえ、誰かが通る時に引っ掛けちゃったんですかね? 少し離れた床に落ちてました」
「そうだったんですね」
若干埃を被っているが、何処か壊れているということもなさそうで安心した。
「じゃあ、業務を始めましょう。とりあえず10時まではなにもないので戻ってもらって――」
「あ、えーっと、それなんですけど、社長から『明日は窓辺さんの傍にひっついていなさい。彼女のサポートをするように。明日は本業の方はしなくてもいいから』って言われまして」
「え、そ、そうなんですか?」
「はい、というわけでお茶汲みでもなんでもしますよ。肩もみはセクハラになるかもなんで控えてもらえると幸いです。いや、この発言が既にセクハラか?」
というわけで、私の後輩を連れた1日がスタートした。
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冒頭でも伝えた通り、新年に合わせて新作小説を投稿しました。
日本一を獲ったダンジョン探索者の主人公が、数年のブランクを経てもう一度相棒と、今度は世界一のダンジョン配信探索者を目指す現代ファンタジーです。
やっぱり流行には乗っていかないとね!
まあ犬の散歩の時に思いついたやつなのでうまく勧められるかは不安ですが、精一杯書かせていただきます。
この作品もカクヨムコンに応募しているので、もしよければ気軽に、星1でも良いので評価をくれると幸いです。
コメントをくれたらもっと嬉しい。全部に返信する心づもりなので、気軽に換装や意見も寄せてくださいね。
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