第3話 サファイア

 今回は、「サファイア」について取り上げようと思います。


【サファイアの歴史】

 サファイアとは、青い色をしたダイヤモンドに次ぐ硬さを持った鉱物のことです。


 サファイアは紀元前7世紀から、ギリシア、エジプト、ローマなどで装飾具などに用いられており、王族にも親しまれましたが、特に聖職者に愛されたと言われています。それはサファイアの青さが空の色と同じことから、石を持っていると天とつながり、空にいる神の意思を伝えると信じられていたからのようです。


 しかし「青い石」というのは、サファイア以外にもあります。よって、石の見分け方が不確かだった時代には、「ラピス・ラズリ」(いつか取り上げます)という石と混在していたこともあり、遥か昔のサファイアがどこで産出したものかは現在も分かっていないそうです。



【名前の由来】

<通説>

 サファイアの語源は二つあります。

 一つはラテン語の「sapphirus/サッピルス(サッピールス)」、もう一つはギリシア語の「sappheiros/ピロス」と言われており、どちらも「青色」を指します。


*ギリシア語の「サピロス」は、ラテン語表記はあったのですが、ギリシア語の表記が探せなくて記せませんでした。すみません。


<雑記>

〇二つの語源〇

 サファイアの語源は、書籍や宝石を扱っているお店(HP)によっても違いますが、私が調べた限りでは、ラテン語、ギリシア語、それぞれ同じくらいの割合である印象です。また両方が語源としているものもいくつか見つけたので、同じくらい「サファイア」という鉱物の名前に影響したのかなと思います。


〇ギリシア語「sappheiros/サピロス」の別の意味〇

 多くの書籍には、ギリシア語の「サピロス」は「青色」のことを指すと書いてあるのですが、『ジーニアス英和大辞典』によると「土星にとって貴重な」という意味もあるようです。宝石関連のHPを見ると「『土星にとって貴重な』が転じて『青』になった」という書き方をしているものもあったのですが、肝心の転じた理由が書いてなかったのでその辺りは謎です。


〇本来は、ラピス・ラズリを示す言葉だった?〇

 冒頭の【サファイアの歴史】でも触れましたが、サファイアはラピス・ラズリという別の石と混在されて呼ばれていたときもあったようで、現在サファイアの語源とされているラテン語の「sapphirus/サッピルス(サッピールス)」、ギリシア語の「sappheiros/サピロス」は、元々ラピス・ラズリのことを指していたのではないかとも考えられているようです。


〇ペルシャ語由来の話〇

 ラテン語とギリシア語以外では、ペルシャ語由来のものを見つけました。その言葉とは「ヒアキントゥス」、意味は「ヒヤシンスの青い色」だそうです。

 ヒアシンスは花の名前。地中海沿岸地方原産の花で、色はいくつかありますが青紫もあります。その色に近かったというのもあって、「ヒアキントゥス」という名を付けたようです。

 少し話が逸れますが、ヒアシンスの名前はギリシア神話に出てくる少年の名前なんです。その名は「ヒュアキントス」。ペルシャ語の「ヒアキントゥス」ととても似ていて、ここでも言語の繋がりを感じます。


<和名>

 青玉せいぎょくと言われています。「青」はもちろん色のことですが、「ぎょく」は「宝石」のこと。特に「透き通っているもの」を指します。



【メモ】

 長い歴史のなかで、サファイアは「青い石」という認識がありましたが、研究が進んだ現代では「サファイア」に様々な色があることが分かっています。


 サファイアと呼ばれる青い石は「コランダム」という種類の鉱物なのですが、同じ化学組成かがくそせい(元素や化合物などの化学成分が、どれくらいの比率で含まれているのか示したもの)で構成されているものを調べたところ、ピンク、オレンジ、黄色、緑、紫、白、灰色ととても豊富な色が存在することが分かったのです。


 それ以来、青い色をしたコランダムは「サファイア」、もしくは「ブルー・サファイア」と呼ばれ、それ以外の色のサファイアは総称して「ファンシーカラー・サファイア」と呼んでいます。

 しかし、ファンシーカラー・サファイアのなかにも個別に名前が付けられたものや、稀少ゆえに特別価値の高いものもあります。今度それについても紹介できたらと思います。

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