解き放たれた記憶
転移装置を使った事で目の前の景色が一瞬で切り替り、何処かの橋の下に俺は移動した。先程からまるで頭を木剣で殴られるような痛みに、片手で頭を抑える。
なんだ、この痛みは……ユウリとはなんだ?
セルリアンの姿が変わってから、あの姿を見てからずっと思考が可笑しい。
『兄さまー!』
一瞬、激しい痛みと共に脳裏にある光景が浮かんだ。セルリアンと同じ髪の少女が、花畑を背に此方へと手を振りながら笑っている。本当に嬉しそうに笑っている、こうして彼女に構うのも騎士なってからは久しぶりだから当然か。
「ぐっ!?」
更に激しい痛みに立っていられず地面に膝を着く。なんだ、彼女は誰だ?なぜ俺は彼女を知っている?荒い呼吸をしながら頭を抑えている腕に更に力を込める。
「大丈夫ですか!?」
聞き覚えのある大声に頭痛が更に強くなった気がしつつ、視線を上げるとそこには見覚えのある顔の少女と少女の頭に乗る妖精の姿があった。
「何処か苦しいんですか?救急車を……」
『おい待てヒヨリ!こいつは……』
どうやら妖精は俺に気が付いたらしく、警戒した様子で少女へと話しかける。
「あなたは!?」
「ウィザーズ、スカーレットか……」
不味い、俺がこいつを相手にするのは今の状態では難しい。倒せたとしてもいつもの倍時間がかかるだろう、その間にウィザーズの仲間達が集まって来たら俺が逃れる可能性は低い。
どうやら、ここまでか。
「止めを刺せ、抵抗はしない」
そう言い放ち目蓋を閉じる、だが即座に聞こえてきた少女の言葉に俺は驚愕し目蓋を開くことになる。
「そんな事しません、それより大丈夫なんですか?頭をずっと押さえて……私に何か出来ることはありますか?」
「な、にを!?俺は敵だぞ!何を考えて……」
『コイツと同じ意見なのは嫌だけどよ、ヒヨリ。本当に何を考えてんだよ!こいつはフォールエンスの──』
「ドーラちゃん、例えフォールエンスだとしても、目の前で苦しんでる人を見て見ぬふりするような人に……私はなりたくない!」
少なくとも一度は戦い、傷付けた相手から出た言葉とは思えず、頭の痛みを忘れて唖然とする。それも騙し討ちのような何かを考えているような目ではなく本気で助けようとしている目に敵ながら善人すぎると感じた。
『くっそ、ヒヨリの
妖精は悩むような様子で頭を抑えた後、そう言いながら俺を警戒した様子でそう言い放った。
「取り敢えず、私の家に行きましょう。近いし、そこなら治療の魔法も使えますから」
立てますか?と、俺より低い身長の彼女に頭を抑えていない方の手を掴まれて歩き出す。何故だろうか、こうして自分よりも小さな手に引かれて歩いたことがあるような気がする。
頭痛に耐えながら、歩いていき軈て石で作られた階段を上がっていると少女は立ち止まり俺の方を見ると申し訳なさそうに口を開いた。
「家に着く前にその……鎧を脱いでくれませんか?一応、お母さん達には隠してウィザーズをしてるので見られたらその」
「分かった……」
抵抗したところで意味がない、そう感じた俺は身に纏っていた鎧を解除する。麻で出来た服に戻るのは、何故か久しぶりな気がした。
彼女の家らしき場所に着くと、少女は私が道で頭を押さえて苦しそうだったから連れてきたと話していた。普通なら追い返されても可笑しくないが、何故か少女の両親は「大変でしたね、すぐに横になれるよう客間に布団を敷きます。頭が痛いのでしたら薬をお持ちしますね」と客間へ案内してきた。どうやら、あの少女のお人好しは両親譲りの物らしい。
『それで、そのヒヨリさんは何でこの人を……』
「この人が、苦しそうにしてたから」
『敵、なんですよ?それを分かっていて……ヒヨリさんは連れてきたんですか』
『最初は気付いてなかったが、気付いてもヒヨリは助けようときてたぜ姫様。コイツはお人好しで決めたらその意見を曲げようとしないからな』
そう目の前で此方を警戒した様子で話す妖精達にの会話に俺はなにもせず、頭を抑えて座りながら会話の内容に耳を傾ける。
「確かにこの人は、敵です。でも私はこの人に勝つのならちゃんと正々堂々戦って勝ちたい。もう私は前みたいに簡単にはやられない……よねドーラちゃん?」
『おい、最後に不安がるなよヒヨリ。格好付かねぇぞ?取り敢えず姫様はヒヨリの部屋にもどっててな、何かあったらコイツにはアタシとヒヨリが対応するからよ』
すると、姫様と呼ばれていた妖精はゆっくりと客間を後にする。いつもの俺ならレイベーダー様の探していた妖精を見付けたのだからすぐにでも捕まえてここから出ていくのだが、それが不可能な程に頭を頭痛が襲っている。
見れば、少女は手に持ったステッキへと赤い宝石を埋め込み光に包まれると戦いの時の姿となった少女、ウィザーズ・スカーレットが立っていた。
少女はステッキを両手で持ちながら口を開いた。
「えっと、治療?ですけど魔法を試してみます。約束通り、治っても──」
「あぁ、助けられた恩もある。魔法を受けた後に君たちへと剣を抜かない。約束する」
フォールエンスの剣士としてはあり得ない発言だろうが、そうするほどに俺はこの頭の痛みから逃れたかった。
「行きますね。ウィッチクラフト、レストレーション」
少女の持つステッキから優しい光の粒のような物が現れ俺の方へと向かってくる、そしてゆっくりと俺の体を包む。まるで太陽のような温かさを感じた次の瞬間、今まで以上の痛みが俺を襲う。まるで頭をぐちゃぐちゃに掻き回されてるような痛みに耐えられず、俺は意識を失った。
「──さま……
聞こえてきた声に、僕は目を覚ました。目の前には森の奥にある花畑が広がっている。
ここは……そうだ、ミステールの森の奥にある花畑だ。
背中の感触から僕はどうやら木を背に座り眠ってしまっていたみたいだ。
「やっと起きてくれた」
そう此方へと笑顔で笑いかけてくるのは真っ白なワンピースを着た少女、ユウリ・モーデル。母さんから遺伝した綺麗な白髪を揺らす大切な妹だ。
「ユウリ、ごめん。寝ちゃってたみたいだ」
「ううん、大丈夫!兄さまはエタニティ騎士団に入って頑張ってるんだもん、きっと疲れてたんだよ」
僕やユウリの住む世界、エタニティは平和な世界だった。人々が餓えることはなく、共に手を取り合い笑い会うこの世界はそ僕にとって誇りの場所だった。この世界では、稀に森で発生する魔獣から町を守る事や町の治安を維持するため騎士団が設立されていた。
僕は、開催された剣術大会で一番になった結果、剣術大会の主催者である騎士団団長の提案もあり騎士となった。強くなって家族やこの世界を守りたい、そう思ったからだ。
「そういえばユウリ、町の槍術大会で準優勝だったんだって?すごいじゃないか」
「ふふん、私は兄さまみたいに剣は扱えないけど槍なら自信があるんだよ!いつか兄さまと一緒に戦えるようになってみせるからね!」
「ふふ、楽しみだな……」
妹と共に戦う、そんな日が来たらよいなと思う反面そんな事が起きてほしくないと思う僕はそう笑いながらユウリの頭を撫でる。
やがて、僕はエタニティで一番の騎士呼ばれる様になりユウリもエタニティを守る騎士として槍を振るうこととなった。
僕や妹は特に大きな怪我をすることはなく、平和な日々を過ごしていた。
そうして平和な日々を送っていたある日、僕は全てを失った。
突如として町がフォールエンスの怪人に襲撃された。建物が燃え、守らなければならない人々が殺されていく。エタニティは破壊の限りを尽くされた。僕は妹と共に何とか生き残った人々を守ろうと怪人と戦った。
どれだけ剣を振るい続けたのか分からない、ずっと両親は無事なのか、他の騎士達は?そんな不安だけが、心の中にずっとあった。
「兄さまッ!」
連戦により疲れ、肩で息をしながら戦っていた僕は息を整えていると突如として妹の焦った様子の声と共に突き飛ばされた。そしてそれと同時に聞きたくなかった、ズシャリと言う何かが切り裂かれた音。
慌てて振り向けばそこには血溜まりに沈む妹、そして妹の後ろで此方を見て嗤う怪物の姿。
「ユウリ………よくも、よくもッ!」
その時、僕の中の何かが大きな音を立てて破裂した。気がつけば怪物は地に倒れ付し、倒れ付した妹の前に立っていた。
涙は流れなかった、悲しみよりも怒りが体を支配していた。
怒りと憎しみを抱えて、目の前に見えた怪物をひたすら斬り刻んだ。斬り続けて、戦い続けたがフォールエンスに掴まった僕は、フォールエンスの創設者である老人、ディストラ・レイベーダーに洗脳を施された。
僕、レオ・モーデルはエタニティ襲撃前からフォールエンスに所属していた剣士である、と。
目が覚めると、ウィザーズ・スカーレットから元の少女の姿に戻っているヒヨリさんが不安げな様子で此方の顔を覗き込んでいた。
「良かった、大丈夫ですか?」
安堵した様子でそう話す彼女と、此方を警戒した様子で見つめる妖精に僕は即座に体を起こして頭を下げた。
「本当に、すまなかった」
「え、あの?」
「洗脳されていたとは言え、僕は貴方や妖精達になんと言う事を……」
洗脳されていた僕は彼女ら妖精達の住むアトラマジーナを襲撃した、更にはウィザーズである彼女達を斬った。騎士にあるまじき行為をした上に、謝って許されるような事じゃない事をしてきた。
許されるような発言はないと思いつつ、とにかく謝罪するため頭を下げた。
「えっと?」
『なんか、今まで見てきたアイツとは思えないな。一人称まで変わってるし』
「えっと、そのさっき洗脳って?」
困惑した様子の彼女に僕は、彼女のかけてくれた魔法の効果で洗脳が解除されたことを説明した。そして僕が元々はフォールエンスに所属していなかったことも。僕の話を聞いてくれた二人は、精霊王姫であるフェイン・トゥールさんにも僕の事を説明した。
『なるほど、レオさんにはそんな過去が……』
驚いた様子を見せるフェインさんへと頭を垂れながら僕は口を開いた。
「僕は、謝って許されるような事ではない罪を犯しました。あなた方の住む世界を侵略し、この世界までも……もし、望むのなら僕は自分の命を持って罪を償うつもりです」
覚悟を決めた僕は、静かにフェインさんの言葉を待った。
『ならば、レオさん。どうか我々に力を貸して頂けませんか?』
「なにを言って、僕はあなた達を……」
『私も貴方も、いわばフォールエンスの被害者なのです。共に手を取り合い、フォールエンスを倒しませんか?』
彼女は僕の犯した事を許すばかりか、手を差しのべてくれたフェインさんの言葉に驚き言葉が出ない。
『ウィザーズである彼女達は、見てのとおりまだ成人すらしていない子供達なのです。そんな彼女達にしか頼れない私たちはずっと彼女達の事が心配なのです、どうか彼女達と共に戦ってくれませんか?』
あぁ、アトラマジーナを襲撃したフォールエンスである私を許すばかりか、共にフォールエンスへと再び戦うチャンスもくれたのだ。フェインさんへと深く感謝しつつ僕は口を開いた。
「僕、レオ・モーデルはここに誓います。フォールエンスを倒すため、フェインさん達と共に戦い、フォールエンスに傷付けられないよう守りぬく事を!」
『改めて、よろしくお願いしますねレオ』
「はっ!」
こうしてフォールエンストの洗脳から解放されたレオ・モーデルはウィザーズ達と共にフォールエンスを倒すため、行動を共にすることとなったのだった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「マジカル!」
「デジタル?」
「クロニクル!」
「「「魔法少女図鑑!!」」」
「さぁ、第二回の魔法少女図鑑のコーナー!進行かつレギュラーメンバーは私、
「
「さてさて!記念すべき魔法少女図鑑最初のゲストはこの人!」
「やぁ、後輩達?赤心こころだよ、魔法少女ビートライザーとして活動していた。よろしくね」
「と、言うわけで赤心先輩に来て貰ったわ!」
「おー、確か前回でソラが好きな歌を歌う人?」
「そうだね、彼女は私の歌が好きらしくて良く聞きに来たのを覚えているよ」
「私とユズキ、考えてみればそんなに接点がないわね?先輩との繋がりもソラさんですし」
「確かにそうだね?これから仲良くしてくれると嬉しいかな後輩達。それにしても、この空間なら私は片手がある状態で動けるのか、素晴らしいね」
「まぁ、メタフィールド?だからだと思う」
「それじゃあ、そろそろ魔法少女の紹介いくわよ!今回紹介するのは、この人!」
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【魔法少女名】魔法少女セブンスホープ
【変 身 者】
【 武 器 】希望宝剣ホープソード
【 魔 法 】ミラクルマジカル
希望の星
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「懐かしい、彼女は基本的に戦場に出ている私たちに情報を伝達するオペレーターだった子だね」
「魔法は、相手にキラキラ光るきれいな弾を撃つ『ミラクルマジカル』。色や形、軌道は自由に変えられるけど、実態がない魔法だから攻撃できないのが難点ね」
「確かに、これならオペレーターしてたのも納得。戦力にあまりならない」
「ここはユズキに同意ね、武器であるホープソードも刃の部分が潰れてるらしいし……魔法少女にはこんな人もいたのね」
「まぁ、魔法少女は十人十色だからね。魔法にも個性的な子も入ればあの子みたいな裏方特化型の子もいる、後輩……ソラが無意識に避けてしまうような魔法少女もいるからね」
「あのソラさんが!?本当なら、その人は一体どんな人なんですか?」
「まぁ、彼女に関しては………ウン、ナンデモナイヨ。取り敢えず置いておいて次の魔法について解説しようか」
「き、聞かない方が良い感じです?」
「まぁね、一つ言えるならよくもあの年であそこまで性癖が歪むものだなとは思ったよ……ウン。後輩たち、絶対に彼女はここに呼んじゃ駄目だからね?」
「彼女ってだれ???」
「まぁ、間違いなく放送事故確定だろうし君たちが武器を取り出して即攻撃……なんてありえそうだからね。話を戻すけど、実はノゾミがオペレーターになったのは戦いに特化した能力を持っていないからではないんだ。」
「え?」
「そうなんですか?」
「『希望の星』彼女のもつ魔法でね、何度も私たちを助けてきた魔法の一つ。効果は、状況を変えられる何かしらの奇跡が起こす事さ。現実的に不可能な事も、ね」
「嘘でしょ……」
「奇跡起こせる?」
「ある意味彼女は私たちにとって最後の希望だったって事さ」
「シャバドゥビ──」
「ユズキ、それ以上はメタフィールドでも守れなくなるからストーーップ!!と、取り敢えず『マジカル!気になる?クエスチョン!魔法少女アンケート10』のコーナーいくわよ!スタッフ!早く!早く画面変えて!」
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Q1.好きな食べ物は?
A.ラムネ(飲み物の方)
Q2.好きな事は?
A.魔法少女マギナのグッツ収集、アニメ鑑賞
Q3.もし宝くじが当たったら?
A.働かず一生ヲタ活して生きていきます!
Q4.都会と田舎、どっちに住みたい??
A.都会一択です、グッツの宅配とかすぐに届きますしクーラー最高!
Q5.好きな歌は?
A.魔法少女マギナ主題歌。
Q6.好きな言葉は?
A.弱くて、運がなくても私が戦わない理由にはならない。
Q7.未来が見える能力と、人の心がわかる能力、どちらか一つ選べるならどちらが欲しいですか?
A.未来が見える能力で売り切れそうなグッツがあったら売りきれる前に買います!
Q8.幽霊の存在は信じている?
A.い、いるんじゃないですかね。
Q9.最近、身の回りに起きた面白い事は?
A.ご飯前に『BURGER Z』のウルトラZバーガーを食べたのがバレたお父さんがお母さんに怒られていたこと。
Q10.最近ちょっと恥ずかしいと思った時
A.テンションが上がった状態でグッツを見ていた私を見るソラさんの視線が微笑ましいものをみている物だと気付いたとき。
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「へぇ、彼女は都会っ子なんだね。私だったら田舎に住んでみたいかな」
「確かに、田舎の暮しって憧れますよねぇ」
「まあ、キャンプで自然を感じることは出来るから暫く先でいいかな」
「都会、便利なのに?」
「まぁ、まだ
「むぅ、なんかバカにされた気がする……」
「気のせいじゃない?それじゃあ今回はここまで!マジカル!」
「デジタル?」
「クロニクル」
「魔法少女図鑑のコーナーでしたー!」
「楽しかったよ後輩たち、また来るよ」
「バイバイ」
「え、スタッフ?スタッフー!?聞きたいんだけど一度来た人がゲストにもう一度来るのってあるのー!?」
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