第7話 ゲーム

突然静華さんはこう言い出したのだった。


「じゃあ、私とゲームをしよう!」

「ゲーム?」


突然の事で困惑している僕には目もくれず、看護師さんは、ゲームの説明をしだした。


「ルールは簡単、今日一日中、私を頼って行動出来たら奏汰さんの勝ち。出来なかった数が5回あったら私の勝ち」


「それって僕に良い事無いんじゃ...」


「じゃあイチゴのアイス買ってあげるよ!あと、ご飯にイチゴが出た時、ちょっと多めに入れてあげるよ?」


「これでどう?」

「やりましょう、今すぐやりましょう」


イチゴには目がないね〜。これだけイチゴに釣られるなら、ほっといたら悪い人に誘拐されちゃうかも。


「まあまあ落ち着いて? このままじゃ私に利益が無いからー」


「......じゃあ私が勝ったら、私を頼る事に慣れるまで、ずーっと言い続けていい?

あっ!...それと、毎食ご飯を食べさせてあげる」


奏汰は利益が釣り合わないような気がして、聞き返した。


「本当にそれでいいんですか?」


「いいよー」

「分かりました」


「じゃあ決まりで! 開始は今から夜の六時までね」


「よーい...スタート!」


「......っ!」



静華さんは僕を見ながら、若干笑い、話しかけてくる。


「っふ、そんな身構えなくてもいいよー。もっと力抜いてさー?」


静華さんは余裕を見せるように落ち着いた雰囲気を僕に放つ。


「まあ...それもそうですね」


「とりあえず、朝ご飯遅れちゃってるからすぐ持ってくるねー!」


「分かりました。ありがとうございます」


静華さんは急いで部屋を出、朝ご飯を持ってきてくれた。


「はい。どうぞ」


「ありがとうございます」


今日の朝ご飯は、食パンにイチゴジャム、ゆで卵を輪切りにしたやつと、トマトとキャベツのサラダ、そして牛乳。


「それじゃあ20分後また来るねー!」

「はーい」



「いただきます」


僕は、目の前にあったジャムを手に取り、食パンにかけて、久々のパンにかぶりついた。


「...ん?」


久々のパンだからか分からないが、少し味が違う気がした。まあ、気にせず全部食べた。


あとはサラダと牛乳。



「失礼します! 奏汰さーんそのパンですが...」


「ん? どうしました?」


「その朝ご飯に入っていたパンなんですけど、アレルギーの子に渡し間違えで普通のパンを渡しちゃってたみたいで、奏汰さんに渡したのが小麦粉使ってない米粉パンなのよ。だから味がちょっと違──」


「そんな事よりアレルギーの子は大丈夫なんですか!?」


「...っ!」


......ん? なにか聞こえたような......?

さすがに気のせいか。


「大丈夫。食べる前に気づいて、替えてもらったらしいわ」


「よかった...」


「......奏汰さん優しいのね」

「僕はアレルギー反応の苦しさを知ってますから」


「そうなんだ。奏汰さんは確か......お蕎麦とゴマと......」

「バナナです」

「そう! バナナ。看護師してて初めて見たわ」

「僕も僕以外は見たことがありません」


「あっ! ご飯食べるの痛むでしょー! 食べさせてあげようか?」


どうしてこんなに食べさせたがるのかが分からない。看護師さんは何を考えているんだか。

ここは、優しめに断るに限るな。


「これぐらい大丈夫ですよ。あとサラダと牛乳だけですし」


「あらそう?」


随分と警戒されてるようね。食べさせてあげて可愛い顔見せて欲しかったなぁ〜!



「......トマト...好きなの?」


「なんで分かったんですか?」

「見てたら分かりますよ〜。笑顔でトマト食べてるんですもの」


「そんなに笑顔でしたか...」


なるほど、トマトも好きと。




「......ごちそうさまでした」


「じゃあ下げてくるねー」


「あっ...ありがとうございます」

「このぐらい大丈夫だよー!」



──優しいなぁ、看護師さん。......看護師さんって呼ぶのもなんかぁ...分かりにくいかなぁ。確か名前は......ほうじょう...ほうじょう......


「ほうじょう......」



「なぁーに?」


看護師さんはいつの間にか、奏汰の顔を下から覗き込むように見てきていた。


「っ!うわぁ!!............痛った」


「あっごめん、大丈夫?」

「大丈夫ですよ......それより、口に出てました?」


考えていたら看護師さんが帰ってきちゃってた!


「出てたよ?それで、なんで私の苗字呼んでたの?」


「僕っていつも看護師さんって呼んでるじゃないですか。それで、分かりにくいかなぁって思って名前を思い出してたんですよ」


「なるほどねー。それで、思い出せた? 私の名前」


「いえ、下の名前が分からなくて......」


「静華だよ、静華。ちゃんと覚えてね? それと呼び方はなんでもいいからね」


「じゃあせっかくだし、静華さん...って呼んでも?」


「うん! いいよ!」


「あっ......僕も呼び方なんでもいいんで」


「じゃあ......奏汰くんって呼んでもいい?」

「はい!」


「じゃあ奏汰くん! またお昼時に来るからね」


「はい! 分かりました」


ちょっと恥ずかしいな。


「あっ...そうだ」


静華さんは振り向き僕を見て話しかけてくる。


「どうしたんですか?」


「まだお昼まで時間あるし、前軽くしか紹介出来なかったから、今から休憩室まで行って本とかテレビとか見る?」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがきです。


どうもこんばんにちは。まどうふです。


徐々にではありますが、2人が仲良くなっているのを頑張って書いていきます!


静華さんは子供好き!


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