第6話 小悪魔の微笑み

「おはようー! 奏汰さん。今日もよろしくね!」


「あっ...はい。おはようございます」


「大丈夫? なんか体調悪そうだけど」

「今日一日中、心配しかないんですよ」


「まあ...私を頼らないからだよね」


静華さんは少し突き放すように僕に言う。


「すみません...」



──なんだかトイレに行きたいな。トイレの場所はっと......。昨日行った所は一階だから二階のトイレの場所を案内板で探して......


そんな事を考えながらベットからゆっくり降りていると。


「待って。何しようとしてるの?」

「トイレに行こうかなと」


「はいダメー!」

「え? トイレに行っちゃダメなの?」

「そこじゃないよ! なんで一人で行こうとしてるの? 私を頼ってって」


「ベットから降りるのも、車椅子に乗るのも、トイレの場所も、全部一人でやるつもり?今の体じゃ絶対痛いし大変だよ?」


「それに、今日は私を頼る日だよね?」


「あ......忘れてました」

「私が手伝ってあげるから。はい降りて」

「ありがとうございます」


「じゃあ車椅子乗ってー」

「はい」

「じゃあトイレ行くねー」


「はい、着いたよー。一番近い所がここね」


「じゃあ、行ってきますのでちょっと待ってて下さい」


「ついて行かなくて大丈夫ー?」

「大丈夫です。昨日ので学びました」


「何かあったらすぐ呼ぶんだよー!」

「今度は大丈夫です」


「ホントかなー?」

「ホントですよ。すぐ出てきますから」

「はーい」


そう、僕は学んだ。あの時何故こんなことをしたのか自分でも意味が分からなかった。最も簡単な答えがすぐ側にあったのに、僕は見落としてしまっていた。


病院のトイレは普通の家にあるトイレと違って、手すりがいっぱいある。だから掴まっていれば、片足骨折していても立っていられる。

だから......立ったままトイレをすればいいと思った。


だから僕は一度、壁にもたれてズボンを脱ぎ、手すりを持って左足で移動し、トイレをした。


し終わった後はもう一度壁にもたれ、ズボンを履き、個室から出る。


「大丈夫だったー?」

「ほら、慣れない片足での移動辛いでしょ? 早く車椅子乗って」

「ありがとうございます」


「さっ! 戻って朝ご飯だよー」

「今日の朝ご飯ってなんですか?」

「うーん......内緒♪」

「内緒にする必要ありますか?」

「じゃあ一つだけ。奏汰さんの好きな食べ物があるよ!」


「僕、看護師さんに好きな食べ物教えた記憶無いんですけど」


「一つだけ見れば分かる食べ物があるでしょ?」

「まさか!」




今日の朝ご飯の献立。


ご飯、お味噌汁、玉子焼きにおろしポン酢。

そして......デザートのいちご。


それを見た僕は...。


「イチゴ!」


「好きでしょ? イチゴ」


「めっちゃ好き! 先に食べてもいい?」

「いいよー♪」


「やったー! いただきます!」


奏汰はイチゴが刺さった爪楊枝を手に取り、口にイチゴを持っていこうとすると、奏汰は肋骨が折れているのを忘れていて...


「痛った!!」

「奏汰さん! 大丈夫!?」

「大丈夫です、イチゴを食べるのに夢中で痛くなるの忘れてました」


「今思ったんだけど、奏汰さん呼吸してるだけでもちょっと痛いよね?」


「いや...まあちょっと痛いですけどそんなに心配するような事じゃ...」

「呼吸するだけで痛いなら、無理に動かしたらもっと痛いじゃないですか!」


「だから......」


静華さんは奏汰の持っているイチゴを取って、奏汰の口の前に持ってきた。


「はい、あーん」


「...え?」


「ほら、私を頼る日でしょ? 今日は」

「そうですけど......」


「...そのままじゃイチゴ食べれないよ?」


「うっ......」

「ほら、あーん」

「あっ...あーん」


静華さんは奏汰に微笑みながらイチゴを差し出し、奏汰は不服そうにイチゴを食べた。


「おいし......!」


奏汰は満面の笑みを浮かべ、次のイチゴへと手が伸びた。


「待ってまだ痛いでしょ」

「いや、もう大丈夫ですよ」

「...嘘」

「嘘じゃないです」

「いいから私に任せて!」


「......はぁい」


本意では無いがお言葉に甘えさせていただく事にした奏汰。


「はい...あーん」

「......あーん」


「美味しい?」

「美味しいです!」



子供の笑顔ってなんでこんなに可愛いのかな!

ずっと見てられる!

イチゴ食べるまではあんまり乗り気じゃないのに、食べた後は一瞬であんなに笑顔になっちゃってまあ。

あーんする時の顔も可愛い! ずっとあーんしてたいわ!



「まだ痛いでしょ?これからご飯は私が食べさせてあげるから!」


「そこまでしなくても大丈夫ですよ」


「うーん......じゃあ、私とゲームをしよう!」


「ゲーム?」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがき。


どうもまどうふです。これからも頑張りますのでよろしくお願いします!


良ければ応援とフォロー、☆のほど

よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る