第4話 病院案内
看護師さんが奏汰の体を拭いてくれてからはや5分。少し服を着るのに手間取ったが、看護師さんが手伝ってくれたのであまり時間を使わずに済んだ。
「さっ! 行こっか。案内してあげる!」
「そんな爽やかな朝の案内みたいな言い方してますけど、全然お昼ですし、僕車椅子ですよ」
「いやいや、久しぶりに体スッキリしたし、気分は悪くないでしょ?」
「まあスッキリはしました」
「まあ、案内してあげる! って言ったものの、これから行くのは、よく使う場所とか、知っといた方が良い所とかだけどね」
「よく使う場所......」
こんな大きい病院なんて来たことないからちょっと楽しみだ。
「まずここ! 病院食堂。足とかに異常が無い人は普通にここでご飯をもらって食べるの」
「なるほど」
「奏汰さんも足が良くなってきたら、私と一緒に行こうね!」
「あ...そうですね。行きましょう」
「それまでは私を頼ってくれていいから、なんでも言ってね!」
「お願いします」
「あっ! そうそう、食堂にね売店もあるのよ。行きましょうか?」
「うん!」
さっきよりもワクワクね!可愛いわぁ。
「売店はこんな感じだよ」
「おー!」
「お菓子やジュース、サンドイッチや本など、結構色んな物があるよ!」
「ほんとに色々ありますね」
「何か欲しい物とかない?」
「うーん...今は特に...」
「例えば...このイチゴ味のアイスとか?」
「アイスまであるの!?」
「そうだよー」
奏汰は指をアイスの方へ向け、申し訳なさそうに言葉を発した。
「お願いしてもいいですか?」
「何味がいい?リンゴ、ミカン、ブドウ、イチゴがあるけど...」
「イチゴでお願いします」
やっぱり即答ね、本当にイチゴが大好きなんだわ。
「あっ...溶けちゃうから後で買おうね!」
「絶対ですよ。忘れないでくださいね」
「分かってるよー」
「それじゃ次行こっか」
「はい!」
イチゴ味のアイスー! まさか病院にあるなんて思ってなかった! 優しい看護師さんもいるし、イチゴ味のアイスもあるし、意外と過ごしやすいかも。
「次はここね、休憩室。ここは共有スペースで入院してる患者さん達がくつろげる場所なの。部屋でずっといるのはしんどいでしょ?だから休憩しつつ、あそこにある雑誌やテレビを見て過ごす場所なの」
「部屋よりこっちの方が楽しそうかも」
「行きたい時は絶対言ってね、ついてってあげるから!」
「これぐらい一人でいけるよ?」
「それは分かってるけど、奏汰さんは二箇所骨折しているし、記憶喪失になってるんだから、どこに行くにも私がついて行かないと危ないでしょ?」
「それは......そうかも」
「でしょ?」
「よし! それじゃあ気を取り直して行こう!」
「あ......今更だけど案内板あるの忘れてた」
「......え?......えぇ」
「ま......まあ気にしないで。とっ...とりあえず! 食堂を出て、左に曲がって、ここのエレベーターで一個上がると、診療室が色々あるの」
「診療室?」
「行ってみましょうか」
「──ここよ、手術とか検査とか患者さんを診察するための場所よ。ここの廊下全部が診察室なの」
「多い......」
2人は更に奥へ行き、かなりの距離を歩いた。
「そしてここを抜けるとー!」
「抜けると?」
「面会室があるわ」
「面会室......」
「面会室はそのままね。お父さんお母さん。友達とかと面会できる所よ」
「なるほど」
「これで館内の案内は終了、外に行こっか」
「外?」
僕は看護師さんに連れられてエレベーターで1階まで行き、外に続くドアの真ん前まで来ていた。
「それじゃあ開けるよー!」
静華さんがドアを開けた瞬間、奏汰の目には凄く自然豊かな景色が広がった。
「うわぁー! 凄い! めっちゃ綺麗」
「この病院は庭園が広くて、お花も綺麗に咲いてるから凄く好きなのよー♪」
「ほんと綺麗!」
「ここは庭園。もちろん病院の敷地内よ。外の空気を吸いに来たり、散歩したり、ここで休憩してもOK!」
奏汰は大きく息を吸い、心地よさそうな顔をして静華さんへ顔を向けた。
「ここ好きかも」
「気に入ってもらえたなら案内したかいがあるわぁ!」
そう言いながら笑顔を見せる静華さん。
「今回はここまでにして部屋、戻ろっか」
「うん!」
そうして2人は来た道を戻りながら談笑を始めた。
「まさか病院の中に庭園があるとは思わなかったからびっくりしたなぁ」
「初めてだもんね──あっ! そうだ、二階のトイレはここだよ、行きたい?」
「あっ、はい行っときたいです」
「じゃあ一緒に入ろっか」
「え!? なんでですか」
「色々説明しとかないと、説明し終わったら外で待ってるよ」
「そういうことですか...なら」
この時の僕は右足骨折、肋骨骨折という状態でのトイレがいかに難しいか、まだ分かっていなかったのだった。
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あとがきです。
どうもこんばんにちは。まどうふです。
いつも小説を読もう!と思ってそのまま読まずに終わる事がずっと続いてる今日この頃です。
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